高校の同級生で、互いに切磋琢磨しながら活躍を続けるプロゴルファーの有村智恵さんと原江里菜さん。女子プロゴルファーのキャリアは多様で、結婚・出産をする選手もいれば、ゴルフに集中し試合に出続ける選手もいます。さまざまなライフスタイルの女子プロゴルファーたちが活躍できる場を作るため、お二人は「LADY GO」を立ち上げました。LADY GOに込めた想いや、ゴルフに対する向き合い方の変化、セカンドキャリアについて、ユニアデックスの八巻睦子がお話を伺いました。

ユニアデックスは、「LADY GO」のコンセプトである「女性が輝く社会の構築を応援していくための、女子プロゴルフミドルトーナメント」に賛同して、「KDDI LADY GOCUP in スターツ笠間ゴルフ倶楽部」を協賛しました。

親の勧めで10歳からゴルフをスタート

八巻 有村さんも原さんも、10歳からゴルフを始められたそうですが、ゴルフに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

有村 父がすごくゴルフが好きで、5歳くらいの時に父のゴルフ練習に連れていかれたのが、人生でゴルフに触れた最初のきっかけです。その時に遊びで球を打ったら、球を捉えるのが上手だったようで、父は「この子には才能があるかも!」と思ったそうです。その後、小学4年生の時に、当時人気のあった坂田ジュニアゴルフ塾(通称・坂田塾)※の熊本校に入塾し本格的にゴルフを始めました。※プロゴルファー坂田信弘さんが1993年に熊本で開校したジュニア・ゴルファー育成組織

画像: プロゴルファー 有村 智恵さん

プロゴルファー 有村 智恵さん

私はたまたまテレビ番組で坂田塾を特集しているのを見たのがきっかけで、親に「ゴルフやってみる?」と言われて名古屋校に入塾しました。子どものころからスポーツが好きで、小学校にもバスケットボールなどスポーツのクラブはありました。でもみんな私より前から始めていたので、勝てないな、と。ゴルフならまだ誰もプレーしていなくてスタートが同じだから、私でも勝てるかもしれない、と思いました。

画像: プロゴルファー 原 江里菜さん

プロゴルファー 原 江里菜さん

八巻 有村さんは2024年4月に双子を出産されました。ゴルフへの関わり方や心境に変化はありましたか?

画像: ユニアデックス 人事部 コーポレートコミュニケーション推進室 室長 八巻 睦子

ユニアデックス 人事部 コーポレートコミュニケーション推進室 室長 八巻 睦子

有村 かなり変わりましたね。出産する前までは毎日ゴルフに行くのが当たり前だったので、休みの日は「何をしようかな」とワクワクしていたんです。でも今は、ゴルフに行けることがすごく楽しみなんですよ。ゴルフ場に行く時間が唯一の息抜きですし、何とかして自分でその時間を作らないといけないからこそ、ゴルフをする時間がすごく楽しいです。

それから出産を経て身体も変化しているので、1からまたゴルフを研究しているような感覚もあります。それも楽しいなと思っています。

八巻 私も子どもがいますので、すごくよく分かります。自分の時間はご褒美ですよね。原さんはさまざまな試合やツアーに積極的に参加してキャリアを積まれています。若い頃から変化したなと感じることはありますか?

若い時はいかに活躍するか、いかに成績を残すか、いかに目立つかを考えていて、承認欲求が強かったなと思います。でも、年齢を重ねるごとに、活躍することよりも、長くモチベーションを維持してゴルフを続けている先輩選手に対するリスペクトの気持ちが強くなっていきました。

そうすると、自分が目立ちたい、認められたいというよりは、自分がどうなれたら満足か、ということにフォーカスできるようになったのです。ゴルフを長く続けてきたからこそ、自分が何に価値を置くかを見つけることができたので、続けてきて良かったなと思います。

画像: お互いを「智恵ちゃん」「江里菜」と呼びあうほど仲睦まじいお二人。2008年のツアー(「NEC軽井沢72ゴルフ」)で、原さんの「初優勝」を確証した有村さんが早々と号泣していて、逆に自分が泣けなかった。というほほえましいエピソードがあります

お互いを「智恵ちゃん」「江里菜」と呼びあうほど仲睦まじいお二人。2008年のツアー(「NEC軽井沢72ゴルフ」)で、原さんの「初優勝」を確証した有村さんが早々と号泣していて、逆に自分が泣けなかった。というほほえましいエピソードがあります

LADY GOを通して、後輩たちに多様な幸せの形を見せていきたい

八巻 お二人は、女子プロゴルファーたちの活躍を後押しする場として「LADY GO」を立ち上げられました。LADY GOに込めた想いを教えてください。

有村 女子プロゴルファーにもさまざまな選手がいて、先輩方が多様な幸せの形を見せてくださっています。私自身、子どもが欲しいと思って妊活もしましたが、同時に子どもがいない生活も想像していました。どちらの選択をしても幸せな人生を歩んでいる先輩方がいるからこそ、あまりネガティブな感情になることなくゴルフを続けてこられました。

その一方、今の若い選手たちは、若いうちから何かを成し遂げなければと焦っている人が多い気がします。でも江里菜が言ったように、ゴルファーを長く続けるすごさも感じています。もちろん結果も大事ですが、必ずしも若いうちに結果を残さないといけないわけじゃないよ、自分らしく続けていくことが大切なんだよ、ということを伝えたいなと思いLADY GOを立ち上げました。

LADY GOでは30歳以上45歳未満のシニア選手が出場できる「LADY GO CUP」を開催しています。ツアーに出られない時期でも、選手たちが集まって近況を報告し合ったり、自分が置かれている状況について相談し合ったりする場になっています。この場を通して、若い選手たちに多様なライフスタイルや幸せの形を見せていければと考えています。

画像: コースには「LADY GO」の趣旨を解説したパネルを設置。横に写っているのは有村さん

コースには「LADY GO」の趣旨を解説したパネルを設置。横に写っているのは有村さん

私のように自分で選択して試合に出続けている人もいれば、智恵ちゃんのように出産して、現場に戻って来る人もいれば戻って来られない人もいる。そんな中で、復帰した選手がLADY GOに出て、子どもから「ママ、カッコいいね!」と認めてもらえる場があるのは、試合の結果以上に価値のあることではないかと思うんです。LADY GOが女子プロゴルファーたちの活躍を後押しできたらいいなと思います。

それから、私のように試合に出続けている選手にとっても、LADY GOは達成感を味わえる場所、みんなで刺激し合える場所になっています。

八巻 プロゴルファーの世界も多様な人が集まる場であると実感できました。多様なケースの意見をくみ取って、取りまとめるには苦労もあるのではないですか?

例えば私は3日間かけてしっかりプレーしたいと思うけど、子どもがいる選手にとっては難しい。そういった立場が違うことによる意見のぶつかり合いはあります。でも、最初から正解を作る必要はないと思っています。LADY GOがスタートして3年目になりますが、そのあり方は回を重ねるごとに洗練されたものになってきています。

画像: 「LADY GO CUP」で原さんは、服部真夕プロとのペアで2位という好成績

「LADY GO CUP」で原さんは、服部真夕プロとのペアで2位という好成績

有村 私は妊活を始めた時期に、子どもができてツアーに回れないのはさみしいな、子どもがいても出られる試合が欲しいなと思っていました。それがLADY GO立ち上げのきっかけなんです。選手たちの意見を聞くと、同じように感じている人が多かった。最初は大きなコンペをやりたいよねという話から始まり、きちんとした大会にしたら見たいと思ってくれるファンは多いのでは?という意見も出て、LADY GOがスタートしました。

ありがたいことに試合に出たいと言ってくれる選手も増えてきたので、今はそのルール作りなども進めています。最初は託児スペースしかなかったのですが、2024年からは託児所をきちんと整備しました。また、試合の日だけでなく練習時も託児所を利用したいという意見が出て、確かにそうだな、と。自分自身が母親になったから気づくこともありますし、皆さんの意見を聞きながらアップデートしています。

運営において大事にしていることは、決めすぎないこと。柔軟にこれいいよね、面白いよねと思うものはどんどん取り入れて、ゴルフの面白さ、大会の面白さを追求していきたいと思っています。

画像1: LADY GOを通して、後輩たちに多様な幸せの形を見せていきたい

八巻 企業でも多様性を受け入れることが事業継続や成長のための重要な要素になっています。一人一人のライフステージや立場によって事情はさまざまですが、柔軟な働き方を推進していくことが求められています。LADY GO立ち上げのお話は、私たちに企業人も見習いたいと思いました。話は変わりますが、有村さんは、LADY GOや日常などについて、積極的にSNSを活用しながら発信されていますよね。

有村 もともと文章を書くのが好きで、ずいぶん前からブログも運営していたので、SNSでの発信はまったく苦になりません。ただ、否定的なコメントがつくこともあるので、投稿は慎重になりますね。一つ実践していることは、名前や顔が見えない状態で発信されたものは気にしすぎないようにしつつ、名前や顔を出しての意見は、ちゃんと受け止めようとルールを決めています。SNSはリスクもあるけれど、影響力や拡散力の面でのメリットもあります。これまではメディアを通してしか自分の言葉を発信できなかったけど、SNSでは自分のそのままの言葉を直接伝えられることも魅力だと思います。

画像2: LADY GOを通して、後輩たちに多様な幸せの形を見せていきたい

自分自身の軸を大事に、これからのキャリアを選んでいく

八巻 お二人はこの先のセカンドキャリアについて何か考えていますか?

有村 子どもができた今は、子どもの状況によってこの先変化していくだろうなと思うと、明確なセカンドキャリアを描けなくなったというのがリアルな気持ちですね。ただ、ゴルフから完全に離れることはないだろうなと思います。私の選択の軸は、まずはゴルフ業界にとってプラスになるか、次に女子プロゴルファーにとってプラスかどうかです。それに加えて自分にとってもプラスになるのがベストですね。知らない分野に飛び込んでいくには勉強しなければいけないし、勇気も必要だと思うからこそ、自分の中で判断基準は明確にしておきたいと思っています。

私が常に考えているのは、自分にできることは何なのか。その中でやりたいことは何なのか。そしてやるべきことは何なのか。その3つのバランスが整った状態で、常にベストな選択ができることが理想だと思います。

セカンドキャリアでは私にしかできないことをやりたいと思っています。今はまだそれが何かは分かりませんが、これは私にしかできないと思えたら挑戦したいです。目の前のことが嫌で、そこから逃げるために選択するのだけはやめようと決めています。間違ってもいいし、ベストでなくてもいいけれど、自分の軸だけはぶれないようにしたいですね。

八巻 お二人の正直で前向きで、ぶれないお考えにとても共感できました。最後に、読者へメッセージをいただけますか。

ぜひLADY GOに興味を持っていただき、試合を見てもらえたらうれしいです。プレーのうまい・下手だけでなく、試合を通して選手の人柄や魅力も知ってもらいたいなと思います。

有村 世間的には試合に出なくなるとプロゴルファーではなくなったと思われがちなのですが、実際にはツアーに出ていなくてもプロゴルファーなんです。代表的なツアーに出ていなくてもLADY GO CUPには出場している選手はたくさんいます。そういった選手を見ていただける機会になるのが目的の一つです。江里菜が言ったように、試合で選手を知ってもらい、そこからゴルフ以外でも活躍の場が広がっていけばうれしいです。

また、やはりLADY GO CUPを主宰している以上は、個人としても変なプレーはできないなという思いはありますね。

それはもう、優勝しか狙ってないから(笑)。

有村 そうだよね!プレーでもきちんと結果を出せるように頑張っていきたいなと思います。

画像: 自分自身の軸を大事に、これからのキャリアを選んでいく

プロフィール

画像: プロゴルファー 有村 智恵(ありむら ちえ) 1987年11月22日生まれ、熊本県出身。東北高校卒業後の2006年にプロ入りし、2008年「プロミスレディス」でツアー初優勝。2012年からは米女子ツアーにも参戦し、2016年に日本ツアーへ復帰した。2020年に女子ゴルファーの共有SNSアカウント「LADY GO」を立ち上げ。2022年からはツアー外競技「LADY GO CUP」を運営する。

プロゴルファー 有村 智恵(ありむら ちえ)
1987年11月22日生まれ、熊本県出身。東北高校卒業後の2006年にプロ入りし、2008年「プロミスレディス」でツアー初優勝。2012年からは米女子ツアーにも参戦し、2016年に日本ツアーへ復帰した。2020年に女子ゴルファーの共有SNSアカウント「LADY GO」を立ち上げ。2022年からはツアー外競技「LADY GO CUP」を運営する。

画像: プロゴルファー 原 江里菜(はら えりな) 1987年11月7日生まれ、愛知県出身。2006年にプロ入りし、2008年「NEC軽井沢72ゴルフ」でツアー初優勝。2012年に「全英リコー女子オープン」へ出場し予選突破、2015年「大東建託・いい部屋ネットレディス」でツアー通算2勝目を飾る。近年はツアー出場に加えて後進の育成にも注力する。有村さんとともに「LADY GO」および「LADY GO CUP」を主宰する。

プロゴルファー 原 江里菜(はら えりな)
1987年11月7日生まれ、愛知県出身。2006年にプロ入りし、2008年「NEC軽井沢72ゴルフ」でツアー初優勝。2012年に「全英リコー女子オープン」へ出場し予選突破、2015年「大東建託・いい部屋ネットレディス」でツアー通算2勝目を飾る。近年はツアー出場に加えて後進の育成にも注力する。有村さんとともに「LADY GO」および「LADY GO CUP」を主宰する。

【バックナンバー】
「大好きなゴルフを諦めない!」ママプロゴルファーの未来を自ら切り拓く:プロゴルファー 甲田良美さん_【DE&Iレポート】(2024年2月14日号)

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