ユニアデックスの片澤です。米国はポストパンデミックの動きが活発化してきています。6月上旬から各州でCOVIT-19感染対策への規制が緩和され始め、カリフォルニア州も6月15日に規制が解除されました。週末のダウンタウンやレジャー施設などは、人であふれていたりします。
以前の日常に戻りつつありますが、便利なサービスを利用すると、そのサービスが持つメリットから抜け出せずに定常的に利用してしまいます。たとえば「フードデリバリー」がそれです。
ちょっと、今日はバタバタして夕飯の支度が面倒。。。
あっ!牛乳がない。。。
など結構ありますよね。
思い立った時にぱっと、利用できるのがありがたいですし、定期的に届く$10 Off クーポンオファーなどの有効期限が近くなると、「あっ、使わなきゃ!」という心理的な訴えに、どうも弱い我が家です。
そこで、今回は、デリバリーに関してお届けしていきます。まず、デリバリーを「グロッサリーデリバリー 」と「フードデリバリー」の2つに分けて紹介します。
COVID-19の影響から好調なグロッサリーデリバリー
グロッサリーデリバリーは、小売店の御用聞きで自宅に必要なものを配送するというビジネス形態で、以前から提供されていたサービスであり、日本でもむかしからあったと思います。現在のグロッサリーデリバリーは、インターネットの普及と同時期に始まりました。
1990年代後半のHomeGrocer.comやWebvanなどがその原型といわれています。この当時は、まだ、e-コマースがはしり始めたばかりで、グロッサリーデリバリーも利用者数の伸びよりもインフラ投資がかさみ、また食料品や日用品の利益率の低さから収益化、事業化には至りませんでした(倉庫、在庫保管などすべて自社モデル)。HomeGrocer.comはのちにWebvanに買収され、そのWebvanも、破綻後にAmazon に買収されました。
その後、10年余りの歳月がかかり、Amazon FreshやWalmartなど小売店の大手企業が率先してデリバリービジネスが確立されていきます。
そして、このグロッサリーデリバリー業界の中で設備を持たず、既存の食料品スーパーと連携する形のビジネスモデルが確立されていきます。その企業の代表がInstacartです。
Instacartは、2012年に起業したスタートアップ企業で、ユーザーが専用アプリやWebサイトで注文した商品をショッパーが代わりに買い物をして、家まで運ぶサービスを提供しています。自社では販売設備を持たず、既存のスーパーや小売店との連携で事業化しています。
日本でもグロッサリーデリバリーはありますが、自社でサービス展開をしているケースがほとんどです。ここで米国の小売店のサービス内容を見てみましょう。
WalmartやWhole Foodsなど自社で配送を提供している企業もありますが、Instacartは、ほぼすべての小売店をサポートしています。中でもCostco やPublix Super Marketsは、デリバリーサービス自体をInstacartに委託しています。
得意な部分はその会社に任せるといったエコシステムの典型ですが、 一般的なフードデリバリーの課題としては、以下が挙げられます。
1.工事や渋滞、自然災害などにより、道路事情がリアルタイムで変更される中で情報をタイムリーに取得し、それを配送時間に反映する必要がある。
2.配達時にユーザーの不在や間違った住所など、外部要因で発生する不用意な遅延に対応する必要がある。
3.デリバリー数の増大をするためには、比例した人や車など設備投資と維持コストが発生する。
これらの課題をデリバリー専属会社は、特化したソフトウエアを利用することにより、配達所要時間の短縮、スマートルートプランニング、配送効率化を実施することで差別化を図っています。
Costcoなどは、こういった課題を自社で解決するのではなく、デリバリー専属会社とうまくサービス連携することで、課題解決を実現しています。そして結果として、顧客満足度向上につなげています。現状、Instacartが大きなシェアを占めていますが、米国でも買収による業界の再編が起こっています。
2017年4月FreshDirect ⇒ AHOLD Delhaizeによって買収
2017年12月Shipt ⇒ 小売店大手のTargetによって買収
2018年2月Favor ⇒ H.E.ButtGrocery によって買収
このように既存小売店が自社サービス向上やデリバリービジネス対応のために買収しています。また、フードデリバリーのDoordashやUber Eatsなどがグロッサリーデリバリーを始めています。先日、Doordashは、Albartosonとの提携も発表しており、事業拡大を狙っています。
こうした大手の動きがある中で、尖がった特徴を出しているデリバリー企業もあります。アジア食材のオンラインデリバリーを提供しているSayWeee。
コンビニエンスストアやPharmacyなどで購入するスナック菓子や簡単な日用品に特化し、格安送料と短時間デリバリーを提供しているGopuff。
ローカルの小さな商店のデリバリーを提供しているMercatoなどがあります。
このような特化型のサービスは、日本でも需要が期待できるのではないかと思っていますし、今後の展開にも期待したいです。
成長するフードデリバリー
フードデリバリーは日本でもUber Eatsや出前館などが認知され、成長領域になっているのではないでしょうか。Doordashも日本展開というニュースを目にしました。
米国でも同様に一気に利用数が増え、市民権を得たサービスであることは間違いありません。
業界を率先しているのは、Grubhub、Uber Eats、DoorDashで、3社で実に7割から8割のシェアになります。
このデリバリービジネスの下支えとなっているのは、前述したグロッサリーデリバリーも含め、ギグワーカーと呼ばれるフリーランスです。米国では、フリーランスの就業形態が多くあり、その1つの選択肢がこのデリバリー事業です。米国では、現在約6,500万人以上がフリーランスにあたり、今後数年で就業人口の約半数に達すると言われています。
また、以前の記事でも取り上げましたが、人手によるデリバリーからドローンやロボットなどの利用が進み始めています。自動配送を提供しているNuroは、テキサス州ヒューストンでDomino's pizzaやFedexといった企業に採用され実証実験を開始しています。
Domino's pizzaのCM動画がイメージしやすいのでご参照ください。
料理人を後押しするクラウドキッチン
このフードデリバリー業界の裏側にあるサービスとしてクラウドキッチン、ゴーストキッチンというのを聞いたことはありますでしょうか。
クラウドキッチンは、空いている倉庫やビルの空きスペースなどを利用して、そこにレストンなどで使用される業務用キッチンを用意します。レストランビジネスを実施したい人や料理人などが利用したいタイミングでレンタルし、デリバリー専門のレストランを開くことができるサービスです。
リアル店舗を持たないため、圧倒的なコスト削減が可能であり、従業員も限られた人数で済みます。デリバリーアプリとデリバリー自体は、既存のデリバリーサービスを利用することで設備投資も最小限にできます。
サービスの中には、オーダーの仕組みから顧客管理システム(CRM)などを合わせて提供する付加価値をアドオンしたものもあります。
COVID-19の影響により、従来のレストラン事業者がクラウドキッチンに移行したり、新たなビジネスチャンスを求めた料理人などが利用したりなど、成長している領域といえます。
主なクラウドキッチンの提供企業は、Softbank Vision Fundも出資しているOrdermarkや 有名VCのAndreessen Horowitzから出資を受けているALL Day Kitchensがあります。
また、クラウドキッチンは、クラウドの特徴を生かしたビジネスも提供できるのではないでしょうか。
クラウドキッチンを利用した事業者Aは、自分のクラウドレストランA、B、Cを1つの厨房で実現できます。オーダーやデリバリーは、既存サービスを利用。
また、新たにDというレストランは、某フランチャイズ店のデリバリー専門レストランとしても営業する。
材料コストや料理の種類がどこまで対応できるのかということはありますが、1つの設備で、複数のブランド、入口を設けることができます。
これはクラウド事業でいう、マルチテナントであり、クラウドのメリットの1つです。
コロナ禍で家庭の暮らし方でもDXが起こった例としてデリバリーサービスを特集してみました。今回は取り上げていませんが、ミールキットデリバリーといって届けてもらった食材をインストラクションに沿って調理をすることでおいしい料理が楽しめるサービスもあります。また、別の機会にYouTube動画で紹介したいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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