2023年6月8~9日の2日間で開催されたBIPROGYグループの総合イベント「BIPROGY FORUM2023」(ANAインターコンチネンタルホテル東京)。今回は、「re PLANET あらゆる可能性を輝かせ この星を変えていく」をテーマに多様な可能性をつなげ、持続可能な未来社会の創造に向けて歩み続けるための多彩なソリューションが紹介されました。
4年ぶりのリアル開催!ということもあって、進化の激しいAI技術に関するものやセキュリティー対策など見どころもさまざま。2日間で約2200名が来場し、会場は熱気に包まれていました。その模様を、ユニアデックスブースでの展示内容や担当者のソリューションに込めた想いとともにレポートします。
事前のFAQ作成も学習もAIにお任せ!
次世代型AIチャットボットソリューション「AiCB®」
「チャットボット」といえば、ユーザーの疑問や困りごとに会話で答えてくれる便利な機能がその大きな特徴で、カスタマーサポートや、社内ヘルプデスクなどさまざまなシーンで活用されています。そんな便利なチャットボットですが、導入に当たっては課題もあります。
その最大の課題は、ボットがあらゆる質問・疑問に回答できるよう、事前にFAQを作成しなければならないこと。利便性を高めようと思えばその分、FAQ作成に相当な時間がかかります。また、担当者が考案したFAQの範囲でしか回答ができないなど機能レベルが制限されてしまうこともネックでした。
こうした課題を解決できるのが、この「AiCB(エイ・アイ・シー・ビー)」。AiCBは、社内に分散するマニュアルや社内規定のドキュメント、外部公開しているWebサイトなどの情報をAiCBにアップロードするだけでその内容を学習し、適切な回答を返す次世代型AIチャットボットなのです。
例えば、自治体のゴミ分別に関する問い合わせであれば、各自治体の分別ルールを学習させておけば、詳細な手続き方法を提示します。
さらに自治体のWebサイトに掲載されているゴミ分別リストから該当する廃棄物の項目をハイライト表示するなど、いくつもの回答パターンを示すことができるので、よりスムーズにユーザーの疑問解消に役立ちます。
法律の改正などによって、社内規定やルールが変更されることもあるでしょう。その際には、新しいドキュメントをまたAiCBにアップロードすれば情報更新が行われるので、回答に影響が出ることはありません。また、利用の仕方によっては「1日1回Webサイトの情報を再学習する」という設定も可能です。
AiCBの導入先の一つがNTTドコモ様。ニュース情報やエンタメサービス、ヘルスケアやショッピング、ライフサポートなど多彩なサービスを提供されているので、多岐にわたるサービスへの問い合わせに適切に対応するために導入を決定されました。
「最近、ChatGPTを取り込んだサービスが次々に登場していますが、機能を取り込むだけではまだ足りません!」
「ご利用いただいているユーザー企業の方々とともに、今後さらに成長させていくことが目標です」と担当者は意気込みを見せます。
確かに、より自然な対話で回答するには、Aと聞いたらBと答える直球型ではなく、ユーザーにとって何がベストな回答かを判断する必要があります。このため実際のユースケースにおいては、お客さまから寄せられた問い合わせにAiCBが回答し、実際の問い合わせ内容を分析することでユーザーニーズに合った形でFAQの精度を高めているそうです。
「今後、さらなる機能強化を続け、ChatGPTのように世の中の多様なデータを取り込んで進化させることで、未学習のデータからも回答可能なように進化させていきたいと考えています。また、AIは質問の意図とは合っていない内容も回答してしまうので、そうしたミスを排除する技術も開発中です」と展望を語ってくれました。
日々刻々と進化を続ける分野でもあるだけに、今後が楽しみです!
オンプレミスをサブスク形式で利用できる
「ユニグリーン(TM)」
企業では、システムの初期投資削減や、IT資産の保守運用工数の軽減を図るためにクラウドサービスの利用が増えています。
しかし、社内すべてのシステムがクラウドに移行できるわけではありません。例えば、「クラウドサービスだとセキュリティーレベルを担保できない」「機密情報が多いので外部にデータを出すことはできない」など、クリティカルなシステム運用を求める企業・組織も依然として多数あります。そんなニーズを持つ企業・組織に最適なのが「ユニグリーン」。
「その最大のメリットは、何といってもIT導入・運用に関わる初期費用を抑えられる点です。資産となるIT機器などを購入するわけではないため、初期投資の抑制につながる他、資産のオフバランス化も可能なんです。月額利用料は毎月決まった額を支払う固定課金型か、使用リソース量に基づいて支払う従量課金型かを利用状況に応じて選ぶことができるので、目的に合わせて選択可能です」
「昨年から続く円安の影響で海外クラウドサービスの月額料が高騰しており、“オンプレミスに戻るには初期投資がかかるけど、高騰が続く月額料を支払い続けるのもリスク……”と考える企業が増えています」と説明。
ユニグリーンの場合、費用は契約時に決定され、為替変動の影響を受けることはありません。IT投資で悩む企業にはうってつけといえそうです。また、2019年に始まった「IFRS16号(新リース会計基準)」では、ベンダーからリースしているハードウエアやソフトウエアは資産とみなされますが、ユニグリーンでは「サービス利用料」となるため、経費に計上できる点もポイントです。
そして、ハードウエアには最新のCPUを搭載。既存機器と比べて搭載コア数は倍増しているため、消費電力は31%減、設置スペースも67%減と、環境に配慮できるのもうれしい点です。
「ユニアデックスが培ってきたシステム運用・監視の実績に裏付けされた、稼働状況の可視化やシステム健康診断などのきめ細かな対応も評価いただいています。社内に新しく情報システム部門が立ち上がったようにサポートしますので、導入後も安心してお使いいただけます!」と力説していました。
社内と同じ操作感で、セキュアに社外から社内ネットワークへアクセスできる
「Wrap®」
「Wrap(ラップ)」は、端末にソフトウエアをインストールするだけで、簡単に社内ネットワークやシステムにアクセスできるクラウドサービス。Wi-Fi、4G/5G、衛星通信など、どんなネットワークでも文字通り“ラップ”してシンプル化し、セキュアな接続を可能にするという点が大きな特徴となっているソリューションです。
これを可能にする技術が、「仮想LTE(LTEover IP)」。LTE(Long TermEvolution)はモバイル通信規格の一つで、SIMカードを使って利用者情報を確認・認証し、ネットワークに暗号化を施しながらつながる仕組みです。スマートフォンを起動すると同時にキャリアのネットワークを使い、インターネットに接続できるイメージ。
このように、仮想LTEは、Wi-FiなどのIPネットワーク上にプライベートなLTEを仮想的につくる技術ですが、社外から社内ネットワークにアクセスする際、一般的なVPNなどではログオンするときやWi-FiやVPN接続するときなど要所、要所でID・パスワードの他、必要に応じてワンタイムパスワードの入力が求められると思います。
「そうそう、社外から社内のシステムとかサーバーにアクセスしようとすると、回線を切り替えるたびに、何度もログインを求められ、入力しないといけなくて大変ですよね」とうなずくと、担当者は「Wrapならそういう手間は省けますよ!」と話します。
WrapはソフトウエアSIMの認証によって端末の識別ができるので、これまで手間がかかっていたIDやパスワードの手入力は不要です。外出先でも、端末を開いてログオン後すぐに社内ネットワーク/システムにアクセスできるので、ユーザーの利便性が大きく向上しますね。
また、仮想LTEは、コロナ禍で進んだリモートワークでも注目を集めました。既存のVPNは脆弱(ぜいじゃく)性が出やすく、利用者数が増えるとパフォーマンスが低下することもあり、「社内と同じ環境で業務を進めることは難しい」などの課題があったからです。
業種によっては部門ごとに回線が分かれていることや、特定業務向けに専用ネットワークが敷かれているケースもあり、社外からアクセスできずに業務を進められないというケースもありました。Wrapの活用によって、社外からのアクセスをクラウド上の仮想LTEに集約・認証・接続してシステムにアクセスすることができるため、管理もシンプルです。
「Wrapはインターネット環境さえあれば仮想LTEによるセキュアなネットワーク接続や常時の端末管理ができる機能を活用し、リモートアクセス以外にもお客さまのさまざまな要件に対応できます。どんなことができるのか、ぜひ一度お問い合わせください!」と力強い。
「さらに、Wrapアプライアンスを用意しており、こちらを用いるとソフトウエアをインストールできないIoT機器へのWrapの適用も可能に。具体的には、センサー、カメラ、産業用機器やPoSレジ、プリンター、IP電話など社内に分散するさまざまなIoT機器をWrapで管理できるようになるんです」。担当者はWrapの特徴や有用性について、技術的な面も含めて詳細にすらすらと説明していたのが印象的でした。
オンプレミス環境をクラウド環境にスムーズに移行する
「マルチクラウド」
「システム環境をクラウドに移行したいけど、クラウドに最適化するには新たなアプリケーション開発が必要になる」「オンプレミスとクラウドを最適な形で運用したい」など、企業内システムの運用に関する悩みは尽きないもの。そんなお悩みに応えるのが、ユニアデックスの「マルチクラウド」サービスです。
VMware社が提供するシステム仮想化プラットフォーム「VMware」の技術を利用し、お客さまが既存でお持ちのオンプレミスの仮想基盤をAWSやAzure、Google Cloud Platformなどさまざまなクラウド環境に仮想基盤ごとに、そのまま移行することができるのがVMwareクラウドソリューションです。
クラウドへの移行は「VMware HCX」を利用することでL2延伸機能や豊富な移行機能によりスムーズに行うことができます。また、既存仮想基盤を、そのままクラウドに移行することで、従来から利用しているアプリケーションを再開発する手間もかかりません。さらにオンプレミスでは必要だったハードウエアやVMware管理コンポーネントの障害対応やパッチ対応が不要になるため、システム運用の負荷が軽減できる点も重要なポイントです。
「ユニアデックスの強みとしては、VMwareを用いた豊富な仮想化基盤構築の実績、BIPROGYグループとして主要なクラウドプラットフォームに関する知見、またネットワークやセキュリティーに精通しておりトータルでご提供できるという点です。」
「特に『Azure VMware Solution』では、国内で初めてマイクロソフト社が認定するソリューションパートナー最上位である『Specialization』を2022年11月にBIPROGYと共同取得しました。ユニアデックスが仮想化およびAzureへの移行に対して深い知見を持つことが証明されています!」
これらの実績や知見により、既存のシステム稼働状況をアセスメントして最適な環境を提案し、さらにお客さまの業務ワークロードに対して最適なインフラ配置をマルチベンダーとして選定・提案しています。
具体例の一つが人材サービスのヒューマンリソシア様です。Azure VMwareSolutionで基幹システムをクラウドに移行し、運用負荷を削減できました。業務効率化が進んだことで、ITを活用した新しい事業・サービスに注力できるようになったそうです。
「既存環境によって最適なシステム形態やクラウドはそれぞれ異なりますので、クラウドのメリットを享受して、目指すべき事業戦略に合わせて最適に使い分けていけるようにサポートします。また、オンプレミスとクラウドを併用したい、オンプレミスの環境をそのままクラウドに移行したい、といった要望にも柔軟に対応可能です。まずは一度ご相談ください!」と丁寧に話されます。
簡単かつ、安心・安全にゼロトラスト環境を実現する
「CloudPas®」
2023年3月に警察庁が発表した「令和4年(2022年)のサイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によると、2022年下半期に発生したランサムウエアの被害件数は116件。インターネットバンキングに係る不正送金事犯は、発生件数1136件で被害総額は約15億円でした。
その多くは金融機関をかたったフィッシングサイトへの誘導で起こったそうです。IPAが毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威 2022」でも、個人に対する脅威の1位は「フィッシングによる個人情報の詐取」、組織に対する脅威は「ランサムウエアによる被害」が1位でした。
このように、セキュリティーの脅威は隙を狙ってどこからでも侵入してきます。かつてセキュリティー対策は「社内ネットワークの安全性を保つため、絶対に社外から侵入されないようにする」という考え方が一般的でした。
しかし、近年は社内・社外という境界を設けず、重要な情報資産へのアクセスは必ず適切な認証を経てから許可するという「ゼロトラスト」の下でセキュリティー設計が行われます。
「CloudPas(クラウドパス)」は、そんなゼロトラストを簡単・安心・安全に実現するクラウドベースのサービス。ID管理や多要素認証によってアクセスしているユーザーや端末を識別する「IDaaS」や、不審な挙動を検出する「EDR」、通信経路のサーバー攻撃を検知するゲートウェイセキュリティー「SSE(SWG+CASB+ZTNA」、インシデント発生時に各種のネットワークログを分析する「SIEM」など、ゼロトラストを構成する要素のすべてが備わっています。
さらに、クラウドサービスなので、導入に際して大きな負荷はかかりません。そのため、業態・業種問わずさまざまな企業から問い合わせがあるそうです。現在は金融や医療など、機密性の高い情報を扱う業種を中心に導入が進んでいます。
「自社セキュリティーに不安がある場合、ご相談に応じて『セキュリティー成熟度診断』を行います。これで自社の状況を可視化し、どこに脆弱性があるかを確認したうえで、CloudPasで適切な対応を取ることができます。また、各種セキュリティーサービスの設定はユニアデックスが代行しますから、運用開始後は、運用状況をチェックして、さらにセキュリティーレベルを向上できるような提案も行います。こうしてデータドリブンなセキュリティー運用を進め、新たな脅威にも対応し、リスクから企業を守ります!」と頼もしい。
【ブース取材を終えて】
コロナ禍を経て、国内のみならず世界中で再起動が始まっています。人と社会がともに歩み続けるため、持続可能な経済成長を遂げるため、進化を続けるデジタル技術をどう生かすかが問われています。今回紹介されたソリューションが、その一助となることを願ってやみません。