【日本ユニシスグループの総合イベント「BITS2015」ユニアデックス セッションから記事化】
さまざまなモノと人がネットワークにつながり、膨大なデータを高速に収集・処理できる時代となった。 そして、それらをもとに自ら学び、判断する人工知能が登場し、その知能は人間の能力を追い抜くとも言われている。 そうした機械が果たして「人を感動させるサービス」を創出できるようになるのか。 また、人と機械はどのように関係し、どのような社会を実現していくのか―。
未来へ向けた新しいサービスの創造・提供をめざすユニアデックスの「未来サービス研究所」から所長の小椋則樹氏が登壇。同研究所の市場調査・研究による、数年後の未来予測とその取り組みについて紹介した。

画像: ユニアデックス株式会社 未来サービス研究所 所長 小椋 則樹


ユニアデックス株式会社 未来サービス研究所
所長 小椋 則樹

共創によって「新たな未来を支えるサービス」を生み出す場を提供

画像: 共創によって「新たな未来を支えるサービス」を生み出す場を提供

「最近、感動したことがありますか」。

セッションの冒頭、小椋氏からそんな問いが投げかけられた。変化の激しい時代にあって、技術の進化は予想もしなかった新しいサービスや製品を生み出し、驚きや感心、喜びといった“感動”を人々に与えてきた。なぜかくも人は感動し、何に感動するのか。
この“感動”を与え、未来社会を支えるサービスを創出するべく、2013年4月に設立したのが、ユニアデックスの「未来サービス研究所」である。「進化と創造」をキーワードに、インフラなどの今までの強みを“進化”させながら、その上に新たな“創造”を行う。その“創造”を担う組織というわけだ。同社のコーポレートメッセージである「同じ未来を想うことから。」の具現化として、パートナーやお客さまとの共創の場である「未来飛考空間」の活動を立ち上げるなど、さまざまな取り組みを行ってきた。

「IT専門企業であるユニアデックス単独で未来は創れません。未来予測など得意とする技術や、未来を創造するアイデアなどを提供しながら、皆さんと『どのような未来を創っていくか』を話す場になればと考えています」

機械が人間の能力を超え、自律し、診断・判断を担う時代に

ユニアデックスでは、未来を予測するにあたり、9つのテーマで捉えているという。その中の1つが、今回のセッションのテーマである「機械との競創」だ。その兆候は至る所に見受けられるという。
その一例として、小椋氏はまずハウステンボスの「変なホテル」をあげる。「究極の生産性」のためにロボットが接客を担うというものだが、本来“接客”というサービスは高級ホテルに見られるように「人間が得意とする」領域とされてきた。しかし、「意外にロボットでもいい」「ロボットだからできることがある」という声もあり、注目が集まっているという。
そしてもう1つ、映画などでAI(人工知能)やロボットが登場するケースである。たとえば、「トランセンデンス」はジョニー・デップ扮する科学者が死に際して人工知能化するという話だ。また「her/世界でひとつの彼女」も主人公の男性が恋をするのは人工知能型OSという設定になっている。ちょっと行き過ぎた怖い話、またはファンタジーとして描かれているが、実際こうしたデジタルクローン技術については、ソーシャルメディアのコンテンツからプロファイルを再現するというように、徐々に具体化されてきている。また、店頭案内から接客、コールセンターなどへの活用も始まっている。

画像1: 機械が人間の能力を超え、自律し、診断・判断を担う時代に

「印象的なのは、人工知能が人と話す時は当然自然言語を使いますが、人工知能同士の時は非言語であり、超高速処理になっていることでしょう。その際、人工知能の学習速度は速く、人間は“置いてけぼり”になる。かつて人工知能は、定型処理が置き換え可能と考えられていましたが、いまや非定型な人間の得意としている分野にも進出しています。人の仕事が置き換えられてしまうのではないかと、危惧されるのも無理はないでしょう」

ウエアラブルツールなどで人間の機能が強化されたり、人工知能が仮想の人間を作り出したり、そうした技術が進めば、上述したホテルや映画のような話も近い将来に実現する可能性が高い。さらにコンピューターが人間の知能を超え、さらに人類全体の能力を超える「シンギュラリティー」が2045年に到来するとも予測されており、人間が担ってきた自律から判断・診断が必要な分野までを担うようになると言われている。人工知能によって人間が制御・管理される時代が到来する可能性もあるというわけだ。

人と機械の“競創”で価値を飛躍的に高め、“感動”を起こす

画像2: 機械が人間の能力を超え、自律し、診断・判断を担う時代に

人工知能を搭載した機械が、今以上に人間中心に考えられてきた社会に入り込んでくる。レベルはさまざまというものの、その機械が人間に対して“感動”を与えられるのか。この時の“感動”とは、サービスサイエンスの見地から、「感じた価値 - 事前期待」の差分の大きさによって生じるとされている。ただし、事前期待が膨らみつつある今、感動する機会が減っているのかもしれない。
ここで小椋氏は、ユニアデックスが日経コンピュータの2014-2015年「顧客満足度調査」のシステム運用関連サービス部門で第一位を獲得したことを紹介。エンジニアが当初の目的であるメンテナンス作業だけでなく、状況を把握したことによる想定外の小さな提案・努力を積み重ねたことが、“価値”になっているという。
その“価値”を生み出す場面で機械による“ドーピング”、つまり日々の努力の積み重ねではない効果、が行われていたとしたらどうだろう。努力なく成果をだす仕組みが見えてしまうと、人はずるさを感じてしまう傾向がある。しかし、その過程は創出する仕組みをどのように構成するかであるため、利用者にとっては与えられた大きな“価値”を感じるとることができる。そこにユニアデックスの人工知能活用の可能性があるというわけだ。

画像3: 機械が人間の能力を超え、自律し、診断・判断を担う時代に

「人が日々努力して高める価値は、これまで自身の経験や環境に基づくものに留まっていました。しかし、機械学習(人工知能)によって想像以上の選択肢が示されれば、人に新たな気づきを与えることができます。そして機械学習に人間味をフィードバックできれば、相乗効果で価値は飛躍的に高まるでしょう。人間中心の社会での“事前期待”は基本的には『人ができる範囲』に留まるもの。そこに、人と機械の“競創”で飛躍的に価値を向上できれば、差分は大きくなり、お客さまの感動をより大きなものにできる。今後はそうした取り組みを進めていきます」

機械学習の精度を高め、感動させる結果へとつなげるために

人と機械の“競創”による新たな価値向上を求め、ユニアデックスではデータ分析の技術者を多数育成している。また、併行して機械学習を試行できる環境も整えているという。しかし、その機械学習にも限界・制約がないわけではない。「分析者の解析経験」や提供されるデータについても考慮が必要である。
たとえば、機械学習に与えるデータは世の中に公開されているデータを利用することもあり、いわばどこにでもあるもので独自性がだしづらく、結果も似たようになることが少なくない。また、データの量や精度によって結果が大きく左右される傾向にある。企業では基幹系に集められた独自なデータを活用しようという動きがあるものの、なかなか有効な新しいモデルを引き出すことができていない。そこで、ユニアデックスでは「特徴のある、独自のデータの取得」「質の良いデータを多面的かつ大量に収集」を差別化ポイントにするという。

画像1: 機械学習の精度を高め、感動させる結果へとつなげるために

「先ほどの、デジタルクローンについてもSNSのデータやブログのコメントなど、ありとあらゆる多面的なデータから分析することで、より精度の高いものになります。同じように、ある事象を的確に捉え、ユニークな分析を行うためには、多面的で質のよいデータを十分に取得することが理想であり、とても重要です」

それを象徴する例として、小椋氏は「将棋電王戦」をあげる。人工知能と棋士による試合だが、近年はずっと人工知能が勝利をおさめている。しかし、羽生善治棋聖によると「勝敗ではなく戦い方が面白くない」というのだ。つまり、人工知能は勝つためだけのアルゴリズムに基づき動いているにすぎない。一方、棋士同士の試合はいろんな局面を見ながら打つことで、思わぬ手が出たり、個性が出たりする。つまり“人間の機微”が盛り込まれ、それが面白さや感動につながるというわけだ。

「よりたくさんのデータがあれば、多彩な可能性が広がり、選択肢が広がります。しかし、その中で『最も確率の高いものはこれです!』と人工知能に告げられたことを、そのまま受け入れられるかどうか。それが、人が機械と現在の社会で共存する時の大きなポイントでしょう」

現在、ユニアデックスでは、前述のような「顧客満足度調査」で1位を得る元になるさまざまな顧客対応データを蓄積しており、それらから分析するとともに、「行動観察」および「サービスサイエンス」といった理論に落とし込み、感動できるサービスへと活用することを模索しているという。

画像2: 機械学習の精度を高め、感動させる結果へとつなげるために

「人間がモバイルやウエアラブル、インプラントなど機能を身につけることでIT化しており、ITもまた人工知能やロボット、スマートマシンなどの技術で人間化してきています。そうした混沌とした状況下で互いが調和し、未来へとつなげていくためには、人は人の感性や意識をもっと大切にし、ITはもっとシンプルになっていくことが重要なのではないでしょうか」

人と機械が競い合いともに新しい価値を創りあげていく意味の“競創”により、既存の価値を高め、新しい価値を提供する。それが“感動される”サービスへとつながる。その確信のもと、ユニアデックスでは自らの強みであるデータ収集や分析を自社サービスの価値向上へと活用するべく、模索し続けている。むろんそれらのデータ収集・分析技術が異なる業種・業態へと役立てられることで、未来につながる新しい価値を生み出すに違いない。小椋氏はそう強調して繰り返し、「興味のある方はぜひともお声がけいただきたい」とメッセージを送り、セッションの結びとした。

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