ユニアデックスの片澤です。今回で連載開始から、19回目を迎えました。
ようやくリアルイベントの復活です!当初、シリコンバレー通信は、私が見て、聞いて、体験した米国のテックイベントの情報をお伝えできればと思い、連載を開始することにしました。
しかし、COVID-19の影響により、リアルイベントが全面中止に…。今まで目的が果たせない状況でしたが、なんと、とうとう、リアルイベントが復活。早速参加してきましたので、ご紹介していきます。
その前に、恒例の米国の現状を少し報告しておきます。
ワクチン接種義務化の流れ
ワクチン接種の義務化に向けた動きなどは、前回の記事でもご紹介していますが、現在、ニューヨーク市やサンフランシスコ市などでは、レストラン入店の際、ワクチン接種済みが前提となり、証明書の提示が求められています。
物理カードの情報をWebでも確認することができますが、利便性などを考慮し、スマホのアプリで携帯するデジタル化の動きが報じられています。上の写真のように、すでにカリフォルニア州では先行して、同州のWebサイトやGoogle Payもしくは、Apple Healthでのデジタル対応はリリース済みです。
全米CDC(疾病予防管理センター)のリリース日などは発表されていませんが、カリフォルニア州での動きやApple walletでのDriver’s Licenseのデジタル化を可能にしていたり、銀行のキャッシュカードが無くても現金を引き落とせるようになっているので、全米CDC版も近々にはリリースされるのではないでしょうか。こういったデジタル活用の動きは本当に速いと毎度驚かされます。
また、海外からの米国訪問者に関してもワクチン接種の義務化が報じられています。11月からの取り組みになる予定で、正式な発表はこれからですが、今後米国を訪問する日本人の出張者などにも適用となる見込みです。報道では、未成年者は対象外となっていますが、正式発表が待たれるところです。
商用ドローン関連のリアルイベントに参加
さて、本題に入ります。今回、私は、9月7日から9日の3日間、ラスベガスで開催されました『Commercial UAV ExpoAmericas』に参加してきました!
このCommercial UAVとは、商用ドローンのことで、ドローンを利用したビジネスに関わるベンダーやスタートアップ企業をはじめ、政府関係者や利用ユーザーなどが参加するイベントです。今回は、例年よりも若干少ない、約2,000名の関係者が参加していましたが、リアルでのコミュニケーションを待ち望んでいたという感じが会話の中からも出ていました。
イベントでは、セッションへの参加やExpo会場でベンダーやスタートアップ企業の製品やソリューションを展示など、日本の展示会と基本的には同じ。業界動向調査やリレーション構築などを行います。
今回は、参加レポートを5つのトピックスで紹介していきます。
では、一つひとつ紹介していきます。
(1)Made in USA
私は、2018年4月に米国駐在を開始してから、毎年、このイベントには参加しており、ドローンの機体の遷り変りを見てきています。昨年は、オンライン開催であったため、実機確認がなかなかできませんでしたが、今回の会場では、Made in USAやAmericanMadeというキーワードが上がっていました。
参加した当初は、Expo会場でも中国企業ばかりが目立っていましたが、今年は、政治的な側面や世界的な半導体不足という事情もあり、米国製というのが兆候として表れていました。ただ、世界的なマーケットシェアという点では、中国のDJIをはじめ中国勢が依然多くを占めていますので、今後、どのように推移していくのかが注目です。
(2)ドローンデリバリーの有効性に脚光
COVID-19の影響により、実用化が実績として定着し始めてきたデリバリー事業です。米国では、まだまだ法規制により目視外飛行が難しい現状があるため、米国企業が国外で事業を実施しており、将来の国内での実用と需要に対応する流れになっています。
Zipline はその代表格であり、今回のイベントでも実績をアピールしていました。同社は、ガーナを中心としたアフリカでの薬やワクチンのデリバリーにドローンを利用しています。
配送と倉庫の拠点としてフルフィルメントセンターを配備し、そこをドローンの発射拠点として、デリバリーを実施しています。また、Googleが属しているAlphabet配下の企業でもある
Wing は、オーストラリアやフィンランドで、レストランやコーヒーショップの商品や薬局の薬のデリバリーを展開しています。今は米国のバージニアでも事業を始め、Uber Eatsのドローン版というとイメージしやすいと思います。
こういった動きの中で、小売業大手のWalmartも商品のデリバリーを陸路に加えて、空路という選択肢を増やそうとしていることもセッションの中で発表がありました。実証実験から実用化という流れが出来上がりつつあります。
(3)パブリックセーフティー
ドローンを利用してのデリバリー、輸送は、日本でも離島や山岳地帯などを中心に実施されているので、特段、米国だけが進んでいるということはないと思います。ただ、ここにあげさせていただいたパブリックセーフティーと呼ばれる警察や消防などでの利用という面は、かなり利用が進んでいるという印象を受けました。
セッションでは、警察や消防などの団体での利用について聞くことができました。
ChuraVista Policeのドローン利用
利用される理由は、①陸路よりも早く現場に駆けつけられる ②空からのリアルタイム映像が見られる ③映像による人員の配備や作戦の検討が可能、などです。リアルタイム映像では、建物内のサーモグラフィーや暗視スコープなど、肉眼で追うことができない情報を空からも入手できることで利用しているようです。
今回のイベントのセッション数を加味すると注目の高さを感じることができました。利用方法は、拡大していくと考えられます。
(4)目視外飛行(BVLOS:Beyond Visual Line of Sight)
前段で紹介した利用用途を見ると今後の鍵のひとつになるのは、「目視外飛行」がどのタイミングで利用可能になるかということです。これに関しては、数年前から議論もされていました。今回、FAA(アメリカ航空局)からの講演では、以下のように述べられていました。
『2021年6月にARC:Advisory and Rulemaking Committeesを立ち上げ、90名以上の業界有識者のもと目視外飛行に関してのルール策定のため、タスクフォースや委員会などを設立した。この中で安全性、セキュリティー、環境、その他の政策ニーズなど事業の社会的利益を綿密に検討している。』
今年の後半には委員会からの最終報告を受ける予定になっているとのことで、目視外飛行に関しての大枠が確認できるのももう少しというところです。目視外飛行は、Commercial UAVだけの話ではなく、eVOLTを利用するAirtaxiなど、人の輸送にも関わってくるため、安全性とセキュリティーの部分でかなり慎重になっていることが伺えます。
(5)ドローンのマーケットプレースビジネス
これまでの記事でもいろいろな業種に関してフォーカスしてきましたが、たびたび登場してくるビジネスモデルがマーケットプレースです。ドローンビジネスにおいてもマーケットプレースの事業化を実施している企業がいくつか出現していますし、ドローンを利用するマーケットとしては、 交通などのインフラ、パブリックセーフティー、建設、土木、土地調査、エネルギー、農業などさまざまあります。
利用用途としては、映像による点検、土壌分析、災害影響診断、2D/3Dマッピングなどなどいろいろあります。
どのマーケットのどんな情報を取得したいのか?ユーザーのニーズを聞き、それに応じることができるパイロットの斡旋や機体の貸与などの作業を実施します。取得したデータをユーザーに提供するまでをマーケットプレースで提供しています。
実際、ドローンのオペレーションや機体操作などは、専門性が高く、ユーザー側がすべて自前で準備するのはハードルが高いです。というのも、米国での商用ドローン利用には、パイロット免許が必要。機体も定期メンテナンスが必要なんです。さらにデータ取得するカメラやLiDARも定期的に性能が良いものが出てきます。そのため、維持をするよりも都度必要なタイミングで業者に依頼するというスタンスが比較的マッチしやすい領域なのかもしれません。
イベントの参加報告はいかがでしたでしょうか。今回は、個々の技術の紹介というのではなく、業界の方向性やビジネスモデルがどう動いているのかということに着眼してお届けしてみました。ご感想や詳細を聞きたいなどございましたら、お問い合わせいただければと思います。
ちなみに、イベント自体は、ワクチン接種証明書の提示はなかったものの、フィジカルコンタクトの禁止やマスク着用、ハンドサニタイザー(手指消毒)促進などのアナウンスと会場内にアルコール消毒剤が設置されていました。
今後もリアルイベントが増えていきそうですので、また現場の臨場感などをお届けしたいと思います。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。
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