2018年3月6日、豊洲で開催された「第三回共創パートナーネットワーキング」にて、『共働PoC』の成果報告が行われました。『共働PoC』によって具体的にどのようなプロジェクトが実施され、いかなる成果が出ているのでしょうか?

IoTビジネス拡大を目指し活動中の『共働PoC』とは!?

そもそも『共働PoC』って、なんでしたっけ?? 復習してみましょう。

ユニアデックスは、2016年7月に東京サポートセンター(KDX豊洲グランスクエア)に「IoTエコシステムラボ」(※)をオープンしました。「IoTエコシステムラボ」の目的は、IoT分野でビジネス拡大を狙う企業をつなぐハブとなること。この目的を達成するため、2016年9月に発足したのが、『共働PoC』です。

※「IoTエコシステムラボ」は、2020年1月よりDX共創の場「ACT+BASE(アクトプラスベース)」がその機能を引き継いで活動しております。

だから…。「『PoC』ってなに?」ですよね。PoCは、Proof of Conceptの略。『共働PoC』は、「IoTエコシステムラボ」で開発したIoT技術の実用化を目指し、お客さまや共創パートナーの協力によりデモ・実証実験を行う取り組みです。

さて、『共働PoC』によって具体的にどのようなプロジェクトが実施され、いかなる成果が出ているのでしょうか。いよいよ、活動報告会に潜入です!!

画像: 挨拶をする 山平 哲也 (エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部長)

挨拶をする 山平 哲也
(エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部長)

画像: 2017年9月から2018年1月までの『共働PoC』の活動報告をする 椿 健太郎 (エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部IoTサービス企画部マネジャー)

2017年9月から2018年1月までの『共働PoC』の活動報告をする 椿 健太郎
(エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部IoTサービス企画部マネジャー)

『共働PoC』活動4本の柱と、3つのテーマ

現在、共創パートナー44社と行っている活動の4本の柱は、

1.「活用シナリオ・デモの提供」
2.「サービスの共同開発」
3.「案件の共同開拓」
4.「情報発信」

です。今回は「活用シナリオ・デモの提供」の実例として、3つのテーマについて、それぞれの担当者から報告がありました。

共働PoC活動報告(1)「エネルギー使用量の可視化と削減に向けて」

『共働PoC』活動報告のトップバッターとして登場したのは、ユニアデックスの安原さん。IoTを活用したエネルギー使用量の削減についての取り組み事例です。

画像: 安原 慎(エクセレントサービス創生本部 IoTビジネス開発統括部IoTサービス企画部チーフスペシャリスト)

安原 慎(エクセレントサービス創生本部 IoTビジネス開発統括部IoTサービス企画部チーフスペシャリスト)

このテーマの『共働PoC』に参加した共創パートナーは、株式会社コンテック様、安川情報システム株式会社様、シスコシステムズ合同会社様、兼松コミュニケーションズ株式会社様です。ユニアデックスを含む5社が、「製造業におけるエネルギー使用量の可視化を行い、中小製造業企業の収益率向上をめざす」というビジョンで実証実験に取り組みました。
ある工場において、作業内容と電力使用量を可視化し、相関関係を確認することで、現状の見える化が実現しました。

― ふむふむ。作業状況と電力使用量をリアルタイムで可視化することで、「どの作業にどれくらいの電力を使用しているか」といった、詳細なデータが確認できるというわけですね。どのようなメリットがあるのでしょうか?

原単位(一定量の生産物を作るために必要とされる原材料やエネルギー数量)を下げ、より効率的な製造につなげていくことができると期待されます。現場の意識も高まると思います。ただ、課題もあって、データ連携のためのシステム変更が必要であること、データを内部で処理するためにオンプレミスでの対応が必要になることなどが挙げられます。

- システム変更は、新しくIoTを導入する際の課題の一つではありますね。ただし、導入後のメリットを考えると、検討の余地はありそうです!

共働PoC活動報告(2)「AI活用による介護事業向けサービスの実現」

次に登壇したのは、ユニアデックスの峯岸直己さん。峯岸さんからは、「AI活用による介護事業向けサービスの実現」について報告がありました。

画像: 峯岸 直己(エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部IoT技術開発部第一課チーフスペシャリスト)

峯岸 直己(エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部IoT技術開発部第一課チーフスペシャリスト)

超高齢化社会に向かっている日本では、2055年に高齢者(65歳以上)人口の割合が38.0%で3,800万人となり、1.2人が高齢者1人を支える状況になると推計されています。介護事務所・施設は、2012年からわずか4年で約5万件も増設されており、介護産業における人材不足と重労働環境が大きな課題となっています。

― 超高齢化社会。日本が抱える大きな課題ですね。この分野でのAIの活躍に期待が高まります!

そこで、共創パートナーであるアイフォーコム株式会社様、インフィック株式会社様、株式会社たけびし様、澪標アナリティクス株式会社様と共に、「介護において課題解決に向けて何ができるだろうか」と、各社が提供できることを基に、実現可能なことを検討してみました。
アイデアとして出てきたのは、熱中症指数・インフルエンザ指数の算出、介護福祉士の最適配置予測などがありました。しかし、これらを介護施設に提案したところ、実際の施設のニーズと合致していないことが判明したのです。

― 熱中症予防やインフルエンザ予防のために、湿度や温度などの環境を数値化する…。一見、需要がありそうですが、すでに施設はこうした環境整備は当たり前に実施しているので、必要とされていなかったのですね。

そこで改めて介護施設へのヒアリングを行いました。そうしたところ、現場の大きな課題は、「人材不足」「夜間業務の負担」「スケジュール管理の煩雑さ」であることが明らかになりました。これらの課題を解決するためのAI活用シナリオを作成しました。

― なるほどー!一方的にできることを提案するのではなく、まずは現場の需要を調べてから、AIで解決できることを探っていく、という順番ですね。現場での真の課題解決に向けて、AIはどのようなことができるのでしょうか??

たとえば、人材不足の解消については、介護記録から熟練者の経験や勘をAIに置き換えることで、未経験者でも介護のノウハウを得て戦力になることができます。さらに、付加価値として、バイタルデータ(生体情報)を匿名加工することで、開発・研究を行う機関へ販売し、収益性を確保するという可能性も考えられそうです。

― 利用者のバイタルデータや表情・行動の組み合わせで無断外出の行動予測をする。あるいは、バイタルデータと位置情報との組み合わせで、転倒予測をする。そんなことが可能になるそうですよ!AIの活用が、日本社会が抱える課題解決につながりそうで、期待しています!

共働PoC活動報告(3)「母豚の健康と出産管理」

今回の共働PoC活動報告の最後のテーマは、ユニアデックスの椿さんによる「母豚の健康と出産管理」についてです。

画像: 椿 健太郎(エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部IoTサービス企画部 マネジャー )

椿 健太郎(エクセレントサービス創生本部IoTビジネス開発統括部IoTサービス企画部 マネジャー )

本テーマにご協力いただいた共創パートナーは、株式会社セカンドファクトリー様、株式会社NTTドコモ様、東京エレクトロン デバイス株式会社様です。デモの実施は、共創パートナーであるセカンドファクトリー様にご紹介いただいた納田牧場様にご協力いただきました。
納田牧場様は、セカンドファクトリー様が、徳島県で地産地消のシステム構築を目的に運営している第6次産業化施設「THE NARUTO BASE」の共創プラットフォームにも参加していらっしゃいます。

― セカンドファクトリー様の「THE NARUTO BASE」については、以前、Nextalkでも取材させていただきましたね!。納田牧場様は、どのような牧場なのでしょうか?

納田牧場様の特徴として、小規模牧場でありながら、徳島県で採れる鳴門金時を食べて育つ「阿波の金時豚」というブランド豚を販売していること、生産から販売までノンストップ経営を行っていることなどが挙げられます。

納田牧場様の『共働PoC』の実施にあたっては、養豚経営の重要な資源である母豚(ぼとん)にフォーカスしています。AIによって、母豚の出産記録、豚舎の室温データ、母豚の体温データから関連性を分析しました。今まで、豚の体温観測は行われていなかったため、今回のデータから、1.品種ごとに体温が異なり、結果として生産能力に影響していること、2.品種ごとの温度管理により生産能力向上を図れる可能性があること、3.飼育する地域に応じた最適な母豚品種選びが重要な可能性がある、といった検証結果を出すことができました。

― なんと、今までは、豚の体温を観測することは、一般的ではなかったそうですね。AIによって漸く日常的に体温管理ができるようになったということに、驚きです!

また、母豚が動いている時間、餌を食べている時間、立ったり座ったりする時間を分析することで、出産日を予兆できることも判明。今後、AIのさらなる活用によって、豚の健康管理と不具合の早期発見、養豚場の環境の快適化、出荷時期/出荷量の最適化・予測、品質の均一化・完全性向上が可能になると考えられます。つまり、養豚にAIを取り入れることにより、人手不足時代の養豚経営の勝者となることが可能なのです。

― 目視による豚の観測だけで、体調や出産時期を感じ取るには、きっと相当な経験と労力が必要ですよね。それが、AIを活用すれば、データ管理のみで誰でも効率的に、かつ正確に豚の管理ができるようになるそうです!畜産業の課題である人手不足の解消に希望が見えてきました!

この後、納田牧場代表取締役社長・納田明豊さんが壇上に登場されました。数分間の挨拶の中で、「これからの畜産業は、間違いなく二極化する」「AIの活用で、これからの畜産業を変えることができるはず」と熱く語ってくださった納田さん。「もっとお話をうかがいたい!」と、単独インタビュー」をさせていただきました!

画像: 納田牧場代表取締役社長 納田 明豊さん

納田牧場代表取締役社長 納田 明豊さん


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