ユニアデックスの片澤です。
今回は、いつもお伝えしています米国動向ではなく、カナダでのレポートをお届けしていきたいと思います。というのも、2022年6月20日~23日に開催された、北米で最大級のテックイベント「Collision 2022」に参加しました。このイベントレビューをご紹介します。
はじめに、Collisionについて説明します。
世界的に大きなテックイベントWeb Summitの北米版が、Collision(アジア版は、RISE@香港)
Web Summitでは、ハードウエアからソフトウエアまで、さまざまな領域のテクノロジー全般にフォーカスしており、スタートアップの見本市的な要素が強いイベント
Collisionは、2019年からカナダのオンタリオ州トロントで開催(以前は、テキサス州ニューオリンズ)
過去2年間は、COVID-19の影響でオンライン開催。2年ぶりにIn person開催
トロントという土地柄、AIを利用したソフトウエアやフィンテック、メドテック領域が比較的多い
イベント参加レビューの前に、カナダとトロントに関しても、紹介します。
トロント地域は、トロント市を含め、人口が634万人を誇るカナダ最大規模の経済都市圏
トロント市内は、高層ビルが立ち並び、カナダ屈指の金融街でもある。さながら日本の丸の内といった印象(筆者感想)
市内交通は、地下鉄、路面電車、バスなどが発達しており、アプリを利用した乗降車が簡単にできる
治安も米国とは比べものにならないくらい安全で、街もとてもきれい(筆者感想)
シリコンバレーのスタンフォード大学やUC バークレー校のような世界を代表するトロント大学がある
トロント大学のジェフリー・ヒントン教授は、AIの第一人者として知られ、大学を中心としたAIの研究によるビジネスエコシステムが存在している
今回、サンフランシスコからトロントに入りましたが、フライトの遅延がありました。私の周りの方々もオーバーブッキングや便のキャンセルなどの被害を受けるなど、正常に飛ぶフライトがないような状態でした。
今、北米国内の空の便は、かなり乱れているそうで、パイロットや地上の係員に至るまで人員不足で、その影響が多方面に出ているようです。これから北米移動予定の方は、ご注意ください。
さて、カナダとトロントの紹介をしたところで、早速Collisionのレビューに移っていきたいと思います。
Collision2022の概要
初日のオープニングセッションと3日間のメインで合計4日間開催
20分のトークセッションが、大~小のステージで毎日開催
スタートアップピッチが、丸一日中開催
Expo会場では、スタートアップブースがあり、毎日入れ替わる
参加チケットがSold outとなり、35,000人以上が参加。これに加えて1,500以上のスタートアップと600人以上のスピーカーが参加
今回、私は、初めて参加しましたが、過去の他のイベントでも聞いたことのないチケットSold Out。コンサートやスポーツイベントでもない大型テックイベントで初めて目にしました。そして実際に会場は、人・人・人。。。
とにかく、すごい盛り上がりでした!COVID-19からの解放ということと、直前に米国からの入国に関して、検査が必要なくなったことなどもあり、一気に人が押し寄せたという感じだったようです。
トークイベント
スタートアップばかりではなく、大手企業も参加してましたが、トークセッションから2つほど紹介します。
Boston Dynamics(Hyundai グループ)
お馴染みの4足歩行ロボットが韓国アーティストのBTSの曲でダンスしている映像や実際のデモもあり、ステージにも多くの人が詰めかけていました。今後の新しい取り組み、より人間らしい動作で作業を実施できるロボットを目指していることをアナウンスしています。
ロジスティックに特化しているロボットを提供しているStretchは、自動でベルトコンベア接続による積み荷降ろし作業などを実現し、ロジスティック作業の自動化をさらに加速させています。
ロジスティックやメンテナンス作業でのより人間らしい動作を実現するために、シングルアームではなく、デュアルアームで持ち直すことや動作時のバランス制御、スローイングなどにフォーカスしています。
私は、ロボットの専門家ではないですが、イベントで聴講するたびに同社のロボット技術の進化に毎回驚かされます。今後も同社の動きには目が離せません。
Walmart
北米最大の小売とEコマースを展開しているWalmartですが、ここでは、クラウド戦略とAR (Augmented Reality:拡張現実)の取り組みに関してプレゼンをしていました。
まず、クラウド戦略ですが、Microsoft AzureとGoogleCloudとWalmartのプライベートクラウドを3つ利用したTripletCloudです。
米国の東、中央、西のエリアごとにAzure、GCP、プライベートクラウドを利用したハイブリッドクラウドを配置し、これに接続する10,000ノードのエッジコンピューティングを利用することにより、低遅延での高速処理とデータ利活用などに最適なモデルを構築しているようです。
また、これらを効率的に利用することで、クラウド利用のコスト削減も18%実現しているようです。
ARの取り組みとしては、店舗での商品検索やEコマースでの家具の配置など、スマートフォンのアプリを利用してARの実現方法を紹介していました。
スタートアップのピッチコンテスト
世界から集まった56社のアーリースタートアップ企業がピッチコンテストに参加し、こちらも世界から集まった投資家の方々が事業内容やプレゼンに関して評価を実施します。
このピッチイベントファイナルに進出したのは、メディカルテック企業のDot Mind Unlocked、フィンテック企業のXare、メディア向けクリエイトプラットフォームのMODUの3社。そしてコンテストのWinnerは、DotMind Unlockedが輝きました。
Dot Mind Unlockedは、専用ヘッドセットを利用したリアルタイム脳波検出を元にAIによる分析でメンタルセラピーなどに利用するソリューションに加え、ADHD(注意欠如・多動性障害)に治療に利用ができるソリューションを提供しているカナダのスタートアップです。
そして、Expo会場ですが、冒頭にもご説明しましたが、3日間で1,500社以上のスタートアップが参加しており、下記に示す通り、領域も幅広いです。
スタートアップの参加企業で比較的多かった領域は、Enterprise software、 Fintech,Medtech & Pharma、AI & Machine Learningなどが割合としても多かったです。さすがにすべてのスタートアップのブースを見られませんでしたが、注目したEnterprise softwareの中で、私が特に気になった企業を3つほどご紹介します。
holmetrics カナダ カルガリー
従業員や組織のメンタルヘルスと業務上での安全性、リスクを分析することができるデータ分析プラットフォームを提供。
Microsoft TeamsやSlackなどのワークツール内でやり取りされているメッセージをNLP(Naturul Language Plocessor)で理解することで分析を実施する。
リアルタイムでやり取りされいてる内容から分析することができるため、日々のリアルタイム状況がわかる。
Private AI カナダ トロント
動画、画像、音声、ドキュメントなどのデータに対して、個人情報とされる顔画像、ワードをNLPを利用して分類し、その部分に対してマスキング処理や置換処理を実施するAIソフトウエアを提供。
GDPR、CPRA,、HIPAAや30か国語以上に対応し、その精度は99.5%。AWSやGCPなどのクラウドサービスやDockerなどとシームレスに連携することも可能。
Dots for 日本 東京
デジタル化、オンライン化から取り残されているアフリカに特化した安価なデジタルサービスプラットフォームを提供。
キャリアサービスでインターネット環境を準備するにはコストと期間がかかるため、クローズド環境でさまざまなコンテンツを提供できるコンテンツサーバーと無線ネットワーク、スマートフォンを用意し、デジタルを体験できる環境を提供。
コンテンツは、エンターテイメントを中心に1,500以上を準備し、アップデートは、人海戦術により、定期的に更新を実施する。将来的には、学習コンテンツなども拡充し、利用用途を拡大させる。現在は、ベナンにてサービス展開中。
Collision参加レビューは、いかがでしたでしょうか。スタートアップ見本市のイベントでしたので、若いスタートアップが多く、どの領域にビジネスニーズがあるのか、これからのビジネスヒントを見つけるという意味とAI テクノロジーの街、トロントでの参加の価値はあると思いました。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【Vol.28】AR/VR、メタバースのテックイベントAWE 2022レポート(2022年6月14日号)
【Vol.27】テクノロジーサミットEnterprise Connect 2022から見える「ハイブリットワーク」の最新動向(2022年5月17日号)
【Vol.26】米国でも激化する「高速デリバリー」市場をレポート!(2022年4月12日号))
【Vol.25】今、注目されている「Web3.0」の特徴とアプリケーションを解説!(2022年3月8日号)
【Vol.24】米国のメディアが注目している2022年テクノロジーは!?セキュリティ―がカギを握る(2022年2月15日号)
【Vol.23】米国最大のテックイベント「CES 2022」レポート(2022年1月25日号)