空のF1ともいわれる「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」で、2017年年間総合優勝という快挙を果たした、室屋義秀選手。
練習環境に恵まれなかったり、大会が一時休止したり、東日本大震災の影響を受けたりで、何度も心が折れそうになった室屋選手を地上から後押しした重要人物がいらっしゃいます。
NPO法人ふくしま飛行協会の斎藤喜章理事長です。NexTalkの“ツナイダ☆チカラ”は、この室屋選手の夢をつないだ人物のお話を伺いに、ふくしまスカイパークまでやってきました。
斎藤理事長は、元々は地元の情報処理企業のソフトウエアエンジニアだったとのこと。えっ? こっちサイドの方だったの? でもどうして今このお立場に?
それは本当にたまたまのことでした。地元で一所懸命曲技飛行の練習をしているカッコいい人がいるということを聞きつけ、一市民として奥様とともに見学に来ていたのがきっかけでした。
そのうち奥様の方が触発されてパイロットライセンスを取ると言い出し、半ばそれを制するように「僕がライセンス取るから、君を乗せてあげるよ」ということになり、本当に取ったのが49歳のとき。その後、室屋選手の応援に熱が入るとともに、ふくしまスカイパークの“農道空港問題”などにも徐々に足を踏み入れるようになり、あれよあれよという間に関わりが深くなっていきました。そして52歳で退職して退路を断ってまで新しい道にまい進することになったのでした。人生って本当にわからないものなのです。
編集部としては、“室屋選手の夢をつないだ人”の観点で取材に来ましたが、実際はそんな単純なお話ではなく、想像していた以上に深~い事情があったことを知り、感じ入ってしまったのでした。その辺のお話は、本編にゆずりますのでお楽しみに!
ところで、このイラスト、なんだと思います?
エヴァンゲリオンの咆哮を思わせる蒼龍。その両翼に刻まれているワニガメの甲羅のような突起。右手に持った赤い球体。
実は蒼龍は水の化身であり、福島の農産物をはぐくむ水の象徴として描かれています。蒼龍は甲羅のような突起の形で地元の安達太良山を背負い、赤い球体は福島県民の心、そして咆哮は福島県民の怒りを表現しています。
つまり、今だに原発事故後の風評被害に苦しむ福島県民の魂の叫びを表現しているのです。斎藤理事長はこのイラストを描いた包装紙を、農協と生協に配布し、福島の農産物や特産品を全国に配送するときに利用してもらうよう働きかけています。受け取った人は“何だこれ?”という驚きととともに、福島県民の心を強く刻むことになる…これ、福島県の社会的ブランドを向上させたい一心で始めた斎藤理事長プロデュースの仕掛けなのです。
もう一つ仕掛けが隠されていて、詩人の高村光太郎とその妻智恵子が関わってきます。
メインコピーの「ほんとの空は希望のブルー」。これは、福島県生まれの智恵子の紡いだ言葉や仕草をまとめた「智恵子抄」に編まれている言葉「阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に毎日出てゐる青い空が智恵子のほんとの空」に由来します。さらに「レモン哀歌」にある「白くあかるい死の床で私の手からとった一つのレモンをあなたのきれいな歯ががりりと噛んだ」その時のレモン色がメインコピーの色として表現されているのです。詩情まで込めているのですね。ちょっと涙が出てくる思いです。
斎藤理事長が、なぜこのようなプロデュースまで手がけているのか? そこには「地元で300年前まで家系をたどれる」という家の歴史と、そこで脈々とはぐくまれてきた「無私の精神」が関係しています。その辺の詳しいところも本編に譲りたいと思いますので、お楽しみに!