ユニアデックスの片澤です。 第11回目をお届けします。
米国に来てからマーケターという立場で、いろいろなガジェット商品を可能な限り、家計の許す範囲で試しています。そして今回は、電動キックボードを購入してみました。
私が購入したのは1回の充電で12マイル(19.2㎞)走行可能できて、時速15.5マイル(24.8Km)です。このタイプが日本円で3万円弱でしたので、電動自転車よりもかなり安いです。
日本では公道を走るためにナンバー取得などのハードルがありますが、すでにいくつかの場所で実証実験が始まっていますので、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
「ヘルスケアテック」分野は、成長領域
さて、ガジェット商品なども見ることができる米国最大のテックイベント 「CES 2021」が開催されました。今回はオンライン開催のため、ブースを回って目で見る楽しみがなかったのが残念で仕方ありませんでした。
CESでは、毎年、InnovationAwardsが選定されます。今年はHealth Tech関連プロダクトが数多く選出され、Health & Wellness部門が、386件中47件(2021)受賞と大きなポジションを占めていることがわかります。
第11回目は世間の関心が強い「ヘルスケアテック」にフォーカスして、「テレヘルス/遠隔診療」「デジタル治療(DTx)」「リモート患者モニタリング」の3領域をご紹介します。
この3つの領域には、(1)資金調達が多い、かつ(2)資金調達を受けたスタートアップ企業数が多い。という特徴があります。このことから市場領域が成長領域であり、プレーヤーがまだ固定化されていない。新規参入も活発であることがわかります。
テレヘルス/遠隔診療
遠隔医療領域は、COVID-19の影響を最も大きく受けました。eMarketerの調べでは、2019年と比較して、2020年の米国での遠隔診療利用者数は、ほぼ倍増。現在も継続して増加傾向であり、2023年には6400万人に上ると予想しています。別のデータでは、2019年10月と2020年の同月の医療請求額が約3,000%増加したとレポートが出ています。
遠隔医療を認識していたが、COVID-19以前はあまり利用する意識はなかったのではと思います。やはり直接医師に会って診断してもらうと安心感があるので。ただ、COVID-19の影響で必然として遠隔医療を利用した結果、その有効性に気づいたということでしょう。実際、私も利用しましたが、ビデオチャット越しに「症状を伝え」 ⇒ 「処方箋を出してもらい 」⇒「 近所のドラッグストアで薬を受け取る」という一連の流れは非常に便利でした。
今後は、診断に必要なデータ(採血、ウイルス検知、尿検査など)を患者自らがどうやって簡単に採取できるか。その採取したデータを病気の診断にちゃんと活かせるか。ということが次のステップになると感じていますが、的確な採取とセキュアなデータ転送などまだまだ多くの課題があります。
米国での遠隔医療は、第4回目でも少し紹介しましたが、病院だけでなく、自身が契約している医療保険会社が提供しているサービスも利用は可能です。それ以外にも遠隔医療を専門で提供しているサービス会社を個人で選択して、利用することも可能です。
以下は個人向けに実施している遠隔医療サービスのユーザー満足度調査結果です。ここにあげられている企業が中心となり、市場をリードしています。
Amwell マサチューセッツ州 ボストン
2020年9月にIPOを果たした遠隔診療プラットフォームを提供する企業。
個人向けには24時間365日利用できる緊急ケア(Urgent Care)を$79から提供し、症状に合わせた専門医の診察を受けることができる。メンタル治療サービスもあり、訪問治療よりも割安。提携医療保険のサービス適応も可能であり、保険外の診療も可能。プラットフォームは、医療プロバイダーに対してサブスクリプションサービスとして提供も実施。
Teladoc ニューヨーク州 ニューヨーク
世界170カ国以上でサービスを提供しているオンライン診療プロバイダー。
遠隔診療の最大手ともいわれており、United Healthcareなどにもプラットフォームを提供している。2020年8月には、糖尿病患者向けのデジタルコミュニティーを提供しているLivongoを買収したことでも話題に。オンライン診療にプラスしたデジタル治療の領域までサポートしていく。
デジタル治療(DTx)
デジタル治療領域は、慢性疾患に対しての支出を削減するツールとして人気を集めており、COVID-19のパンデミックによりデジタル治療法が脚光を浴びる結果となりました。対面での治療などができなくなったことから、遠隔診療にデジタル治療を組み合わせたり、薬剤マネジメントプラットフォームとデジタル治療を組み合わせたりするビジネスモデルがそれにあたります。また、FDA(アメリカ食品医薬品局)が2020年4月からデジタルメンタルツールの承認に関して規制緩和した影響も大きいと思われます。
ここでいくつかのスタートアップ企業を紹介します。
AkiliInteractive マサチューセッツ州ボストン
子供のADHD(注意欠如・多動症)に対してビデオゲームベース(EndeavourRx ™)の治療方法を提供。利用には医師の処方が必要となる。利用した患者の2/3の親からはADHDが改善したとするレポートも出されており、薬に依存しない治療方法が注目を浴びている。 FDA認可済み。
Omada カリフォルニア州サンフランシスコ
糖尿病、高血圧、行動上のフィジカル問題を管理または防止するためのデジタルケアプログラムを提供。ケアプログラムには、専用デバイスとアプリを利用し、結果に応じたバーチャルコーチング、リアルタイムの健康インサイトなどが可能。糖尿病治療では、前述したLivongoとライバル会社。
HappifyHealth ニューヨーク州ニューヨーク
うつ病改善プログラムを提供。科学者やヘルスケア臨床医、ゲーム専門家のメンバーにより、幸福度に着目し、科学的根拠に基づき、個別化されたCBT(認知行動療法)アプリを提供。うつ気分や不安の治療に関する最新の科学と基本的なビデオゲームのメカニズムを組み合わせた、セルフケアサービスプラットフォーム。
リモート患者モニタリング
医師が患者の状態をリアルタイムで監視することで、状態が悪化する前に検知をすることができるため、リモートモニタリング領域も慢性疾患の患者に対して非常に有効な技術になります。リモートモニタリングツールは、Apple社の最新のApple Watch6がFDA認可の心電図モニターや血中の酸素飽和度が測定でき、Amazon社のHaloデバイスが発売され話題になりました。
今回は、冒頭にご紹介したCESに参加していた企業から一歩進んだソリューションを紹介します。これらのソリューションと遠隔診断がセットになるとより利便性が高まります。
BioIntelliSense カリフォルニア州レッドウッドシティー
モニタリングデバイスとデバイスにて取得したデータプラットフォームを提供。 CESでInnovation Awardを受賞したBioButtonは、最大90日間の継続的な体温、呼吸数、心拍数を測定。COVID-19のスクリーニングに必要なデータを取得可能。学校や職場などエッセンシャルワーカーのモニタリングとして需要が高まっている。FDA取得済み。
NuralogixCorporation カナダ トロント
スマートデバイスのカメラを利用し、ビデオキャプチャーによる非接触型健康モニタリングソリューションを提供。30秒で心拍数、不整脈、呼吸数、血圧、心拍変動、ストレスレベル、心血管疾患のリスクが測定可能。このようなキャプチャリングソリューションは他にも存在しているが、血圧測定まで可能にしているのは独自性がある。
個人使用のための無料のiOSとAndroidのダウンロードとしてアプリを提供しており、企業向けにはSDKとホワイトラベル付きの統合マネジメント機能を提供している。 FDAは、未承認。
ヘルスケアテックでは、ここに紹介したソリューションがAIや5G以降の高速通信と密接に関わっていることは言うまでもありません。
リモートモニタリングで集めたデータは、クラウド上でAI、マシンラーニングを利用し、取得したバイタルデータが過去の症例から患者にあった治療法を自動的に選択するなどはすでに実施されています。ここに5G 以降の高速通信が加わることで、バイタルデータ以外の高精細画像データなどをプラスすることでリアルタイム性の向上と、医療/治療の精度が上がることが期待されています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。