※ 2019年4月23日、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリー株式会社は、東京地方裁判所に対して破産手続開始の申し立てを行いました。この記事は2017年6月5日に公開されたもので、取材当時の内容として、記事掲載を継続しています
「世の中にないモノを創り出す技術集団」
- まずはじめに、阪根社長はどのような経緯で会社を立ち上げられたのでしょうか。
父が発明家で、私が中学の時に技術系のベンチャー企業を立ち上げたんですね。私はそんな父を見ながら育ちまして、米国の大学院で博士号を取った後、ビジネスの道に進もうと思い、無理を言って父の会社に入りました。そこで8年間社長をして、2011年にシリコンバレーでセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズを創業しました。会社のビジョンには「世の中にないモノを創り出す技術集団」と掲げ、リアルにイノベーションを起こしていこうと取り組んでいます。
-「ランドロイド」には最先端の技術が搭載されているそうですね。それはどんな技術ですか。
「ランドロイド」は、「画像解析」「人工知能(AI)」「ロボティクス」の3つの技術を組み合わせてできています。“服をたたむ”という作業は人間であれば、まず目で見て、脳で(Tシャツと)確認しそして手でたたみますよね。これと同じように、どんな衣類なのかを見て認識するのが「画像解析」、衣類ごとにベストな方法を選択するのが「人工知能(AI)」、そして、たたんだり仕分けたりという動作を行うのが「ロボティクス」です。
社員全員が反対?誰も手をつけていないモノへの挑戦
-「ランドロイド」を開発するきっかけは何だったのでしょうか。
私たちが何かモノを創るときは、「世の中にないモノ」「人々の生活を豊かにするモノ」「技術的なハードルが高いモノ」をテーマ選びの条件にしています。この3つの条件をクリアするテーマがなかなか見つからず、2003年から2年くらい探し続けました。「これいいな」と思いついても、ほとんど誰かが先に手をつけているんです。
ある時、“男性が考えたものはだいたい先にやられている。世の中にないモノは、女性・子ども・高齢者の中にニーズがあるではないか”と気づいたんですね。ある日、妻に聞いてみると、「全自動の洗濯物折りたたみ機がほしい!」と即答されました。検索するとまだ誰もやっていないことが分かったので「よし、これでいこう!」とテーマが決まったのが今から12年前、2005年です。
-「自動洗濯物折りたたみ機をつくる」と社員に言った時、皆さんの反応はいかがでしたか。
社員に発表した時は、みんなドン引きでした(笑)。「社長、本気ですか?」って。特にプロトタイプができるまでは、多くの社員が開発にネガティブでしたね。また完成までに長い期間を要しましたから、開発メンバーが「こんなものできない」と辞めていくこともありました。
- 研究開発の途上では、数々の技術的なハードルを越えられてきたと思いますが、一番苦労されたのはどんなことでしたか。
衣類(Tシャツ)を自動でたたむという技術は早い段階にできあがったのですが、これだけでは商品化する意味がないという話になり、そこからが苦労の連続でしたね。洗濯物をランダムにどこか一カ所にドサッと投入して、一枚ずつつまみ上げてたたみ、仕分けする、という一連の動作まで自動化するのが非常に難しかったです。壁を一つクリアするとまた次の壁がでてくるという連続で、この開発に6年くらいかかりましたが、ついに、(ロボットアームで)洗濯物をつまみ上げて広げ、(画像解析とAIにより)“これはTシャツ”などと認識し、衣類ごとにたためるようになりました。
あと、2014年にプロトタイプができたときには、1枚たたむのに40分もかかっていたんですね。今は5~12分でたためます。ここに辿り着くまでに、試験を繰り返して、精度を高めて、時間を短縮して、の繰り返しでした。
リーダーが「絶対にできる」と信じること
- 研究開発には莫大な費用もかかりますよね。お金の工面はどのようにされたのでしょうか。
資金調達にはかなり苦労しました。まずシリコンバレーのベンチャーキャピタルに飛び込んだのですが、全くダメでしたね。当時「ランドロイド」の他にも2つの事業を手がけていたため、「ベンチャーの厳しい世界で、3つも事業をやって成功するわけがない」と断られました。
でも私はどの事業も捨てたくなかった。「どうしても3つやりたいならヨーロッパかアジアに行け」と言われ、次はヨーロッパに飛びましたが、結果はシリコンバレーと同じ。その後、日本でやっと1社が出資してくれることに決まり、難関を乗り超えることができました。その1社が決まらなければ乗り切れてなかったです。(笑)
- そうだったんですね。まさに運命ですね!さまざまな苦難に直面する中で、阪根社長はどのように指揮をとられていたのですか。
ビジネスで何かに挑戦する時、最後の砦は「リーダーの想い」だけです。私は「理論上では間違っていないので、絶対にできる」という強い確信があったので、さまざまな問題が起こるたびに、社員に「それでもできるよ!」とずっと言い続けました。リーダーの心が折れると、全員が折れてしまいますから。まずはリーダー自身が「できる」と信じること、そして社員に「できる」と言い続けること、もうそれだけでしたね。
人工知能が発展すると人間はダメになる?
-「ランドロイド」の今後に展望についてどのように考えられていますか。
まずは「ランドロイド」を多くのご家庭で利用していただき、ユーザーの声を反映してさらに良いものにすることが一番の課題ですし、一番やりたいことですね。将来的には、洗濯機や乾燥機が今世界中にあるように、「ランドロイド」もそのくらい普及させていきたいと思っています。
- 今年3月に「ランドロイドカフェ」もオープンされましたね。なぜ異業種のカフェとコラボしようと思ったのですか。
「ランドロイド」の発売にあたり、実機を見て動作を体験できるショールームが必要だったんですね。しかも買いたい人だけでなく買わない人も来てくれて、SNSで拡散してくれるような場所がほしかった。もう一つは、服がたたまれる間に美味しいコーヒーや食事を楽しみながら「ランドロイド」を体験していただける空間を作りたいと思い、カフェとコラボしました。
- これからまた新たに他業種とコラボされるそうですね。
現在の「ランドロイド」は折りたたみ専用機なのですが、いずれは洗濯機・乾燥機・折りたたみ機の一体型を発売したいと考えています。当社は折りたたむ技術は持っていますが、洗濯・乾燥の技術はありませんので、パナソニックさんとコラボして一体型の開発に取り組んでいきます。そして最終的には、たたみ終わった衣類を各部屋のクローゼットまで自動搬送させたい。衣類をクローゼットに持っていくまでの自動化は、大和ハウスさんと組んで実現していきます。今後は、アパレルに関するIT系企業やファションデザイナーとコラボを計画しています。
- クローゼットに運ぶまで自動化ですか!?将来は洗濯の手間がなくなってしまいますね。
そうですね。人工知能が発展すると人間がダメになるんじゃないかと言われたりしますが、全くそんなことはないと思っていて、その時間を家族との時間であったり、習い事や趣味の時間に使うなど、価値を創造するような時間に変えてもらえたらいいなと思います。
時代は新しいチャレンジを待っている
- 最後に新しいことに挑戦するビジネスパーソンへ向けてメッセージをお願いします。
新しいことを挑戦するには、今は非常に良い時代だと思います。インターネットによって情報が世界中に一気に駆けめぐる時代になりました。誰も手掛けていない新しいことに挑戦すると、自分たちが想像していた以上に世界中に情報が流れますし、注目も集まります。すぐ情報が駆けめぐり驚くこともありますが、挑戦の後押しにもなりますので、皆さんも人と違った新しいことにどんどんチャンレンジしていってほしいですね。