毎年、大勢の方々にご参加いただいている日本ユニシスグループの総合イベント「BITS2019」。2019年も6月6日・7日の2日間にわたって、ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京・港区)で開催されました。豪華ゲストによる講演もさることながら、最先端のICTソリューションを体感できるとあって、会場は今年も人で一杯。参加者は2日間合計で約2,600人でした。
そんな「BITS2019」のAIあり、働き方改革ありの最先端ICT満載の模様をレポートします!
【ブースNO.33 AIOpsとデジタル化に向けたAIの取り組み紹介】
「AIOps(エーアイオプス)」という言葉をご存じですか? これは、ITの運用(オペレーション)にAIを活用しようという取り組みの総称です。
ユニアデックスは長年ITの運用・保守に実績があり、この分野において多くの知見を持っています。そんなIT運用管理にAIを取り入れるべく、各企業はこぞってAI研究を進めているとのこと。こちらのブースでは、そんなAI研究の成果が展示されていました。
現在、一部について実証中のコールセンターの問い合わせデータを使ったナレッジシステムもその1つ。年間約10万件ある問い合わせデータを自然言語解析し、例えば新しい問い合わせがあると、過去に回答したQAから関連性が高いと思われるものを選出したり、関連部署をレコメンドしたりするナレッジシステムも実現できるようになるそうです。
それをさらに応用したのが建設大手の安藤ハザマと共同実証を行った「建設ナレッジシステム」で、山岳トンネル工事に関するノウハウのデータを使って、自然環境保護のために留意すべき点など工事で想定されるリスクを提示するというもの。こうしたリスクの洗い出しは、熟練の建設エンジニアの知見や経験に基づくものが多いのですが、このナレッジベースを使えば、ノウハウを底上げできるといいます。
「ふーんAIってすごいなー、何でも学習しちゃうんですね」とつぶやいたら、ブースで説明していた担当者が意外なことを教えてくれました。
「学習量が多ければいいというものではありません。データがあるほど予測精度が高くなると思いがちですが、そうとは限らないんですよ」
ユニアデックスは最近、環境省のデータを利用して、ある地域のPM2.5の濃度予測を行ったそうです。過去12カ月分のデータを使って、13カ月目の濃度を予測したものと、直近1カ月のデータを使った予測を比較したところ、直近1カ月のデータを使った予測の方が精度は高いという結果が出ました。
そこで今度は、PM2.5以外の汚染物質の濃度データを組み合わせ、「単一の汚染物質濃度を学習させたAI」と、「複数の汚染物質濃度を学習させたAI」の予測結果を比べたところ、「複数の汚染物質濃度を学習させたAI」の方が精度は高いという結果が出ました。
これは、複数の汚染物質濃度を学習させたことで、「より汎用性が高い予測ができるようになったためではないか」とのこと。
なお、AIの学習では学習するためのデータを人間が用意しなくてはなりません。この点においてユニアデックスは、さまざまなAI研究を通じ、知見を蓄積しているそうです。今後、この成果をAIOpsやさまざまな分野に生かしていくらしいですよ。楽しみ!
【ブースNO.26 デジタル変革を支援するITアウトソーシング】
続いてご紹介するブースはユニアデックスのITアウトソーシング(ITO)。ITOといえば、企業などの情報システム部門に代わって、その会社のITシステムの運用・保守に当たること。ところが最近、このITOサービスの需要が変化しているそうです。
その理由は、クラウドサービスの普及です。自社でシステムを持たず、インターネットを通じて利用するだけのクラウドサービスは、ハード・ソフトの購入費用や維持・運用コストを大きく削減するソリューションとして、急速に普及しています。これにより、ITOの需要は減少気味。
ですが、ITOの需要がなくなっているわけではありません。
「なぜなら情報システム部門の人材不足は深刻だからです。企業の規模が数万人だろうと100人だろうと、どの企業も情報システム部門の人材・育成不足に陥っています。現場の運用・保守に関する負荷は高まるばかり。そういう会社は、ITの管理もExcelなどの汎用ツールを使っているところが多く、ノウハウの継承もデータの活用もできないので、なかなか改善できないのです」
そんな状況でクラウドを併用すると、「ガバナンスにほころびが見えてしまいます」と担当者は説明します。
そこでユニアデックスが提案するのは、単なる運用・保守の役務要員だけではなく、サービス基盤にSaaS型ITサービスマネジメントプラットフォーム「ServiceNow」も併せて提供することです。
「例えばクラウド時代でも、社員が使うPCは絶対に必要です。私たちが提案するITOサービスでは、PCの選定からセットアップ、ヘルプデスクを含む保守サポート、不要になったPCの廃棄まで、PCに関わるすべての『困りごと』を一貫して引き受けるというもの。PCの発注や納品、お問い合わせ、廃棄依頼などさまざまなログが蓄積され、業務の改善や効率化につなげられます!」
将来的には、従来のITOの枠を超え、事業の垣根を超えた新しいビジネスの創出も考えているとのこと。不動産事業者やリース事業者と提携し、インフラまで含めたオフィスリースサービスなども考えられています。単なる「役務要員派遣」に終わらない、新しいITOを提案していくそうです。
【ブースNO.34 AI Contact Centerの“今”】
こちらは日本ユニシスグループのエス・アンド・アイが出展するコンタクトセンターソリューションのブースです。
エス・アンド・アイは1987年の設立以来、ICT基盤の構築やIPテレフォニー、コンタクトセンターのシステム構築に従事してきました。2018年には、AI事業ブランド「sandi AI」を立ち上げ、積極的にAIを活用したサービスを展開しています。同社が提案しているのが、AIを活用したコンタクトセンターソリューション「AI Contact Center」です。
確かに、ユニアデックスの【ブースNO.33】でも、コンタクトセンターのAI活用事例が紹介されていたので、この分野でのAI活用は結構進んでいるのかも。
同社の「AI Contact Center」では、コンタクトセンターのさまざまな業務にAIを活用したサービスを提案しています。例えば、簡単な問い合わせ対応には「チャットボット」、スキルや経験が必要な難易度の高い問い合わせ対応には、オペレーターに回答候補を提案する「FAQ支援サービス」、応対品質をチェックするための「音声テキスト化/自動チェックサービス」や要約支援など。顧客満足度向上や業務効率化などを目的に、コンタクトセンターのあらゆる業務でのAI活用を提案しています。
今回ブースでは、FAQ支援サービス「Knowledge Discovery」と音声テキスト化/自動チェックサービス「AI Log」の2つのサービスを紹介していました。
「Knowledge Discoveryの活用により、質問文から回答候補が表示されるので、経験によらず誰でも回答を導き出せるようになるため、回答までの時間が短縮されたり、折り返しの電話をしたりという手間が削減でき、結果として顧客満足度向上につながります。」
「それから、『AIは人間の仕事を奪う』といわれますが、むしろ活用することで業務品質も顧客満足度も向上し、人は人にしかできない業務に時間を割けるようになります。また、AI Logでは、例えば『絶対やせる』『もうかる』などの禁則ワードを登録しておけば、これらのワードを発している通話を簡単に探し出せるようになり、応対品質管理業務がかなり効率化されます」とのこと。
やっぱりAIってスゴい……。導入するだけで、こんなに大きな効果があるんだもの。と思っていたら、「導入するだけでなく、AIがきちんと学習できるデータを準備することも重要です」とアドバイス。これらのサービスの基になっているのは、FAQやマニュアルなどのデータや、過去の通話ログなどの膨大なデータとのことです。
そして、あるお客さまでは学習前の音声認識の精度は通常では64%でしたが、繰り返し学習させたことで認識率は92%以上にもなっているそうです。学習するためのデータをしっかり準備すれば、AIの学習速度も精度も、みるみるうちに上がるんだとか!
ブースの皆さん、ご紹介ありがとうございました。後編では働き方改革やベトナムのオフショア拠点の現状についてお届けします。
日本ユニシスグループ主催『BITS2019』取材レポート!:後編 「働き方改革」「クラウドセキュリティー」「ベトナム」の今(2019年7月25日号)