画像引用元:「AWE2020」
ユニアデックスの片澤です。第3回目をお届けします。
米国ではCOVID-19の状況が気になる中、スペースシャトル計画が終了後、およそ9年ぶりに有人宇宙船が発射され無事に成功しました。しかも民間のSpaceX社が主導で実施した歴史的な瞬間となりました。という嬉しいニュースの後、ミネソタ州ミネアポリスで発生してしまった黒人男性死亡事件により、各地で暴動、強奪が起こってしまいました。私たちが住んでいる近くのショッピングモールでも発生しています。夜間外出禁止をはじめ一般市民への精神的な影響も計り知れません。いろいろな意味で激しい1カ月でした。
COVID-19の最新状況
カリフォルニア州のステージ
さて、今回もCOVID-19にまつわるお話から。
NSSCが拠点を置いて、私自身も住んでいるサンタクララ郡は、カリフォルニア州にあります。COVID-19に対して市民や企業への対応方針は、カリフォルニア州とサンタクララ郡の両方から発表されますが、カリフォルニア州が発表する基本ガイドラインを受けてサンタクララ郡やサンフランシスコ郡が独自に判断し、これが優先される形になります。
では、現状のカリフォルニア州はどのステージにきているのかというと、全4段階中の2つ目になっています。
このステージ2では、小売業、製造業やテレワークが難しい業種であればオフラインでの業務再開。屋外の施設や屋外博物館も再開。市民もショッピングやレストランの一部利用が可能となっています。しかし、実際はサンタクララ郡の指導で小売店もカーブサイドピックアップのみでレストランもテイクアウト営業のみとなっています。公園などは徐々に利用可能となっていますが、近隣にあるナショナルパークのような大規模公園のオープンはまだ先になる見通しです。
シリコンバレーにある歴史的な博物館「ウィンチェスターミステリーミュージアム」は、屋外博物館として楽しめるため、再開したのは喜ばしいです。6月5日からは小売店でのインストアも可能になるようで、少しずつもとに戻りつつあります。
「AWE 2020」から見えてきたこと
テレワークは「New Normal」に
このような流れで、米国の経済活動は徐々に回復の兆しを見せ始めていますが、シリコンバレーのテクノロジーカンパニーでは、テレワーク、リモートオフィスの働き方「New Normal」になりそうです。
Amazon社やSlacks社などは、それぞれ10月や9月までテレワークを継続にしていますし、Twitter社に至っては、永久に実施すると発表しました。またFacebook社は、年内のテレワーク継続はもとより、これから5年~10年の間に同社の従業員の50%はリモート環境で働くことになるだろうとCEOのMark Zuckerberg氏が話しています。こういった企業が増えることにより、シリコンバレーから離れる人も今後出てくるかもしれません。結果として、地価、家賃などの不動産価格も下がるのでは?と、私たちにとっては期待が少し膨らみます。
さて、New Normalの社会へ向けた技術として注目を集めている領域の1つにVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)があげられます。
今回は、5月26日から28日にオンラインで開催された「AWE 2020」というVR/AR関連のイベントから見えてきたことをお伝えしたいと思います。ちなみに今年開催されるテックイベントはほとんどオンライン開催になりそうです。
VRとAR、そしてMRへ
まず、VRとAR、そしてMR(Mixed Reality)に関しておさらいさせていただきます。
VRは、Virtual Realtyの略で、人工的に作り出した仮想空間、バーチャルデジタル空間のことです。この中に入り込むことで現実世界とは違った体験をすることができます。別の空間に入ることになるため、必要となるデバイスは、少し大きなヘッドセットが必要となります。ヘッドセットを利用することで、利用者の視覚、聴覚はほぼすべてバーチャル空間に入ることになります。
次にARです。AugmentedRearityの略で、現実世界にデジタルを融合することです。皆さんの一番身近に感じられるイメージは、ポケモンGoやSnapchatなどのスマートフォンアプリでしょうか。現実世界に(レンズや画面を経由し)デジタルの情報を付加することで、新しい価値を提供します。必要となるデバイスもスマートフォンや眼鏡型が適しています。ドラゴンボールに出てきた戦闘能力を計測する装置もARデバイスといえますね。
最後にMRです。Mixed Realityの略で、もともとは、バーチャルの世界に現実を融合する複合現実と呼ばれていました。少しイメージがしにくいと思いますが、スポーツやコンサートをイメージするとわかりやすいです。バーチャル環境でスタジアムがあるとします。そこに参加するとリアルで実施されているスポーツイベントやコンサートを見ることができたり、その中であるときは2階席から見たり、ある時はアリーナ席からだったり、横を向くと他の観客の様子を楽しめたり視点を変えたり、バーチャルの中でリアル体験ができるのです。バーチャル環境を利用するので、デバイスはヘッドセットを使用する点がVRと同じです。
このように3つに分類されていますが、今後は、より現実とバーチャルの融合が拡大していくことでしょう。Mixed Realityの意味合いはむしろ次のように変化してきています。
MRの変化と未来
リモートはこうなる?!
次のスライドをご覧ください。
左側の人と右側のバーチャルの人が、同じバーチャル空間でミーティングをしています。二人が同じ世界を共有して資料も見ています。このバーチャルの中ではお互いが表示されている画像を操作したり、内容を書き込んだりできます。
現在のWeb会議では、PCやスマートフォンに向かって会話して、資料共有をしていますが、近い将来のリモート会議、リモートコラボレーションの形式はますます変わっていきそうです。
また、下のスライドは、Varjo社のデモ映像です。ヘリコプターを操縦しています。コックピットはシュミレーション用の実物です。そこにVarjo社のヘッドセットを装着し、飛んでいる映像の部分はバーチャルです。このようにトレーニング用のソリューションは、医療や製造などの分野でますます展開が進んでいくと感じました。
また、デバイスの中に表示するコンテンツですが、3D/CADデータの取り込みなどにより比較的容易になりつつあります。ノーコードで開発ができるプラットフォームなども登場し、進化が見て取れます。
ただ、製造や点検などの現実の映像にコンテンツを入れるとなると、実際の写真や動画にコンテンツを合わせる部分などでは、人の手も必要な場合もあります。利用用途に合わせてインテグレーションが必要になりそうです。
XRの課題は、デバイス性能
ソフトウエア面での技術進歩は、VR/ARからMRへ形になって見えてきました。大変楽しみな一方、ハードウエア面は、もう少しといった印象でした。
カンファレンスの中では、XR(すべての仮想空間技術、空間拡張技術の総称)関連に投資を実施している投資家からも意見があり、「XRの課題は、デバイス性能」ということがあげられています。デバイスのカメラ、バッテリー、ディスプレー、処理能力などでアップグレードの余地がまだまだありそうです。実際にデバイスへのチップ提供ベンダーのQualcomm社からも同じようなアナウンスがありました。
Qualcomm社は、XRデバイスに必要なチップとソフトウエアを提供しているので、デバイスから見た観点での市場予測を実施しています。軽量化するためのディスプレーや処理能力、バッテリーテクノロジーは、まだこれから。通信の面からも直近の1~4年では5G(60GHz)に接続するデバイスの登場はまだ厳しく、5年以上先に性能十分な端末が出てくると予想しています。
下記スライドにあるように、直近は、スマートフォンなどと接続し、スマートフォン側の処理能力を借りながらリッチコンテンツを利用する方法が取られていき、デバイスの成熟に合わせてスタンドアロン型、より軽量化に進んでいくことになるとのことです。今後の普及に向けては、利便性に加えて価格面も課題になるでしょう。
スマートフォンのように一人に1台というわけにはまだまだ行きませんが、XRの領域は未来が感じられる世界です。5G×XRやさまざまな利用シーンの紹介、XRデバイスになった時の入力インターフェースについてなど、別の機会で紹介していきたいと思います。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。