ユニアデックスの片澤です。
米国は、高インフレ、金利上昇、株価下落など、金融関連がマイナスに振れている情報が非常に目につく1か月でした。インフレ率も3月以降は8%を超え、金利上昇による株価下落に関してもS&P500やNASDAQが2022年の年明けから見るとかなり下がっていることがわかります。
そして、身近な情報としては、ガソリン代、スーパーなどのフード銘柄などが軒並み上がっております。こちら、約2年前コロナが始まった時の価格、そして右側が同じガソリンスタンドの現在の価格です。
株価などは、下げ止まりという見方もありますし、まだ下がるという見方もありますので、よくなる方に期待したいところです。
この景気後退感のあおりを受けているのが、テック企業やスタートアップ企業になります。新規採用の凍結やレイオフが連日のニュースによく上がってきます。
・Meta、Twitterが新規採用を完全にストップ
・Microsoft、Uber、Salesforce、Instacart、Coinbaseは、採用を遅らせる
・Tesla、Netfrix、Paypal、Buy Now Pay LaterのKlarna、Ultra Fast DeliveryのGetirやGollirasなどレイオフ。これ以外にも多くのスタートアップ企業が実施している。
業績が悪いため、人員整理という意味でのレイオフ、採用凍結もありますが、MicrosoftやTeslaなどは、業績が悪いということでの措置ではなく、今後の景気動向を予測した措置を行っているようです。今回の景気後退に関しては、短期間で終了すると見通しではなく、長期化するという見立てだということがわかります。
さて、今回も参加したイベントからマーケットをフォーカスしていきます。
AWE2022に参加して
今月参加したイベントは、「AWE 2022」。AWEは、AugmentedWorld Expoの略で、AR/VRなどのXR領域やメタバースにフォーカスしたテックイベントになります。2年前の記事(Vol.13)でも取り上げていますが、当時は『メタバース』のワードもありませんでしたが、この2年で大きく認知度含め、マーケットが回りだした印象です。
まずは、マーケット動向を見ていきましょう。
グラフでも示す通り、このマーケットの市場規模が非常に大きいことが見えて取れますが、どういった領域が存在するのかといいますと・・・
・VRヘッドセットデバイスやAR/MRグラスなどのモバイルデバイス
・視覚デバイスと連動するHaptic Technology、匂いデバイス
・関連ソフトウエア、アプリケーション
・メタバースの空間プラットフォーム
・XRやメタバースを利用したビジネス
などが含まれています。
では、この領域に沿ってAWEイベントの情報を紹介していきます。
ヘッドセットデバイス、AR/MRグラス
2年前にもお伝えさせていただきましたが、AR/VR/MRの分野の発展は、デバイスにかかっているといわれています。今回のイベントで最も注目を浴びていたのは、AWE Best in Showを受賞したMagic Leap社でした。
従来のMagic Leap 1 の後継機となり、大きさが約半分、重さを20%削減したデバイスです。
このデバイスの中に18個以上のカメラとセンサーが埋め込まれており、コンピューティング能力も2~3倍となっているとのことです。私も実際にデモを試してみましたが非常に軽く、視野が広い、さすがエンタープライズフォーカスデバイスだけあり、作業で利用していても気にならない感じでした。
グラフィック品質などは、デモの映像だけだとそこまで判断できませんでしたが、映像を投影しても周りが暗くならず、性能が上がっていることが感じられました。ただ、性能が上がった分、電池の持続時間は、従来と同等の3時間程度とのこと。
また、デバイスにチップセットを供給しているQualcomm社は、VRヘッドセットデバイスからARグラスまでが将来的に1つに踏襲されると予想していました。
視覚デバイスと連動するHaptic Technology、匂いデバイス
視覚デバイスでは、コントローラを持たずにハンドトラッキングに対応する動きがある中で、より細かい動作や皮膚感覚をフィードバックする技術のハプティクステクノロジーがあります。
VRの環境では、実際にコントローラやハンドジェスチャーにより操作をすることは可能です。これによって、視覚にプラスした没入感を得られますが、仮想世界のものに触っても反応は得られません。これを実際に触ったかのように体験ができることが可能になっています。
Haptx社
ルイマーシブル、マルチセンサーによる体験エクスペリエンスを提供できる。とのことで、エンターテイメントはもちろん、遠隔ロボットアームの制御も可能。
そして、匂いや香りに着目しているスタートアップもいます。
今回、AWE Best in Showを受賞したOVR Technology社です。彼らは、VRヘッドセットにマウントする匂い生成もモジュールと映像にシンクさせるソフトウエア、SDKを提供しています。主にトレーニングやメディケーションにフォーカスしており、トレーニングでは、火災やオイル、ガスなどの臭い検知シュミレーションやメディケーションでは、メンタルヘルスのアプリと連動することで、映像、音楽に匂いをプラスすることで効果の高い結果を得ることができるようです。
関連ソフトウエア、アプリケーション
ソフトウエアやアプリケーションはさまざまな種類が存在しますが、完成されたアプリケーションとしての提供される方法とエンタープライズマーケットでの特定用途での利用は、ハードウエアとソフトウエアをデベロッパー、開発者がコーディネートしたエコシステム連携の中でソリューションとして提供されていく流れがますます強くなりなると予想されます。
すでに提供されているMeta社が実施しているOculus Developerプログラム、米クロノスグループが運営しているOpenXRに加え、今回、Qualcomm社もSnapDragon Spaceを発表しました。これはSnap Dragon XR2チップ、プリセットされたデバイス、この上で連携可能な開発ソフトウエアが定義され、アプリケーションの開発が可能なオープンデベロッパープラットフォームです。
また、コンシューマーサイド向けでは、アプリケーション側で開発キットが用意され、プラットフォーマー手動型になっています。すでにInstagrumやSnapchatなどが先行していた領域に、TikTokがEffect Houseサービスを導入しました。
TikTok Effect Houseは、TikTokのユーザーが利用できるエフェクト機能などを開発できるサービスになります。
メタバースの空間プラットフォーム
未だ、メタバースの定義が決まらない中、XRソフトウエア企業のUnity社が基調講演の中で語られていました。原文のまま。
「The metaverse is the next generation of the internet that is alwaysreal-time, mostly 3D, mostly interactive, mostly social, and mostly persistent.」
(「メタバースは、いつでもリアルタイム、ほとんどが3D、ほとんどがインタラクティブ、ほとんどがソーシャルでほとんどが永続的な次世代のインターネットである。」)
どうでしょうか。皆さん。これに該当するものであれば何でもメタバースと呼べると考えると幅は広いですが、的を射てるのではないかと思ってしまいました。
また、講演の中では、AR/VRの60%は、Unityで作られているとシェアに関しても発表しており、メタバース環境で市場に対して貢献している、これからもリードしていくと力強く語っていました。
メタバース環境のプラットフォームを提供している企業も多く出展しており、その1社でもあるMetadome.aiをご紹介します。
メタバース内でのコンテンツプラットフォームを提供しており、メタバース内の収益化の仕組みまで提供。具体的には、メタバース内にバーチャル店舗を立て、その中で物の体験は販売を実施するプラットフォームを用意し、ノーコードインフラストラクチャとしてメタバースプロバイダーや出展社に提供します。自動車、美容、食品、飲料などの分野にフォーカスしている企業です。
XRやメタバースを利用したビジネス
前段でもメタバース内でのビジネスモデルに関してご紹介しましたが、XRやメタバース内でのビジネスは、ショッピング、Eコマースに注目が集まっています。
Unity社は、2025年には、トップ1,000のブランドの80%は、リアルタイム3Dを利用したショッピング体験を提供するようになると予想しています。そして、ショッピング体験がPC/Mobileからマルチプラットフォーム、セルフショッピングからコラボレーションの活用、パッシブからインタラクティブへ変革が訪れるとも予想しています。
Eコマース以外にもコンサート、スポーツ観覧イベント、旅行などさまざまなビジネスシーンが考えられています。最後におさらいとして、それぞれのデバイスと用途をまとめてみました。俯瞰的にとらえてみるとマテリアルと用途の相関関係がわかります。エンタープライズの面で見ると業務トレーニングやデジタルツイン、インダストリアルAR、遠隔操作など現場でのARの活用が進んでいます。
ユースケースが増えることで、端末の進化も期待ができますし、利用領域も増えていくので今後の成長領域”XR/メタバースの世界”から目が離せません。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。
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