神奈川県の海老名駅から車で約5分。のどかな住宅街に、趣のある建物が現れます。1857(安政4)年に創業された「泉橋酒造」の酒蔵です。NexTalk編集部のミキティーを迎えてくださったのは、6代目の橋場友一社長。「酒造りは米作りから」を信念に、全国でも珍しい酒米作りに取り組んでいる酒蔵です。なんと、橋場社長自ら、自社農地と酒蔵を案内してくださいました。
ここですね! 白壁に家紋、酒蔵の象徴でもある杉玉、手入れの行き届いた庭園。日本らしい風情を感じます。この敷地内に、酒蔵とオフィス、酒蔵SHOP「酒友館」があるということですよ。
![画像1: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/17/7121bb3e583b4695489c3f559b79f92bc8fdc922_xlarge.jpg)
これこれ! 酒蔵の軒下でよく見られる杉玉ですね。酒蔵の道具には杉が使われることが多く、「酒造りは山と一体である」ことを象徴する意味があるそうですよ。また、新酒ができたときに飾られることも多いそうです。
![画像: 泉橋酒造の橋場 友一社長](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/b3c43e194b0efe6a006ec647c144def1b885e4a0.jpg)
泉橋酒造の橋場 友一社長
泉橋酒造6代目、橋場社長が出迎えてくださいました。よろしくお願いいたします!! 早速、酒米を栽培している田んぼにご案内いただけるということです。
わー、まさに、酒蔵の横に田んぼがあるのですね!! 泉橋酒造の酒米作りは、この0.5ヘクタールの自社田んぼから始まったそうです。1996年に初めて開催した田植えイベントも、ここで行ったそうですよ。
![画像: 取材の前に田植えは終わっていました。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/9b80a558ac17d228c770ea4677afbc4e9f713986.jpg)
取材の前に田植えは終わっていました。
橋場社長のお父さまは、当初「お金を払ってまで田植えがしたい人なんて、いるわけがない」とおっしゃっていたそうですが、結果的に約70名もの申し込みがありました。「父は、思いがけない反響に驚きながらも、イベントを手伝ってくれました」と橋場社長。田植えイベントの23回目となる2018年6月には、酒販店や飲食店の方々を中心に、約250名が集まったそうです。
![画像: 「恵」青ラベル 純米吟醸ですよー。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/54ce44146ddfba2b61393d2db21cb0171596866d.jpg)
「恵」青ラベル 純米吟醸ですよー。
うわー、まぶしい!!きれいにそろった稲のグリーンが輝いています。こちらは、酒米の代表とも言われる「山田錦」の苗ですね。橋場社長によると、神奈川県の山田錦の多くが海老名市内で栽培されているそうです。
稲の間にあるのは、1999年に初めて地元の山田錦を使って作られた大吟醸「恵」。とんぼ、相模の国分寺などがあしらわれたラベルは当時のままです。澄んだお水と輝くお米で作られた純米酒、そりゃあ、おいしいわけです。
![画像: 地道な作業が、美味しいお酒につながります。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/8b94a0af02c8dba929acc1f51d178f0ec9e39d60.jpg)
地道な作業が、美味しいお酒につながります。
作業していらっしゃるのは、社員さんですね。泉橋酒造の酒米作りは、低農薬。この田んぼでは除草剤を使わないので、雑草が生えないように、除草機で土をかき混ぜているそうですよ!かなりの重労働に見えます。「除草機もお掃除ロボットみたいに自動化すればいいのに」と思ってしまう私。
現在、泉橋酒造では、外部組織との協働で、田んぼ観察にドローンを活用する実験を進めているそうです。1カ所にいながらにして、広大な田んぼの様子が把握できればラクですし、データ化できればノウハウの伝承もできそうです。最先端技術をどんどん活用して、就農のハードルが下がるといいですね。
では、いよいよ田んぼを後にして、酒造りの現場を見学させていただきます!!
![画像: 精米後に出る、「赤ぬか」は肥料や除草剤の代わりに田んぼにまきます。「白ぬか」は焼酎やぬか床になります。捨てる部分はありません。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/17/4c913ae16db0712f1f1daacedfb3925f50b238f1.jpg)
精米後に出る、「赤ぬか」は肥料や除草剤の代わりに田んぼにまきます。「白ぬか」は焼酎やぬか床になります。捨てる部分はありません。
こちらは、精米所ですね。私は、お米屋さんの小さな精米機しか見たことがなかったので、見上げるほどの大きな精米機にびっくり!! 思わず「1度に何合のお米が精米できるのでしょうか??」と質問して、橋場社長に笑われましたよ……。単位が違うのですね。20俵ですって。
橋場社長によれば、精米は、米作りと酒造りを結ぶ大事な工程だそうです。精米前後の状態を確認することで、酒米の良しあしが分かるのですって!
![画像2: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/2e317e4805c14f3f23f61e1127752b38c0812b10.jpg)
次は、いよいよ酒蔵の中へお邪魔しまーす。
![画像3: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/2a52fbbf60460ed1d545efd8920f10f4d69577a2.jpg)
中はどんな様子なのでしょうか? ワクワク!
![画像4: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/0c8b0691ff023f7d02ef74d18c795ffe276602b2.jpg)
入ってすぐにお釜がありました! 種籾(たねもみ)を温湯(おんとう)消毒するための和釜です。お湯で消毒することによって、農薬の使用を低減できるそうです。
![画像5: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/e7608394101a9af5ffaea7480b6a8c9649879bd6.jpg)
こちらは麹室。泉橋酒造では、蓋麹(ふたこうじ)を使う伝統的な手法で製麹(せいきく)しているそうです。人間の手でかき混ぜるそうですから、手間がかかりますね。ちなみに、蓋麹には殺菌効果がある杉の木が使われているそうですよ。
泉橋酒造では、今はほとんど行われなくなってしまった製法、生酛(きもと)造りにこだわっているとか。自然界の乳酸菌を活用した昔ながらの造り方で、幅のある味わいの日本酒が出来上がるそうです!
![画像: 発酵タンクは、ヒトが中に入って掃除するため、体力勝負です。ヒトがやることと機械がやることを分けています。黒いマットはクーリングロールといい、中に冷却水を流しタンクの温度調整をします。ここでは、年間、一升瓶にして約10万本のお酒を造ります。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/243cb9ff5f08f491ed08eff3a5c1b2a3a37e4681.jpg)
発酵タンクは、ヒトが中に入って掃除するため、体力勝負です。ヒトがやることと機械がやることを分けています。黒いマットはクーリングロールといい、中に冷却水を流しタンクの温度調整をします。ここでは、年間、一升瓶にして約10万本のお酒を造ります。
こちらの部屋は?? 酵母培養の部屋です。温度管理がされていて、ひんやり寒~い!! でも、部屋全体がお酒のいい香りがして、軽く酔ってしまいそうなよい気分です(笑)。
ヤゴのラベルが書いてあるのは、発酵タンクですって。この時期、たっぷりの梅やイチゴが入ったタンクもあり、純米酒仕込みのリキュールが出来上がるそうです。
![画像: 見上げるほど大きいです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/e29481fa4b7f2f486131e9a4f4fd1eb349c50db5.jpg)
見上げるほど大きいです。
ここは、上槽室。発酵タンクから最適なタイミングで酒袋に移したものを搾って、酒と酒粕に分ける「槽(ふな)絞り」という作業が行われます。こちらの写真は、50年前から使われていた搾り機だそうです。本当に船の形に見えます。重厚なたたずまいが、かっこいいですね。自動圧縮機を使う酒蔵が多い中、今でもこの槽を使っています。
![画像6: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/17/1a35c97931ba38ded5accf7c2d92404b83500037.jpg)
こちらが完成したお酒。左から、「夏ヤゴ ブルー」「とんぼラベル 無濾過生原酒」「とんぼラベル 純米大吟醸」。個人的に、ヤゴのイラストがかわいくて萌えます★
ヤゴは、田んぼの中で約13回脱皮を繰り返して、とんぼに羽化するそうです。夏のヤゴが健康的に育つ環境は、酒米の栽培環境としても理想的。とんぼもヤゴも、低農薬で良質な環境で育った酒米を象徴しているのですね。
これらのお酒はすべて、敷地内の酒蔵SHOP「酒友館」で購入することができますよー! もちろん私もおみやげに買っちゃいました。
![画像7: いい酒は米が違う!? 米作りから手掛ける泉橋酒造を突撃取材!(2018年8月7日号)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782684/rc/2018/07/06/52d8b592d726aeae9ffb3fd3df7856bf302e1d3b.jpg)
そんなわけで、見学会は終了。最後に、改めてお庭を拝見しましたが、大きな木もあって、素晴らしい環境ですね。落ち葉の季節には、毎朝、社員全員で庭掃除をするそうですよ。まさに、海老名の四季を存分に感じながら酒造りをされているのですね。
橋場社長は、米作りと酒造りで日々忙しく、せっかくの縁側に座るヒマもないそうですよ。春夏秋冬、休むことなく作業を続けることで、毎年おいしいお酒が生み出されるのですね。
ありがたく飲ませていただきます。橋場社長、ありがとうございました!!
泉橋酒造
所在地:神奈川県海老名市下今泉5-5-1
酒蔵SHOP「酒友館」
<営業時間>月曜~土曜 10:00~18:00(日祝、お盆休み、年末・年始は休館)
営業時間、休館日は変更の可能性あり