ワインとワイナリーをめぐる冒険 第39回 by 雪川醸造代表 山平哲也さん
・航空会社でチケットを直接手配し、経由する国のエアラインをよく使います
・レンタカーを手配したらマニュアル車だったって意外と多いのです
・ヨーロッパ文化圏では「ラウンドアバウト」が多く、入るタイミングが難しい

こんにちは(あるいはこんばんは)。

前回の南アフリカに続いて、ニュージーランドに来てワインをつくっています。

今回は10日ほど前にニュージーランドに着いたのですが、昨日1つ目のぶどうの収穫をようやく行ったばかりで、ワタクシのワインづくりに関しては、まだお伝えできることがあまりありません。「次回はニュージーランドでのワインづくりをレポートします」と案内していたのに、すみません。

画像: 今年は年明けから天候が不順で生育がすこし遅れた、とのことです。一週間待ったおかげでかなり良い状態で収穫できました

今年は年明けから天候が不順で生育がすこし遅れた、とのことです。一週間待ったおかげでかなり良い状態で収穫できました

ということで、今回は番外編として海外に出かける(出張だったり、旅行だったり)ときのワタクシの私見的な旅のテクニックだったり、経験からくるノウハウのようなものを少し綴ってみたいと思います。ニュージーランドでのワインづくりについては、次回のコラムに譲ります。

「経由国」のチケットを選ぶ

まずは、航空券の手配についてです。

ワタクシは、オンライン・オフラインを問わず旅行代理店を使うことはなく、航空会社で直接手配します。これは過去の経験から、代理店を通して購入した航空券になにかトラブルがあると、そのトラブルへの対処が煩雑になるのに対し、航空会社で直接購入した方が色々と融通が効きやすいため、多少高くても航空会社でチケットを直接手配します。

特に、日程に余裕がない旅の場合、費用が高くなる部分はトラブルに備えた保険として捉えています(時間に余裕があるなら、いかにチケットを安く手に入れるかに集中しても良いと思います)。あと日本航空と全日空の両方のマイレージプログラムでステータスを維持しているので、これを絡めるとエアラインの3大アライアンスの2つにおいて融通の効く範囲が広がるということも含まれます。

それと、利用する航空会社ですが、経由する国のエアラインを使うことがよくあります。例えば、今回のニュージーランドであれば、選択肢はこのようになります。

A) 出発国:日本(全日空、日本航空など)
B) 到着国:ニュージーランド(ニュージーランド航空など)
C) 経由国:オーストラリア(カンタス航空)、シンガポール(シンガポール航空)、中国(エアチャイナ)、フィジー(フィジーエアウェイズ)、etc.

この場合、AとBに比べてCのチケットが安くなっていることが多いです。で、実はニュージーランドに限らず、ほとんどのケースで、この「経由国のエアライン」のチケットは出発国、到着国のエアラインより安くなります。

これは推測なのですが、乗り継ぎとなるCに比べて直行便を提供できるAとBはより付加価値が高い(速くて便利)ので、価格を高く設定している(できる)ので、こうした状況が生まれるのだと思われます。

今回の場合、ニュージーランドのクライストチャーチに来ているのですが、ここは日本との直行便が設定されていません。このため、どう転んでも最低1回は乗り継ぎすることになります。であれば、Cの乗継便が低い価格で提供されているなら、こちらを選んで航空券を手配する、ということになります。

画像: カンタス航空は昔から世界トップクラスの安全性を誇る航空会社として有名なので、安心して乗っていられます(高所恐怖症気味です)

カンタス航空は昔から世界トップクラスの安全性を誇る航空会社として有名なので、安心して乗っていられます(高所恐怖症気味です)

今回はオーストラリアのフラッグシップであるカンタス航空を使っています。ニュージーランドへの移動に、この航空会社を使うメリットは、フライトを選べば、往復ともに昼便(午前中に出発して、夕方〜夜に目的地に到着)を利用できる点にあります。

日本〜オセアニアは、時差の少ないタイムゾーンの移動となるため、昼便と夜便(夜出発して、翌日朝に目的地に到着)の組み合わせでフライトの往復が設定されていることがほとんどです。どれだけ飛行機の中でぐっすり寝られたとしても、夜便はやはり疲れます(到着翌日は睡眠不足な状態で1日行動しなければならないですし……)。できるだけ昼便を使って旅程を設定すれば、移動後の疲労がかなり軽減される、というのがこれまでの経験から学んだことです。

「ラウンドアバウト」に慣れましょう

次に滞在先でのクルマ移動についてです。

ワイナリーは街中にはほとんどないですし、いくつものワイナリーをまわるので、基本はレンタカーを手配します。その昔、アメリカで生活していたことがあり、左ハンドル・右側通行にも慣れているのですが、イギリス連邦の南アフリカとニュージーランドは日本と同じ右ハンドル・左側通行です。日本車を借りられれば(欧州車だとウインカー・ワイパーの組み合わせが逆のことがある)運転はそんなに難しいことではないです。とはいえ、事前に注意点について検索してアタマに入れておいた方が良いですが。

なお、Wikipediaによると、右側通行の国の方が多いので(「人口比では左側通行と右側通行の比率が34:66」)、海外で運転する可能性が高いなら、右側通行に慣れた方が良いのかもしれません(どこで練習するのかという問題はありますが…)。

今回、南アフリカとニュージーランドで借りたレンタカーは、いずれもAndroid Auto/Apple CarPlayに対応しており、自分のスマートフォンのマップや音楽再生を使えるクルマでした。ひと昔前のカーナビだと、目的地を入力するのに難儀することが多かったのですが、自分のスマートフォンの設定をそのまま使えるのはとても便利です。

画像: ニュージーランドで今回借りたレンタカーは、日本から輸入したようで、エンジンをかけると日本語の注意書きが出てきました

ニュージーランドで今回借りたレンタカーは、日本から輸入したようで、エンジンをかけると日本語の注意書きが出てきました

ただ、ケータイの電波が届かない場所を走るとマップのナビゲーションがおかしくなることがあるので、そういう場所を走りそうな場合には、事前にマップアプリでオフラインマップをダウンロードするのが安全です。日本の主要な道路は通信サービスの電波カバレッジがほぼ網羅されていますが、海外では主要な道路でも田舎に入ると電波なしのところが意外にあり、急にナビがおかしくなって焦ることになります。

ちなみに、レンタカー手配の際に一番気をつけるのは、国によってはオートマ車の設定が少ない(ない)というやつです。なにを隠そう南アフリカがそういう国で、手配したレンタカーはマニュアル車でした。ワタクシもすっかり忘れていたのです。ケープタウン空港のレンタカーオフィスでクルマを受け取った時に「ああ、確認を忘れていた…」と少しばかりショックでした。

画像: ヨーロッパだとマニュアル車にあたることが多いのですが、南アがそうだとは想定してませんでした

ヨーロッパだとマニュアル車にあたることが多いのですが、南アがそうだとは想定してませんでした

どうにかこうにか久しぶりにマニュアル車に3週間ほど乗り続けたので慣れましたが(ぶどう畑での作業車はマニュアルのものばかりです)AT限定の免許の方もいると思いますし、MT免許でも教習所以来マニュアル車に乗ってないという方も多いと思うので、海外でのレンタカー手配時には気をつけてください。

そういえば、日本と同じ左側通行の南アフリカとニュージーランドですが、運転していて日本と一番違うと感じるのは「ラウンドアバウト」の存在です。詳細説明はWikipediaに譲りますが、簡単に言うと信号のない円形の交差点です(ワタクシの地元近く旭川にも「常盤ロータリー」がありますが日本ではほとんど見かけません)。

ラウンドアバウトのルールですが、ワタクシの理解としては、交差点にはいるタイミングに速度を落とし、入れそうなタイミングで交差点に入り、出たい方向に他のクルマを邪魔しないように出る、というものです(間違っている可能性もありますが…)。

画像: ヨーロッパはラウンドアバウトが多いんですよね。はじめて出会ったのは20年近く前のドイツ出張で、紙の地図で運転していたので、なんどか迷子になりました

ヨーロッパはラウンドアバウトが多いんですよね。はじめて出会ったのは20年近く前のドイツ出張で、紙の地図で運転していたので、なんどか迷子になりました

この「入れそうなタイミング」、というのが実は曲者です。もたもたしているといつまでも入れないです。交通量の多いところだと後ろのクルマがクラクションを鳴らして急かされる可能性もあり、なんかちょっと焦ります。慣れてくると「いろんなタイミングでみんな運転しているなー」と感じたりもするのですが。

「この距離なら入れる」という車間の感覚と(合流するときと呼吸はおんなじです)、運転しているクルマの扱いに早めに慣れるのが、ラウンドアバウトでまごまごしないためのコツなのではと思っています(口で言うのは簡単ですが)。

あと、ラウンドアバウトは丸い交差点なので、ぐるっと回っていると自分が出る方向がわからなくなることもあります。紙の地図のころは、情報量が少なく地図をずっと見ながら運転するわけにもいかないので、間違った方向に出たこともあったのですが、最近のマップアプリは「*番目の出口で出てください」と音声で指示してくれて、間違えることがほぼなくなりました。テクノロジーによってヒトの営みが助けられるようになった事例の1つではないかと思います。

「eSIMアプリ」

最後に海外での通信環境、特にスマホの話です。

普段の生活での行動を考えると、旅する時にもスマホは欠かせません。「ネットの情報ばかりに依存しては! 旅とは新たななにかを発見することだ!」との意見もわからないでもないですが、そういう部分を残しつつも、ラクできる仕組みはうまくつかっていきたいものです。

例えば、海外での通信サービスですが、日本の通信事業者が海外ローミングサービス(国内の契約回線のまま海外で通信サービスを使える仕組み)をいろいろと提供しています。1~2日程度の短期滞在ならこれで十分なことが多いのですが、数日以上中長期滞在する場合には割高になることがあります(割高にならないサービスも探せばあります)。

これを回避するため、以前は到着した空港で滞在予定のエリアをカバーする現地のプリペイドSIM(カード)を購入していました。2010年代前半からのことなので、10年近くは空港に到着してはプリペイドSIMのカウンターを探す、ということをやっていたでしょうか。

しかし、最近は多くの国の「プリペイドeSIM(スマホ内蔵のSIMで設定情報を書き換えられる)」を購入・管理できる「eSIMアプリ」と呼ばれるサービスが広がりを見せています。これだと到着時にプリペイドSIMのカウンターを探す手間が省け、いろんなプランを事前に探すことができるので便利です。

画像: ワタクシの使っている eSIM は Airalo というものです。提供プランが比較的廉価なのが特徴です

ワタクシの使っている eSIM は Airalo というものです。提供プランが比較的廉価なのが特徴です

このeSIMアプリにも、さまざまな種類がありますが、ざっと見たところでは、次の違いがあるようです。

1) 提供している国、エリアの違い
2) 提供しているプラン(日数、データ量)の違い
3) サポート(日本語など)の違い

対応している国・エリアは、多いサービスでは200近くあります。一度に100以上の国・エリアに出かけるという方はさすがにそういないと思うので、自分が出かける、あるいは今後出かけるかもしれない渡航先の対応状況をまずは比較するのが良いでしょう。

そのうえで、2)の比較になりますが、これはサービスによって異なります。普段のデータ利用量から必要な日数とデータ量を想定し、一番それに近いサービスを提供しているものを選ぶのが良いと思います。

3)については、手厚いサポートが必要な方と、そうでもない方に分かれると思いますので、自分の心持ちや利用シーンにぴったりくるものを選ぶのが良いように思います。

なお、海外Wi-Fiレンタルサービスを使う方法もあり、以前は何度か使ったことがありますが、モバイルルーターの受け渡しが煩雑に感じられるのと、回線速度が速くないことがあるので、ほとんど使わなくなりました。

画像: もう一つ便利なのはスマホにクレカを登録して行うタッチ決済です。こういうクレカ端末にスマホをタッチするので、決済時にクレジットカードを出さなくて良く、簡単・安心です

もう一つ便利なのはスマホにクレカを登録して行うタッチ決済です。こういうクレカ端末にスマホをタッチするので、決済時にクレジットカードを出さなくて良く、簡単・安心です

結び

今回は、海外に出かけるときの、ワタクシ自身のちょっとしたノウハウ(2025年版)をいくつか挙げてみました。

この2月に出かけていた南アフリカで訪問した国は61カ国を数え、いろんなところに出かけている方だと思います(ニュージーランドに来たのは3回目です)。

旅する方には高コスパで安く旅する方法をきわめる、という方もいらっしゃるのですが、ワタクシ的にはコストも大事だけれど、ストレスフリーな旅の環境とのバランスが大事だと思っています。

ちなみにこのコラムを書いているのは、ニュージーランド南島のカイアポイという小さな街にある一軒家、AirBnBで手配したいわゆる民泊のダイニングルームです。

ベッドルームだけが占有スペースで、トイレ・バス・キッチンなどはオーナーと共同利用なので、一般のホテル滞在より廉価で、かつゆったりとスペースを利用できています。

コラムが一段落したので、これから今年仕込んでいるワイン(ぶどう)の様子を見に行ってきます。次回はしっかりとニュージーランドでのワインづくりをレポートします。

それでは、また。

ワインとワイナリーをめぐる冒険
ITの世界から飛び出しワインづくりを目指した雪川醸造代表の山平さん。新しい生活や働き方を追い求める人たちが多くなっている今、NexTalkでは彼の冒険のあらましをシリーズでご紹介していきます。人生における変化と選択、そしてワインの世界の奥行きについて触れていきましょう。

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第1回:人生における変化と選択(2021年4月13日号)
第2回:東川町でワイナリーをはじめる、ということ (2021年5月18日号)
第3回:ぶどう栽培の一年 (2021年6月8日号)
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第6回:ワインの味わいを決めるもの: 味覚・嗅覚、ワインの成分(2021年9月14日号)
第7回:ワイン醸造その1:醗酵するまでにいろいろあります (2021年11月9日号)
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第9回:酒造免許の申請先は税務署です(2022年1月12日号)
第10回:ワイン特区で素早いワイナリー設立を(2022年2月15日号)
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第12回:ワインづくりの学び方
第13回:盛り上がりを見せているテイスティング
第14回:ワイナリーのお金の話その1「ぶどう畑を準備するには…」
第15回:ワイナリーのお金の話その2「今ある建物を活用したほうが・・・」
第16回:ワイナリーのお金の話その3「醸造設備は輸入モノが多いのです」
第17回:ワイナリーのお金の話その4「ワインをつくるにはぶどうだけでは足りない」
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第19回:ワイナリーのお金の話その6「補助金利用は計画的に」
第20回:まずはソムリエナイフ、使えるようになりましょう
第21回:ワイン販売の話その1:独自ドメインを取って、信頼感を醸成しよう
第22回:オーストラリアで感じた変化と選択
第23回:ワインの販売についてその2「D2C的なアプローチ」
第24回:ワインの販売についてその2「ワインの市場流通の複雑さ」
第25回:食にまつわるイノベーション
第26回:ワインの市場その1_1年に飲むワインの量はどれくらい?
第27回:2023年ヴィンテージの報告
第28回:「果実味、酸味、余韻」
第29回:ワインの市場その2:コンビニにおけるワインと日本酒の販売
第30回:ワインの市場その3:レストランへのワインの持ち込み
第31回:ワインづくり編:ニュージーランド 2024 ヴィンテージ
第32回:ワインづくりと生成AI その1 ラベルの絵を「描く」
第33回:ワインづくりと生成AIその2 :アドバイザーになってもらえるか
第34回:2024年ヴィンテージの報告
第35回:ワインづくりと生成AI その3:事業計画を立案してみる
第36回:ワインづくりと生成AI その4:ワイン関連分野におけるAI技術の活用事例
第37回:「家計調査」に見るワインの購買動向 2024
第38回:海外でのワインづくり:南アフリカ・スワートランド 2025

画像: 山平哲也プロフィール: 雪川醸造合同会社代表 / 北海道東川町地域おこし協力隊。2020年3月末に自分のワイナリーを立ち上げるために東京の下町深川から北海道の大雪山系の麓にある東川町に移住。移住前はITサービス企業でIoTビジネスの事業開発責任者、ネットワーク技術部門責任者を歴任。早稲田大学ビジネススクール修了。IT関連企業の新規事業検討・立案の開発支援も行っている。60カ国を訪問した旅好き。毎日ワインを欠かさず飲むほどのワイン好き。

山平哲也プロフィール:
雪川醸造合同会社代表 / 北海道東川町地域おこし協力隊。2020年3月末に自分のワイナリーを立ち上げるために東京の下町深川から北海道の大雪山系の麓にある東川町に移住。移住前はITサービス企業でIoTビジネスの事業開発責任者、ネットワーク技術部門責任者を歴任。早稲田大学ビジネススクール修了。IT関連企業の新規事業検討・立案の開発支援も行っている。60カ国を訪問した旅好き。毎日ワインを欠かさず飲むほどのワイン好き。

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