ユニアデックスの片澤です。この連載も2年目に突入しました!COVIT-19の影響により、この1年で世界情勢が急激に変わってしまい、まだまだ収束までには時間がかかりそうですが、引き続き、米国から旬な情報発信をしていきます。
さて、COVIT-19の収束に欠かせないワクチン接種が目前に迫ってきました。どうやら私は、皆さんよりも早く接種できるかもしれません。カリフォルニア州では、4月15日から16歳以上であれば誰でも接種可能とのことです。接種できればその様子を、次回にお届けしたいと思います。
増加しているベジタリアンとビーガン
ワクチン接種の拡大に合わせていろいろな施設も緩和傾向になっています。米国の学校も3月から順次再開となり、私が住んでいる地域でも4月5日から再開になりました。まだ、ランチ時間を避けながら、オンライン利用でのハイブリッド授業ですが、私の子供たちも1年間対面で会うことができなかった友達や、オンラインでだけ会っていた友達と、対面で「Nice to meet you」と声を掛け合う交流ができて楽しそうです。
このように人との交流が再開されるとワクチン接種は必然となるので、早めに接種したいところですが、あわせて日々の生活の中で特に食生活も大事になると思います。
そこで今回は「食」。特に代替食品(Alternative Food)に関してお届けしていきたいと思います。
動物性食品に関しては・・・
赤身肉は、心筋梗塞のリスクが上がる。とか、
加工肉は、発がん性のリスクがある。とか、
卵は、コレステロール値が上がる。とか、
WHOなどの研究データがあります。
日本でも良品計画やイオンなどでプラントベース(植物性)の肉の販売が開始され、話題になっているのではないでしょうか。
世界的にベジタリアンやビーガンと呼ばれる方々がここ数年でかなり増えてきているため、対応する食品が増えている。またその逆もしかりですね。
米国でも直近15年間でビーガン人口が約29万人から970万人に増えているそうです。(参考)
ここで簡単ですが、ベジタリアン(菜食主義者)とビーガン(完全菜食者)に関して改めて整理してみます。
まずは、ベジタリアンです。
これに加え完全菜食のビーガンがあります。
ベジタリアン、ビーガンが増えている要因としては、主に3つの理由があるようです。
➀自身の健康維持として ②環境保全目的として ③倫理的、動物愛護精神として
人によって選択する理由はさまざまですが、特に昨今、サステイナビリティーやエシカル(倫理的消費)志向に注目するミレニアム世代、ジェネレーションZ(Gen Z世代)がベジタリアン、ビーガンを選択しているようです。
多くなった菜食主義者に対応して、食のバラエティーが増え、代替食品のブームにつながっているようです。また、今後の世界的な人口増で食料難になるとささやかれるなど、代替食品に対しての可能性がますます広がる要素を含んでいそうです。
注目されるプラントベースミート
代替食品の中でもっとも注目が大きいのは、ミート、お肉でしょう。
10年ほど前から代替ミートは市場に出ていましたが、転機となったのは、2019年の外食産業での利用増加が挙げられます。特に米国大手ファストフードのBARGER KINGでの提供開始は大きなニュースとなりました。
この分野では、 BeyondMeat社とImpossible Foods社が代表格でしょう。
Beyond Meat 本社 カリフォルニア州 エル・セグンド
プラントベースの人工肉、加工肉製品を製造・販売しているフードテックカンパニー。創業は、2009年(リーマンショック期)。2013年には米ホールフーズマーケットで販売され、順調にシェアを拡大。2019年5月にNASDAQに上場。主な投資家は、KleinerPerkinsやObvious VenturesなどのVC、Tyson Foodsやビル ゲイツ氏など。
ImpossibleFoods 本社 カリフォルニア州 レッドウッドシティー
プラントベースの人工肉、加工肉製品、乳製品を製造・販売しているフードテックカンパニー。米国のレストランなどで同社の製品を使用したインポッシブルバーガーが有名。2011年に設立。2019年にBARGERKINGでの発売により一気に脚光を浴びる。現在は、SeriesGで$1.5B(日本円で約1,500憶円)資金調達をしているユニコーン企業。主な投資家は、GV(Google Ventures)や Khosla Ventures、Horizons VenturesなどのVC、ビル ゲイツ氏など。
この2社を筆頭にプラントベースミートはますます拡大していく予想ですが、プラントベース食品全体を率先してきたのは、実はミートではなく、ミルクと乳製品です。
ミルクには、主に大豆やアーモンド、ココナッツが利用されています。 日本でも豆乳文化がありますので、なじみがあると思います。世界的にみると大豆由来が有名ですが、米国はアーモンドのほうがメジャーです。
アーモンドベースは牛乳に比べ栄養価が高く、低カロリーなど健康メリットが多いとされています。(参考)アーモンドと水があれば作れるので挑戦してみてもいいかもしれません。
プラントベースの新たな試み
プラントベースで新たな試みでエビやフィッシュに目を向けている企業もあります。
New wave food 本社 カリフォルニア州 サンフランシスコ
プラントベースのエビを製造・販売している。エビにはアレルギー症状がある人もいるが、同社の製品であれば影響がない。まだ、一般には流通していないが、先日、フードデリバリー会社の米Dot Foodsと提携したため、レストランなどで体験できる日も近い。現在、SeriseA で Tyson Foodなどが出資している。
Good Catch 本社 ニューヨーク州 ニューヨーク
こちらは、シーフードパテ。プラントベースのツナやシーフードパテを製造・販売。海資源の保護を訴えながら、大豆を主成分に海藻などを利用し、シーフードの代替食品を提供している。米国Whole foodsなどで購入でき、ファストフードのVeggie Grillでは、ツナサンドイッチとして食べることができる。 現在、Series BでNewCrop Capitalなどが出資している。
これら代替食品は、動物性たんぱく質から植物性たんぱく質、すなわち大豆、小麦、エンドウ豆、アーモンド、など豆類がベースに製造されています。商品も乳製品に始まり、肉、魚まで広がり、調理済み製品(Meal:ミール)として、消費者の手の取りやすい商品にもなっています。
日本でも手にとることができるミールもあります。
大豆ベースのたんぱく質でつくったプラントベースの餃子を販売。多様な考え方や体質、宗教を持つ人たちと同じものを食べて「おいしさ」を共有することをコンセプトに「東京ヴィ―ガン餃子」を開発、販売開始。国産のプラントベース食材を使用し、安心なので試してみてはいかがでしょうか。
しかし、すでにジューシーなお肉、新鮮な魚のおいしさを知っている私たちが今からベジタリアンやビーガンになるのはなかなか難しいです。でも、地球のことも考えたい。それを解決する新たなテクノロジーとして、「培養」という選択肢が出てきています。培養肉は、CulturedMeat や Lab-Grown Meatと呼ばれています。
動物や魚の細胞を取り出し、その細胞に培養液と必要な栄養素などを与え、細胞を増やしていく技術です。簡単に言うとコピーですね。実際の肉の細胞から作られるため、肉そのもの。味も損なうことなく簡単に製造・販売できる商品になりえると非常に関心を寄せられている分野で、代替食品の本命ともいわれています。
シンガポールでは、2020年12月に世界で初めて細胞培養肉が承認されました。米国のスタートアップのEat Just社が提供するチキンで、レストランではこのチキンを利用した料理を食べることができるそうです。(参考)
『培養』を利用したスタートアップをいくつか紹介します。
Memphis Meats 本社 カリフォルニア州 バークレー
牛や鶏肉の培養肉の研究・生成を行っているスタートアップ。牛肉のミートボールやチキンスライスなどの販売を検討している。まずは、米国での販売を計画。現在、SeriesBですでに、$2.11憶ドルの資金調達に成功。TysonFoodsやNorwest Venture Partnersに加え、Softbankからも出資を受けている。
Mission Barns 本社 カリフォルニア州 バークレー
主に豚の培養油脂やベーコンの研究・生成を行っているスタートアップ。油が食品の味を作ることに着目し、開発している。トランス脂肪などを抑えた培養が可能。現在、米国の食品会社と提携を実施しながら、市場投入を目指している。現在、Seed ラウンド。
Wild Type 本社 カリフォルニア州 サンフランシスコ
Lab-Grown サーモンを開発・生成。2016年から寿司グレードで提供できるサーモンの培養を研究実施してきた。サーモンブロック(柵)での提供を予定。現在、サンフランシスコやシアトルなどで利用できるレストランとシェフを探している。現在、SeriesAでCharles River Venturesなどから資金調達している。
培養肉は、2013年に製造された際は、1枚の肉のパテが280ドルでした。これが現在は、1パテあたり10ドルくらいまで下がってきていますが、もう少しというところでしょう。
それでも、価格減少は着実に起こっており、この業界のスタートアップ企業に対しての投資もテック企業を中心とした投資家から資金が集まっています。さらなる技術開発でますます身近になると考えられます。
従来の食肉産業をディスラプト(崩壊)するほどの影響がすぐに迫っているかもしれません。環境、持続可能な世界、人口増における食料問題など、地球における問題は大きくなるばかりですが、テクノロジーの進化と活用で少しでも豊かになることを祈りたいですね。
クッキング&試食してみました。お味は…?!
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。