ユニアデックスの片澤です。第6回目です。早いものでこの連載が始まって半年が経過しました。先月からこちらでは、大きなニュースが2つありました。
カリフォルニア州の山火事
1つ目は、カリフォルニア州の山火事です。地球温暖化の影響もあり、近年では山火事が頻繁に起こっています。今年は例年より早く、山火事が発生してしまいまし。5月以降雨が降らずかなり乾燥してしたところに、落雷が起こり、山火事の発生です。
シリコンバレー付近では、2つの大きな山火事により、約1,955㎢が被害を受けました。大阪府よりも広い範囲が燃えたことになります。勢いは弱まったもののまだ現在も燃えています。カリフォルニア州ではこの2つの火災以外にも複数の場所で被害が起こっています。 トップ写真は、山火事が発生した方面の写真です。山が霞んでいるのがおわかりいただけるかと思います。
山火事で民家がある地域までは火災は起きていないのですが、それによる大気汚染の影響が深刻で、一番ひどいときは昼間でも夕方のような空模様となり、青空が見えませんでした。
コロナによる外出規制はあっても、外を出歩けないことは少なかったのですが、今回の場合は、さすがに外出することを躊躇しました。日々大気汚染状況を調べていたのですが、日によっては世界で最も被害が大きいこともありました。
Purple Air は、屋外空気モニターを世界中に販売しており、そのセンサーから集めたデータをサイト上で確認することができます。
Air NOWは、米国環境保護庁が管理しており、リアルタイムの大気汚染データを提供しています。
このように、大気汚染による被害状況を自分の目で見て感じられるということは、意外に必要なことだと実感しました。コンシューマーの観点だと、健康への影響認識のために必要ですし、エンタープライズ観点だと、状況に合わせた小売りやエネルギーの需要予測に必要です。
実際に大気データや天候データをマーケティングに転換している事例が出てきています。
TikTokを取り巻く状況
2つ目です。日本でも報道されていると思いますが、米国内でTikTokが売却されようとしています。 この話題に触れないわけにはいきません。
皆さんも日々利用されているSNSアプリケーション。SNSにはさまざまなデータが集まり、そのデータをマーケティングや別のビジネスに生かすなど、いまやSNSが新しい成功へのカギとなっています。そして、SNSを運営しているテック企業は軒並み米国企業です。
そこに近年、利用者数を伸ばしてきたのが、TikTokでした。ミレニアム世代を中心に米国でもかなりのユーザー数を獲得してきたわけです。次のデータによると6月の世界のSNS利用ユーザー数は、TikTokは約8億ユーザーです。Facebookが最も多く約26億ユーザーです。
今回、トランプ大統領命により、45日以内に米国の事業会社との取引を禁止させるというInternational Emergency Economic Powers Act (IEEPA)が発動されました。これは、利用者の個人データを米国企業以外に持たれる脅威、それが中国というのもあり、かなり大胆な行動になったのだと推測します。
SNSはスマートフォン利用が主ですので、AppleやGoogleは、App StoreやGoogle Playでアプリの提供を止めなければなりません。
米国のTikTokは、もともとMusical.ly という15秒の動画配信SNS提供企業が前進で、2017年にTikTokの親会社であるBytedanceがMusical.lyを買収し、TikTok側に移行をした経緯があります。TikTok側もCEOに元ディズニーのケビン・メイヤー氏をCEOに迎え、CMなどで中国色を払拭しようというマーケティングを実施していたのですが、TikTok売却という結果に落ち着きそうです。
現在、大統領命から約半月の期間が過ぎましたところで、買収先としては、Microsoftを筆頭に、Twitter、Oracleなど米テック企業を中心に、Walmartの名も挙がっておりました。Walmartは、e-コマース×TikTokという構図を描いていたのかもしれません。が、9月13日の報道で、Oracleに決定という情報が入ってきました。今後どのようなビジネス展開がされていくのか注目が集まりそうです。
近年の米中貿易摩擦問題は、HuawaiとTikTok(Bytedance)、Wechat(Tencent)と影響が出ています。今回の件と並行して話題になっているのがミーティングアプリケーション提供のZoomです。Zoomの創業者のエリック・ユアン氏は中国出身です。開発機関を中国に持っていったりなどで、Zoomは米国内で規制されないのか?と一部でささやかれています。
ただ、Zoomが前述の企業と違うところは、法人としての本社機能が米国にあるという点です。今後も中国企業が中国からグローバルに打って出るのは、Huawei以降の国際情勢の変化や中国独自のグローバルファイアウォールの関係もあり、難しい情勢が続くと考えられます。Zoom創業者のような中国出身者が米国など別の国で世界的な企業を立ち上げ、成功するモデルが増えていくのかもしれません。
中国出身者がCEOのアメリカ企業
最後に中国出身者がCEOのアメリカ企業をご紹介したいと思います。
◆ Pony.ai Co-Founder and CEOジェームス・ペン氏
本社は、カリフォルニア州フリーモント。
今年2月にトヨタ自動車から$400M(Million)の出資を受けたのも話題になった自動運転テクノロジーを手掛けているMaaS企業です。シリコンバレーでは、先行してロボタクシーを走らせています。4月からはCOVID-19の影響もあったため、デリバリーサービスに車両を転用して活躍しているようです。
私は残念ながらまだサービス利用したことないので、COVID-19の終息後に試したいと思っています。
◆agora.io Founder and CEO トニーチャオ氏
本社は、中国上海市とカリフォルニア州サンタクララ市の2本社制。
ビデオコールやボイスコール、ライブストリーミングなどの機能をSDK(ソフトウエア開発キット)で提供する企業です。通常のWeb会議などは専用のアプリケーションを利用します。業務に特化したビジネス用のアプリケーションや、ゲームアプリケーションで会話したり、ビデオ通話の機能を持たせたい場合は、一から開発するのでは時間とコストが発生してしまします。
そこでSDKを利用すれば簡単に機能追加が可能になります。なお、同社は今年6月に上場しました。独自の業務アプリケーション内にコミュニケーション機能が必要な場合は検討してみてはいかがでしょうか。
今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
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