季節の養生のススメ 第1回
四季の移ろいの中で、気づけば体の不調を感じていることはありませんか。
いま注目されている「セルフケア」。東洋医学では、「養生」という考え方として受け継がれてきました。新連載では、「プロフェッショナルから学ぶ仕事の心」第21回で養生についてお話を伺った薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師の鈴木養平先生に四季に合わせた気軽な養生の取り入れ方を教わります。第1回は、暑さと湿度が高まる夏の養生についてお届けします。

ジメジメした夏を乗り切る秘けつは「脾(ひ)」のケアにあり!

梅雨から夏にかけて、なんとなく体が重い、食欲がわかない、だるくて動きたくない……そんな不調を感じている方は多いのではないでしょうか。その原因は、漢方で考える五臓の「脾(ひ)」にあるかもしれません。今回は、体のエネルギー工場ともいわれる脾の役割と、ジメジメ季節を元気に乗り切るための養生法をご紹介します。

脾は、気血を作り出す台所

突然ですが、蒸気機関車を思い浮かべてみてください。

石炭を燃やして蒸気を生み出し、その力で車輪を動かす――あの仕組み、実は私たちの体の中にも似たようなものがあります。漢方では、食べたものを消化・吸収し、気(エネルギー)と血(栄養)を生み出すのが「脾」の役割です。脾とは、東洋医学では胃腸を中心とした消化器系全体のことを指します。石炭を燃やして動力を生み出す釜の部分、まさにそれが脾のイメージです。脾が元気であれば、食べたものがしっかり気血に変わり、体はいきいきと動きます。ところが、脾には大の苦手があります。それが、「冷え」と「湿気」です。

蒸気機関車の釜がキンキンに冷えていたり、水をかけたらどうなるでしょう?

火が消えて動力が生み出せず、列車はピタリと止まってしまいます。体の中でも同じことが起きています。冷えた飲み物やアイスを多くとったり、ジメジメした湿気の多い環境にいたりすると、脾の「燃焼力」がどんどん落ちていくのです。

画像: 脾は、気血を作り出す台所

脾の働きが弱まると、食べたものをうまくエネルギーに変えられなくなり、体の中に余分な水分や老廃物がたまりやすくなります。漢方では、この余分な水分の滞りを「湿(しつ)」と呼びます。湿がたまると、ぬれた重い毛布をまとったような状態になります。

こんな症状に心当たりはありませんか?

・体が重だるく、やる気が起きない
・食欲がない、胃がもたれる
・頭がすっきりしない(頭重)
・雨の日に調子が悪くなる
・夕方から足がむくむ
・便がゆるい、べとつく
・乗り物酔いしやすい
・起きた時、顔に枕の跡がはっきりついている
・舌の両側に歯の跡がついている

このような症状が多い方は、湿の影響で脾の火が弱まっているサインです。

脾を守る 3つの養生ポイント

1.おなかを冷やさない――脾はお腹の真ん中にあります

子供の頃、寝る時は、いくら暑くてもお腹にはタオルケットをかけなさい、と言われていませんでしたか? 暑い日でも、冷たいものを飲み続けると脾の火はどんどん弱まります。アイスや冷たいジュースは「ほどほど」を意識して、生姜・ねぎ・しそなどの薬味を上手に使いましょう。外食のそうめんや冷や奴にも、薬味をたっぷり使うのが養生の知恵です。

体の外側、内側両面から、きちんとお腹を温めましょう。

2.よくかんで、少量をゆっくり食べる

食べ過ぎると脾は消化に追われ、エネルギーを作る余力がなくなります。
食事はよくかんで、腹八分目を意識しましょう。唾液には消化を助ける酵素が含まれているので、よくかむこと自体が脾のサポートになります。食事の最初の一口目を30回よくかんで食べてみることから始めてみてください。

また、食事中に水分をとり過ぎると脾に負担がかかり、食後に眠くなる原因にもなります。水で流し込むような食べ方は避けましょう。

3.夜はお腹を空っぽにする

夜遅くに食べると、翌朝まで脾は消化をし続けなければなりません。
就寝前の3時間は何も食べないのが理想。朝、お腹が空っぽの状態で目覚めると、びっくりするほど体が軽く感じますよ。

また、先ほどのチェック項目の症状がある時の朝ごはんは、白湯にお粥と梅干しがオススメです。脾に優しく、一日のエネルギー作りをスタートさせる最高の養生食です!

だるさの解消にオススメのツボは「足三里(あしさんり)」

足の外側、膝の下のくぼみから指の幅4本分下がったところにあるツボです。足のむくみ、疲労回復、だるさ、消化不良などに幅広く効果が期待できます。棒などで上下にマッサージするだけでもOK。お風呂上がりにほぐすことを習慣にしてみましょう。

脾を元気にする食養生!おすすめ食材

脾を元気にするには、「脾が喜ぶ食材」を選ぶことが大切です。
特にこの季節に取り入れてほしいのは、余分な湿を取り除きながら、脾の働きを高めてくれる食材です。

脾を元気にする食材
・気を補い脾を温める―かぼちゃ、にんじん、とうもろこし、さつまいも、山芋
・余分な湿を取り除きむくみ解消―小豆、枝豆、はと麦、緑豆
・胃腸を温め気の巡りを整える―生姜、ねぎ、みょうが、大葉、しそ

逆に、甘いもの・脂っこいもの・冷たいもののとり過ぎは、脾の釜を弱らせるので要注意です。

今日から試せる! かぼちゃと生姜のみそ汁
脾を温め、湿を取り除く食材を組み合わせた、シンプルな一品です。
【材料(2人分)】
・かぼちゃ 80g(小さめ一口大に切る)
・生姜 ひとかけ(薄切りまたは、すりおろし)
・みそ 大さじ1〜1.5
・だし汁 350ml
・お好みで小ねぎや三つ葉

【作り方】
① だし汁でかぼちゃを軟らかくなるまで煮る
② 生姜を加えてひと煮立ちさせる
③ 火を止めてみそを溶かし、お好みで薬味をのせて完成

画像: 脾を元気にする食養生!おすすめ食材

かぼちゃの甘みと生姜の温かさが合わさって、ほっとする味わいです。火を通した温かい状態で食べることで、脾への優しさが倍増します。

スーパーやコンビニで選ぶなら、具だくさんの豚汁、かぼちゃの煮物、とうもろこしスープなどがオススメです。温かいものを選ぶだけで、脾のケアになりますよ。

ジメジメした季節は、体からの「ちょっと休ませて」というサインが出やすい時期でもあります。脾を元気にする食材を上手に取り入れながら、この夏も体の内側から整えていきましょう!

画像: プロフィール 鈴木 養平(すずき ようへい) 1991年 東北薬科大学卒業後、薬日本堂入社。店舗で臨床を経験し店長を経験、その後店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”と薬日本堂漢方スクールセミナー講師・雑誌・本の監修・商品の開発協力(日本コカ・コーラ社“からだ巡茶”など)で活躍中。情報サイト「漢方ライフ」でのコラム執筆や、外部メディアでの連載執筆なども担当。2025年4月期に放送されたNHK連続ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』の薬膳考証を担当した。著書に『わがまま養生訓』(フォレスト出版)がある。

プロフィール
鈴木 養平(すずき ようへい)

1991年 東北薬科大学卒業後、薬日本堂入社。店舗で臨床を経験し店長を経験、その後店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”と薬日本堂漢方スクールセミナー講師・雑誌・本の監修・商品の開発協力(日本コカ・コーラ社“からだ巡茶”など)で活躍中。情報サイト「漢方ライフ」でのコラム執筆や、外部メディアでの連載執筆なども担当。2025年4月期に放送されたNHK連続ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』の薬膳考証を担当した。著書に『わがまま養生訓』(フォレスト出版)がある。

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