ユニアデックスの片澤です。
今回で、連載30回目を迎えました。長く続けていられるのも読者の方々からの反応が、大変励みになっているからです。そして、バックナンバーを見直すといろいろな領域に関して紹介してきたと思う反面、まだまだ、お伝えしきれていないこともありますので、引き続きお付き合いいただければと幸いです。
老舗の遊園地&プール『Great America』
さて、夏真っ盛り。夏と言えば、プールですよね。ということで、シリコンバレーにある老舗の遊園地&プールの 『Great America』を紹介します。
NFL 49ersの本拠地『Levi's stadium』は、以前COVID-19のワクチン接種会場として紹介しましたが、その真横には、1976年に営業を開始した『Great America』が存在します。閉園の危機もありながら、40年以上も営業を続けてきた施設ですが、今回、運営会社が変わることと土地の賃貸契約期間もあり、最短で2028年に閉園を迎えてしまう可能性が出てきました。歴史がある施設はできれば思い出と一緒に残してもらいたいものです。
同施設には、夏期間はプールも併設されているため、早速行ってきました!スライダーや流れるプールなどアトラクションもいっぱいあり、とても楽しめます!! ただ、、、水が冷たいのです!日本の同様の施設であれば、ある程度温水になっているかと思いますが、ここは、日本人には、常識外の冷たさで結局、長くは入っていられませんでした(笑)。日本人と体感温度が違うアメリカ人は、冷たいカリフォルニアの海もプールも問題なしというのが一番の感想でした。
では、本題に入っていきましょう。
日本では、ここ数年、夏になると、『記録的豪雨』や『記録的猛暑』が大きなニュースになっています。そして、米国では、本連載でも度々取り上げていますが、夏から秋にかけて、山火事のニュースが飛び込んできます。その規模は、すさまじく大きく、今年もカリフォルニア州の北部のMakinneyFireが約6万エーカー焼失と猛威を振るっています。これは実に東京ドーム5,175個分に相当します!
その原因の1つが地球温暖化であり、山火事を防ぐためには温室効果ガス削減、カーボンニュートラルなどの対策があります。今回は、温室効果ガスとカーボンニュートラルに関してお届けしていきます。
温室効果ガス(GHG)削減とカーボンニュートラル
まずは、米国における気候変動に対しての温室効果ガス削減の取り組みからふれていきたいと思います。
2015年のパリ協定(COP21)では、産業革命以前の平均気温から+2℃を保ちつつ、1.5℃を努力目標とされていたのが、昨年スコットランドで開催されたCOP26では、明確に+1.5℃と目標に変わりました。
各国のカーボンニュートラルに対しての取り組み宣言や法律化も増えており、下記の通りとなっています。
主要国の対応として、2050年を目標としてカーボンニュートラル実現を謳っています。
ここで米国とカリフォルニア州の動きに関して紹介します。
自動車関連が多いですが、化石燃料の廃止と再生エネルギーの利用をベースに宣言しています。これにならう形で、企業側の対応も本格化しています。GHGの削減目標やカーボンニュートラルへの取り組みと達成年を企業自ら宣言したり、科学的に裏付けされたデータからカーボンニュートラルへの計画、取り組みを審査するSBTiなどの外部団体を利用して宣言を行っているケースもあります。
カーボンニュートラルに向けてどのように実施しているかというと、
●自社のGHGがどのくらいなのか、正確な数値を把握する。
●CO2を含むGHGの排出量を減らす。
●それでも排出されたGHGの量に対してクレジット化し、カーボンクレジット市場でGHGの吸収量のクレジットを購入する。
などの方法があります。
自社のGHGがどのくらいなのか、正確な数値を把握
GHGには、スコープ1、2、3と3つのインベントリーに分かれています。これらを把握することにより、正確なGHGの排出量を計算することができます。
スコープ1と2は、自社で利用した燃料や電気の使用量が把握できるため、GHGの排出量を計算することができます。スコープ3は、上流、下流のサプライチェーンや社員一人ひとりの移動に関わる部分など間接的な要因が大きく、製造業は、その製品の使用や廃棄に至るところまで管理をしなければならないケースもあります。そのため、計算をするにしても、データを集めることから始めなければなりません。
このスコープ1から3に至るまでのデータを収集し、可視化、レポーティングするカーボンアカウンティング分野に注目が集まっているのもそのためです。
カーボンアカウンティングの米国のスタートアップには、以前の記事でも紹介したPersefoniやSINAI Technologies、Watershedなどがあります。また、SalesforceやSAP、Microsoftなどもサービスを開始しており、企業側には不可欠なITツールとなっていくと思われます。
GHG削減に関して
企業の事業内容によって、GHG削減方法はかなり違いがあると思いますが、取り組みや方法に関して簡単にまとめてみました。
エネルギーに関しては、化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えることでGHGが削減可能であり、水力、風力、地熱、太陽光などさまざまな取り組みがなされています。その中でも今注目を浴びているのが、核融合が挙げられます。核と聞くとなんだか不安になりますが、不安になるのは核分裂の方であり、核融合は、原子核を合体させる方法で、原則として暴走せず、二酸化炭素を発生させないで大規模なエネルギーを生み出すことが可能となります。
資源や材料としてCO2を利用する取り組みも行われており、CO2から炭酸ガスの生成や水素と反応させメタンガスとして再利用する方法があります。また、コンクリートの製造過程においてCO2を混入する方法なども実施されています。EV用の電池のリサイクル利用などと同様に循環型利用(サーキュラーエコノミー)が始まっています。
GHG排出量と吸収量の取引、オフセットマーケットプレース
化石燃料ベースの電力や自動車を利用している間は、GHGの排出量がゼロになることは難しく、それを補う植林や廃棄物の再利用などをもってしてもオフセットすることは困難です。そのために吸収量の余剰分の取引を実施するマーケットプレース市場もカーボンアカウンティング市場に追随する形で成長しています。
さて今回は、改めて、温室効果ガス削減とカーボンニュートラルに関して紹介していきました。そして、スコープ3にあるように、商品の流通過程で、
●どのくらい運搬にエネルギーを使用しているのか
●どのように商品が保管されているのか
●どの程度使用されているのか
など、サプライチェーンを通じたマネージメントを実施することが今後は重要になります。
そして、サプライチェーンマネージメントに関しては、GHG以外にも考慮しなければならないことが表面化してきています。そのことに関しては、次回の記事でお届けします。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。
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