企業として取り組むべきテレワークの課題とは!?
テレワークを推進するに当たり、会社として考えておくべき課題とは何でしょうか。大きく分けると、「組織」と「個人の資質」の2つの課題があると考えます。
「組織の課題」とは、テレワークが可能な職種とできない職種が混在しており、そこで格差が生まれてしまうことです。例えば工場のラインや店舗の販売員など、現場で仕事をする人はテレワークができません。また、テレワークを進めるなかで、経験豊富なベテラン社員と、新入社員や中途採用などまだ職場に不慣れな人との間で、情報格差や業務効率に違いが生じるケースもあります。こうした格差をどう解消するかは、会社として取り組むべき課題です。
また、テレワークに向き・不向きな性格の人もいます。寂しがり屋のタイプ、公私の切り替えに時間がかかるタイプ、人が見ていないと歯止めが利かずに頑張りすぎるタイプ、逆にサボるタイプ——そうした社員の個性にどう対応していくかも、組織管理のうえでポイントになります。
こうした事柄は、突き詰めると労働生産性の問題に突き当たります。「テレワークは生産性が下がる」と懸念する経営者も多いのですが、必ずしもそうとはいえません。「文章の執筆や音楽制作」など個人で作業する業務はテレワークで生産性が上がり、逆にアイデアを持ち寄って1つのプロジェクトや作品を作り上げるようなタイプの業務は、やはりリアルな現場業務の方が、効率が良いことがわかっています。そのためテレワークは、適材適所で使い分けることが、経営戦略上のポイントになると思います。
また、テレワークは従来のビジネス慣行や手順を見直すきっかけにもなります。これまでコラボレーティブと捉えていた習慣が、実はルーティンなハンコプロセスだったことに気付いたり、成果ベースの人事評価が機能していなかった企業が、テレワークを契機に評価のやり方を変えたりなど、ビジネス変革のきっかけとしてテレワークを捉える向きもあります。実際に、さまざまな課題を克服してテレワークを推進している事例を独自に取材しましたので見ていきましょう。
事例1:職種格差やコミュニケーション不足の解消方法のヒントが見える
まずは、テレワークできる職種・できない職種の間で起こる格差を解消した事例をご紹介します。
ある製造販売業の企業では、法務や財務、総務などのスタッフと、工場や店舗で働くスタッフとの間で、前述した“テレワーク格差”が生じていました。そこでその企業は、通勤が必須の生産・販売スタッフには「危険手当」を支給して待遇を向上。一方テレワーク勤務者の定期代は廃止し、テレワーク環境整備のための一時金と、毎月の「通信補助費」を支給することにしました。併せてオフィスのスリム化を行い、廃止した通勤費分も合わせて原資を確保し、それを職務に応じて配分することで、感染リスクの低減と職務格差の解消に注力したそうです。
このように、職務格差は会社の制度である程度カバーすることができますが、コミュニケーション不足による寂しさや心理不安といった個人の心理的な課題に対して、企業はどのように対処できるでしょうか。実はこれについても、対処法はいくつかあります。
あるデザイン会社は、朝9時から15分間、オンラインで朝礼を開始しました。朝礼でその日の業務や目標を発表し、ビジネスチャットにメッセージを書き込むことによって状況共有が活発化し、掲示板での雑談や協力関係が発展しました。また、別の会社ではランチタイムの1時間をビデオ会議につなぎ、リモートで一緒にランチを共有することで、協力関係とお互いの“つながり感”を維持することに成功しているようです。
似たケースで、1日に3回、5〜10分間だけ全社員がビデオチャットをつなぐ時間を設けた企業もあります。こうすることで、「聞きたいことがあるけど、いまチャットを入れて大丈夫かな」と遠慮していた社員が、チャットをきっかけにコミュニケーションが活性化しました。
一方、コミュニケーションロスや社員の心理不安をどうしても取り除けない場合はどうしたらいいのでしょうか。実際、そういう企業もありましたが、感染防止対策を行いながら、月1回でリアルの社内パーティーを開くことにしたそうです。社員同士、顔を見て会話や仕事の進捗を報告し合うことで、こちらも課題を克服しました。
事例2:テレワークできない業種はどうすればいい?
先の例は、いずれも小規模なソフトハウスやデザイン事務所です。前述したように、個人作業が中心の業務はテレワークに移行しやすく、生産性も高まる傾向があります。一方、生産ラインを持つ製造業などの業種は、やはりテレワーク化は難しいのが現実。こうした課題は、どのように解決すればよいのでしょうか。
ある大手製造業では、1日の労働時間を増やす代わりに、週休3〜4日を取得し、感染防御やコスト削減を目指しています。そのやり方は、社内を「月水金」勤務と「火木土」勤務の2つのチームに分けるというもの。密にならず、使用する生産ラインも半分で済むので、経費削減につながります。なお、この取り組みは現在試験運用中とのことですが、経営層から社員、労組まで一体となって取り組んでいる点は大変素晴らしい取り組みであると思います。
事例3:テレワーク体制下の管理や人事考課、成功と失敗の分かれ目とは?
続いて、失敗事例や人事考課の取り組みについても紹介しましょう。失敗するかどうかに関しては、そもそも「信頼できる労使関係が結べているか」にかかっているといっても過言ではありません。
ある法務関連企業では、テレワーク実施時に、従業員全員に対し、「終日ビデオ会議に接続すること」を義務化したそうです。その理由として、「雰囲気を共有したい」「お互いの働いているところを見て安心したい」という意見とともに、「サボっていないか監視したい」というものがありましたが、その後のこの会社の取り組みを見ると、おそらく最後の理由が最も大きかったと推測できます。なぜなら、終日接続しているビデオ会議のカメラやオーディオを会社側が管理しており、社員側でカメラをオフにしても、管理者側が告知することなく、強制的にカメラをオンに切り替えていたからです。これにより、従業員の家族からクレームがくる騒ぎとなり、離職者も出るという騒動に発展してしまいました。なお、こうした過度な管理は盗視・盗聴に相当するケースもあるようです。
「サボっていないか監視したい」という思いは、経営者や管理層なら誰もが抱いている本音でもあると思いますが、信頼の原則がなければ、そもそもテレワークは機能しないのです。社員も「サボっていると思われているのではないか」という気持ちで仕事をすれば、ストレスは相当かかります。
先ほどの「強制監視」の企業とは逆に、「人に見られていないとサボってしまう」と心配する社員が多い企業では、社員からの要望を受け、社員PC監視ツールを導入し、業務状況を監視していました。すると、多くの社員がむしろ勤務時間の超過や、深夜労働に従事していることがわかり、労務や人事から適度な休憩を取るように是正が入ったそうです。これはマイクロマネジメントがうまく機能した事例です。
管理し過ぎて、失敗することもあれば、成功することもある——その境目がどこにあるかといえば、正直なところ、正解は結局「企業文化」と「業務内容の特性」による面が大きいのは否めません。ただ、テレワークを進めるうえで大きな課題となる人事考課について2つの成功事例を紹介しておきます。
1つは、こまめに1対1ミーティングとオンライン定例会を併用したIT系会社の事例です。1対1で社員の困りごとを早期に把握すると同時に、週1回オンラインの定例会で、各人が達成した仕事や努力を報告するように努めました。その際、「誰の協力があって、どのように助けられたのか」も伝えるように促して、「最も社員を助けた社員」を会社として表彰・人事評価に反映するようにしたそうです。これにより、社内に助け合いの精神が働き、人事評価の透明性も確保され、信頼感が高まるという良い結果となりました。
もう1つは中小企業の事例です。この会社では、テレワーク移行とともに、中間管理職も業績評価も一切廃止しました。全員一律給与とし、利益が出たらすべてボーナスとして還元することで、「会社全体がもうかれば自動的に給与が上がる」とし、社員のモチベーション向上を実現したそうです。
以上のように、企業も社員も幸せになるテレワークを実現できるかどうかは、身もふたもなくいってしまえば、企業の工夫次第ではないかと思います。信頼できる労使関係とコミュニケーションを実現したうえで、試行錯誤できるかどうかが、テレワーク成功の分かれ目です。業務内容と直接関係のない謎ルールを作らず、寛容な精神を持つことは信頼を育むうえで欠かせない要素ではないでしょうか。
ツールにこだわれば、テレワークはより効果的に楽しくなる!
さて、テレワークには、マインドや組織運営の改革とともに、もう1つ欠かせない要素があります。それがツールです。テレワークに使われているツールには、「Zoom」や「Microsoft Teams」「Cisco Webex」「Google Meet」「Facebook Messenger Rooms」などさまざまなツールがあります。コミュニケーションアプリのLINE機能をビジネス用途に進化させた「LINE WORKS」も注目されています。いずれも、ビジネス用途での実績も多い製品群ですが、大きく分けて「ミーティング向き」と「コラボレーション向き」という2つの傾向があります。
ミーティング向きのツールは、テレビ会議のように、いろいろな人が出会ってアイデアを出し、合意形成していく場面で使われます。これに対し、コラボレーションはむしろ特定のチームで、知識を蓄積しながら1つのプロジェクトを達成するプロセスなので、コラボレーションに強いツールには、組織構成や人事情報が搭載されていることがあります。
どれを採用すべきなのかは、やはり自社の業務特性に合わせて決めるべきですが、社外とのやり取りでは相手に合わせる必要があるため、結局は複数のツールを使い分けるケースが一般的です。
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