ユニアデックスの片澤です。
まずは、私が所属しているNUL SystemServices Corporationですが、2022年4月1日に日本ユニシスがBIPROGY株式会社に社名変更に伴い、BIPROGY USAに変更となりました。どうぞよろしくお願いいたします。
そして、「シリコンバレー便り」連載ですが、3年目に突入しました。連載を開始したのは、COVID-19の広がり始めた2020年の3月中旬。あれから2年が経ち、米国では、収束感が出始めてきました。
PandemicからEndemicへ移行
感染者数は、2022年1月10日の約125万人のピーク時から徐々に減少をはじめ、直近のデータでは、1日平均3万人を切っています。ニュースでは、PandemicからEndemicへ移行と報道されています。
この変化は、私の周りの環境でも身近に感じられるようになりました。
●学校(小中高)のマスク義務化が3月11日に終了。屋外、屋内での要件もなくなり、マスク着用に関しては個人や保護者の選択です。
●公共の屋内施設(商店、レストラン、ジム、映画館など)でもマスク着用義務は撤廃(施設の判断に依存)、ワクチン接種証明書の提示要求も終了。
●カリフォルニア州では、4月1日で1,000人を超える大型屋内イベントでのワクチン接種証明書の提示要求や陰性証明書の提示も終了。
●GoogleやAppleなどをはじめ、シリコンバレー企業が4月4日から出社再開。
これらの州のルール改正を受け、施設ごとでどのように適応するかが決まってきます。ただ、実際の現場では、マスク推奨となっていても従う人は、減ってきている印象です。
CDCからのアナウンスも集団免疫ができ上がってきているといわれていますので、このまま収束していく流れを感じます。
先日参加した大型イベントでは、ほぼマスクをしている人はいませんでしたし、ソーシャルディスタンスも特に意識なしといった状況です。このようにイベントは、InPersonが戻ってきますので、楽しみです。
「高速デリバリー」の競争激化
今回は、2月号でも今年のトレンドとして挙げていた、「高速デリバリー」に関してお届けします。
グロッサリーデリバリーに関しては、パンデミックの影響もあり、成長を遂げた事業モデルであることは、以前の記事(Vol.16)の中でも触れました。
ここにきて、小売りデリバリーの新しい形態、Ultrafast Deliveryの事業競争が激化してきたので、まずは、こちらをご紹介していきます。
UltrafastDelivery は、10~30分くらいで購入商品を届けてくれる高速デリバリーサービスになります。Rapid DeliveryやQuick Deliveryとも呼ばれています。食料品をはじめ、日用品までコンビニエンスストアに置かれている”よく利用される商品”をデリバリーするのが特徴です。では、そのスタートアップ企業を見ていきましょう。
他のテック分野とは違い、Ultrafast Delivery分野の特徴としては、米国が主導というわけではなく、全世界的に利用が進み出していることがわかります。特にヨーロッパ各地での競争が激しく、その波が米国、ニューヨークにも押し寄せた印象です。
ここにデリバリー大手3社が攻勢を仕掛けており、それぞれ次のような取り組みを開始しています。
●DoorDashは、コンビニエンスストアDashMartを立ち上げ、ここからの15~30分配送を実現。
ニューヨークは、15分が可能に。
●Instacartは、最速オプションが30分でしたが、グロッサリー商店向けに15分を実現するための新たなプラットフォーム(CarrotWarehouses)をリリースし、対応商品から15分配送を実現予定。
●UberEatsは、Gopuffと連携し、30分での配達を可能に。
大手がサービス拡大をしている中で、Gopuffなどは、順調に利用ユーザー数も売上も伸びているようですが、スタートアップ企業の淘汰も始まっています。
先月、FridgeNo MoreとBuykの2社が事業を閉鎖しました。Fridge No More(資金調達$16.9M)は、2020年10月から、Buyk(資金調達$46M)は、2021年9月からと同じパンデミックの間にサービスリリースした企業ですが、2022年3月に資金不足に陥り、サービス終了ということになりました。
なぜ、短期間で資金不足に陥ったのか、それは従来のデリバリービジネスとの形態の違いによるところが大きかったと思われます。
これがすべてというわけではないと思いますが、一定の販売数を満たすためには、人口密集地帯の都市部にダークストアなど不動産が必要になったこと。在庫を準備する必要があったこと。専属ドライバーを確保、雇用する必要があったことなどが挙げられると考えられます。
Ultrafast Deliveryの仕組みを紹介
さてここからは、Ultrafast Deliveryのバックサイドを紹介します。
既知のコンビニエンスストアを提携し、そこにある商品を提供しているサービスもありますが、ダークストアと呼ばれるオンライン専用の店舗を都市部に構え、サービスを展開しています。
オーダーを受け取ってから15分で届けるとした場合、ピッキングから梱包で5分、デリバリーにかけられるのは、10分足らずです。10分で行ける範囲の中心にダークストアを展開していく必要があります。
Gorillasは、ニューヨークでサービスを展開していますが、マンハッタン島に11拠点のダークストアを展開し、島全体をカバーしています。(その他、ブルックリンやクイーンズでも展開中)
ダークストアでは、日常に必要な約2,000アイテムが扱われており、日本のコンビニエンスストアに近いものを提供しています。
ということで、ニューヨークには行けませんでしたが、近くのDooDashのDashMartに行ってみました。
外観は、普通の雑居ビル。この建屋の中に2,000種類の食料品や日用品があります。入口の前には、DashMartの案内。
ここでピックアップの連絡をし、裏口で商品ピックアップ。残念ながらこの時は、Dasher(ドライバー)はいませんでした。中を見ることはかないませんでしたが、中はこのような感じになっているようです。
グロッサリーデリバリーが進む中で、小売店側は、マイクロフルフィレメントシステム活用も進んでいますが、都市部での利用やオーダーからの即時(数分)対応はまだ難しいようです。
●動画は、米honeywell のマイクロフルフィレメントのイメージ
マイクロフルフィレメントシステムは、既存のスーパーマーケットの敷地内に設置する、簡易的かつ安価なオートメーションシステム。オーダーからピッキング、配送準備までを提供する自動倉庫でロボットが棚から商品をピックする技術です。敷地面積は、900~4,500㎡程度が必要になり、都市部での利用には大体450㎡程度ですので、サイズ的に大きく、設置コストも2,000アイテムクラスの施設では割高のようです。
都市部に合わせた小さなナノフルフィレメントシステム(マイクロの下なので、ナノですね。)の技術進歩とコスト圧縮が求められます。
Ultrafast Deliveryのターゲットは、下記のように1時間は待てないけど、15分は待てるというときの需要を想定しているようです。
●時間がないとき。
●自宅でクッキングする直前や最中に、必要な材料がない場合にさっと、注文する。
●深夜遅い時間にちょっとしたものを頼みたいとき。
日本は、比較的深夜でも安全であり、24時間営業のコンビニエンスストアがいたるところにあるため、Ultrafast Deliveryがどこまで浸透するのかは未知数ですが、諸外国の都市部ではすでにサービスが起動し始め、消費者の生活に密着した存在になっています。
読者の皆さんもニューヨークやヨーロッパに行かれる場合は、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。私も次回、試してみたいと思います。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。