ICTのシステムに生じるトラブルを乗り越えて、お客さまの業務を止めないよう奮闘しているエンジニアたちをご紹介します。

【第1回】
上村俊貴
アカウントサービス第一本部
テクニカルサポート二部
2015年入社

私の所属している部署は、特定のお客さまに相対して専従的にサービスを提供するわけではなく、対処しきれなくなった全国のトラブル案件を引き受け最終的に解決する、いわば「最後の砦」的な存在です。

ここで対応した数多くのトラブルシューティング案件の中から、今回はとあるファッションブランドのお客さまが陥っていた無線LANトラブルに関するエピソードをお話します。私が初めて主体的に調査/レポートし解決まで対応させていただいたお仕事でもありました。

最初はお客さまからの漠然としたお問い合わせでした。都内のデパートに構える店舗で接客時にスマホでのデータ通信が突然切れてしまう。在庫確認なども出来なくなり困っている・・・と。店舗の無線LAN設計・構築を担当したインテグレーターもお手上げ状態ということで、ご相談をいただいたのでした。

2つの周波数が、頻繁に切り替わる

ひとまず、現地で電波の干渉状態や強弱を可視化するツールを用いて調査したところ、2つの問題を発見することができました。

1つは、一基のアクセスポイント(=AP)で2.4GHz(ヘルツ)と5GHzの2つの周波数が、頻繁に切り替わっていたことです。(アクセスポイントとは、要するにアンテナと思っていただいて結構です)

画像: 2つの周波数が、頻繁に切り替わる

接客でハンディープリンターのような端末を使う現場では、5GHzの周波数だと端末によってはつながらなくなる場合もあるので、2.4GHzも用意されていたようですが、これらが頻繁に切り替わっていたのです。

端末の操作者の移動によりAP1からAP2に切り替わるというのは、ローミングと言ってよくある機能、というかむしろスムーズに切り替えるために必須の機能ですが、AP一基で2.4GHzと5GHzの帯域が頻繁に替わるというのはあまりないことです。

デパートというのはテナントが密集する場所ですので、各店舗固有の電波が飛び交い過ぎていて無線同士の干渉が激しく、電波が強くなったり弱くなったりが極端になりがちです。

つまり電波状態がとても不安定なのです。そのことも原因の一つかと思われたので、この事象に関しては、5GHzに一本化することを提案しました。

ファッションブランド企業ならではの・・・

しかし、電波の飛び交い過ぎが原因だとすると、全国に数多あるデパートや商業施設でも同じトラブルが頻発しているはず。しかしそうした事象はあまり多くは聞いていませんでした。つまり別の根本原因があることが予想されました。私としては「APの設置状況が悪いのでは?」という仮説を立て、設置環境を調べ始めました。

画像1: ファッションブランド企業ならではの・・・

まず目視でAPの設置状況を確認したところ、事務室に相当するバックヤードでは天井にAPがむき出しに設置されていました。これは電波の発信を邪魔する要素がない環境ですのでむしろ良好な設置と言えました。しかし、そのバックヤードに入る扉がやけに重いことに気付きました。それは店舗とバックヤードを区切る鉄製の扉でした。

防犯の意味もあって設置されているのですが、鉄は電波を反射して通さないという性質がありますので、これを閉めると電波は外に漏れずバックヤードでしか使えません。逆に扉が開いている時だけ店舗でも電波を使用できていました。つまり、移動によって電波がつながったり切れたりという現象はこの鉄の扉に起因していたのです。

さらに驚いたのが、APを買い物客からは見えないようにするために、商品を陳列する棚のような収納スペースの奥側に設置していたことです。ブランドイメージにそぐわないものはお客さまに見せないという店舗における接見のポリシーということで、それは理解できましたが、厄介だったのが棚の扉部分に衣装鏡が付いていたことです。鏡は透明ガラスの裏面に銀メッキなどの金属を付着させているものなので電波を通しにくい性質を持っているのです。要するに確固としたポリシーを持つファッションブランド企業ゆえに、電波を通しにくい店舗構造になっていて、頻繁に遮断が起きていたというのが2つ目に発見した重要ポイントでした。

画像2: ファッションブランド企業ならではの・・・

解決策

こうなると、私としては電波を遮断する場所から遮断しない場所へのAP設置を提案し実行するのみです。最適な場所として選んだのは天井でした。

ただ、店舗のお客さまの目に入ってこないように天井から出っ張らないように設置しなければなりません。私は、筐体の出っ張りをなくすために、筐体の厚み分ぐらいの凹みを天井につくり、その中にAPを収納する方法を提案し、お客さまの承諾を得て実行しました。さらに、APのメーカーの企業ロゴも見えないようにする必要があり、シールで隠しました。これもブランド管理を徹底するお客さまのポリシーなのです。このとき、APのメーカーに対する配慮も当然必要でした。交渉の末「普段はロゴをシールで隠しておいてもいいけど、機器の修理の時などにすぐに剥がして見えるようにしておいて」という条件で妥協していただきました。

この案件では、閉店後の深夜にしか現場に入れなかったので、調査から改善案の取り組みまでに半年かかりました。そして、店舗は全国に50~60店舗ありましたので、結局すべてに同じ処置を施すのには1年ほどかかりました。

「場数」としか言いようが・・・

さて、最初にこのお客さまの店舗に設計構築をしたインテグレーターではなく、なぜ我々にできたのか? これは「場数」としか言いようがありません。当社は無線LANの黎明期から、鉄板や鉛など電波を遮断しがちな素材を多用している施設(工場や倉庫、病院など)における数多くのトラブルを乗り越えてきています。ほんの些細な設定で感度や干渉度合いが劇的に変わってしまう電波を相手にしながら経験を積み重ねてきたことから、大抵の現場で原因の予測がつきやすくなっているのです。

このトラブルからの脱出案件がきっかけとなり、それまで休眠に近い関係性だったお客さまから、大きなお仕事を頂戴する機会が増えました。技術力もさることながら、あきらめないで粘り強く時間をかけて解決に導いた力によってエンゲージメントの改善につながったものと思っています。

無線LANのトラブルは途切れることはありません。これからも臨機応変にお客さまのお困りごとを解決していきたいです。

画像: 「場数」としか言いようが・・・

わたしの仕事のかたち【カスタマーサクセス編】バックナンバー
第1回 島垣絵美
第2回 五味秀章
第3回 カスタマーサクセスを推進する人  船越良和
第4回 クラウドセキュリティーのプロモと販売 中井英一
第5回 人事部で新人研修を担当 建井優佳
第6回 "カスタマーサクセス”を推進する元エンジニア 古田佳世
第8回 技術力とお客さまの本心を類推する力の両輪を磨く 宮下 洋
第9回 一人一人の想いに触れられる“現場”で育てられた営業 塩坂歩純
第10 回 悔しさから身につけたスキル。お客さまの「本音」を引き出すエンジニア 斎藤康平
第11回 「ピアノもエンジニアも“逆算”が大事」。音大出身、営業職入社のエンジニア 田村 綾菜
第12回 人間の輪を広げつつ、自分との闘いを続けたい営業 西川桃子

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