ラジオは今、新たな進化を遂げている真っ最中です。さまざまな音声メディアの登場によるコンテンツの拡大、SNSによるリスナー同士のつながり、番組イベントの開催など、広がり方は多岐にわたっています。その最前線でラジオをはじめとする音声メディアの可能性を拡張し続けるのが、コンテンツプロデューサーの石井玄(ひかる)さんです。2024年にニッポン放送を退職後、ラジオ、ポッドキャスト、イベントなど、幅広い分野で活躍する石井さん。今回は、音声コンテンツに情熱を注ぎ、新たな価値を創造し続けるその原動力や仕事術に迫るとともに、石井さんが描く未来についても伺いました。

「愚直に、真面目に、真摯に」―石井 玄さんの仕事術

― 常に新しい企画を生み出して形にしていますが、普段どのように考えているのでしょうか。

企画を立てることは皆さんが想像しているよりもずっと簡単で、「何か」と「何か」を組み合わせるだけで生まれるんです。0を1にするとよくいわれますが、私は新しいものは何も生んでいません。これまで蓄積してきた情報を頭の中で組み合わせていくことで企画ができます。だから、自分の中にどれだけインプットしておけるかが大事になってきます。

今携わっているポッドキャスト『日刊 佐倉綾音~天才・天久鷹央になる100日間~』は、毎日配信を続けています(2025年3月時点)。この企画は、普段アニメを見ない方々にも新しく放送されるアニメに興味を持ってもらうために、“アニメの宣伝ラジオにマックスの本気で取り組む”ことを目標にしました。では、ラジオにおける「マックスの本気」とは何か? 思いついたのが、アニメタイトルでよく見られる「100日間」のキーワード。アニメの1クールも約100日間ですし、企画に掛け合わせるのにぴったりでした。そうして「100日間、声優さんが毎日ラジオを配信する」企画ができました。とはいえ、声優さんは多忙な職業。あくまで“ボケ企画”ではあったのですが、佐倉綾音さんは快く応じてくれて、番組は好評をいただいています。

画像: ― 常に新しい企画を生み出して形にしていますが、普段どのように考えているのでしょうか。

ちなみに、企画出しって日々の生活で皆さん自然にやっているんですよ。例えば「今日のお昼ごはん、どうしよう」と考えたとき、「今、一番食べたいのは鰻だけど、時間や金額的に厳しい。でもあのチェーン店の鰻ならすぐ食べられるし金額も予算内で済む」と検討や選択をしますよね。これも与えられた状況下で最適解を考えている「今日は絶対鰻を食べる」という企画です。「企画を考えて」と言われると急に難しく考えてしまうかもしれませんが、身近なものから考えると案外スムーズにできますよ。

他には、企画や課題に取り組む際、一人で考えて企画が思い浮かばないのなら、複数人でアイデアを持ち寄って話すのもおすすめです。複数人で話すことで企画のヒントが生まれやすいですし、良いアイデアの種が見つかったら、あとは質問を重ねていくことで企画の骨格が出来上がります。

― 前例がない新規性の高い企画を通すために、意識していることはありますか。

今までにない企画を通すためには、相手が何を求めているのかと、逆に何を嫌がっているのかを見極めて、そこに刺さる説明をすることがポイントです。例えば、会社の予算達成に貢献できる企画を求めているなら、利益が出るロジックを話すことはマストといえます。会社の周年を盛り上げる企画であれば、予算的な話よりもPRや採用につながる点を説明すると納得してもらえる可能性が上がるでしょう。

それと、企画を実現していくためには関係各所への丁寧な調整も大切です。ラジオの場合、技術部や編成部などそれぞれの部署の懸念点を予想して、それを解消できるようにすり合わせをします。

イベントの場合は特に、確実にチケットなどを売りたい、利益が出る確証が欲しいといった要望があります。しかし、100%成功する保証のある企画なんてなくて、やってみなければ結果は分かりません。企画を通す際に、内容の面白さをしっかりと説明することが一番重要ではありますが、相手の反応に合わせて話す内容やトーンを変えるテクニックも時には必要だと思います。例えば、相手が赤字になることを懸念している場合は、赤字を回避するリスクヘッジの説明に舵を切ります。あと一押しの場合は「この企画に乗らないと損ですよ」と伝えると、相手も好機を逃したくない気持ちが出てきて、通りやすくなります。

― 石井さんの新著である『正解のない道の進み方』では、「NOと決めることに責任を持たせる」と書かれていて、興味深かったです。

私は責任を取るつもりで企画しているので、企画に反対する人も「責任」を持ってNOと言ってほしいんです。NOを決めるのも大きなジャッジ。責任を取る覚悟がないならば、言うべきではないですよね。また、人の意見に左右され過ぎないことも大事だと感じます。特に若い方ほど、他者の意見が正しいと思ってしまいがち。相手をよく観察して対応方法を決めるのが良いと思います。

画像: ― 石井さんの新著である『正解のない道の進み方』では、「NOと決めることに責任を持たせる」と書かれていて、興味深かったです。

― 石井さんはラジオディレクター時代、パーソナリティーから愛されていたと思いました。人と働く上で大切にされていることはありますか。

私は愛されていた自覚はないですが(笑)。信頼を得ることに近道はありません。先陣を切って愚直に、真面目に、真摯に仕事をし続けるしか方法はないと思います。その際、作業のスピードと正確性も欠かせない要素です。他には、社会人の超基本ですが「報・連・相」はやっぱり大事。これが抜けているとどこかで問題が起きるので、徹底するだけで実は仕事はスムーズに進みます。

また、誰かの信頼を得るためには、誰かに嫌われることも必要です。「自分のためならどんなことでもしてくれる」と仕事相手に思われるためには、一部の人から嫌われることも覚悟しなければなりません。企画を成功させるためには、時には悪役になって言うべきことを言ったり行動したりして、本当に信頼されたい相手を守ることもあります。もちろん、無理に嫌われる必要はありません。後々その行動の意味を理解してくれることも多いので。

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