電車から降りると、かすかに日焼け止めオイルのにおいと、肉を焼くバーベキューのようなにおいが混じる風。ここは湘南の片瀬江ノ島駅。駅を出てすぐの境川を渡って地下道で国道134号線をくぐり、東浜海水浴場に到着する。

8月22日、NexTalk編集部がやってきたのは、「SkyDream Shonan Beach Lounge」という看板を掲げるとある海の家です。ICT企業のユニアデックスが海の家? われながら意外な場所です。工場の生産ライン、住宅展示場、介護施設・・・IoTの仕事が増えるとともに、いままで行かなかったような取材先が増えてきました。注力ビジネスの様変わりを実感します。

画像1: 湘南の海の家で、IoTの実証実験
~ 飲食店における顧客体験を豊かにする気づきを求めて ~ (2017年9月12日号)

ここは、株式会社セカンドファクトリー様(以下 2ndF社)が経営する海の家です。2ndF社は、コンサルティング、システム開発、クラウドサービスなどの事業を展開していますが、POSシステムや飲食店向けクラウドサービスを手がける一環で、この海の家を運営しています。

自分たちが開発し販売しているソリューションが果たして現場で実用的に機能しているのか? 現場との乖離はないのか? 自ら使って確かめると同時に、より現場本位の意味あるソリューションにしていくために、このように海の家を構えておられます。

ユニアデックスが主催する「IoTビジネスエコシステムラボ」という共創の場に、ビジネスパートナーの1社として2ndF社にご参加いただいたご縁があり、当社も今回この実証実験の場に参加し、人流解析カメラを3台取り付けさせていただきました。海の家へ入る2方向の導線を歩くお客さまの流れや、属性(性別/年齢)データを取得し、後に気象情報や販売情報などとつき合わせ、相関関係を割り出すためです。8月末まで集めたデータを2ndF社とユニアデックスが共同で1ヵ月かけて分析することになっています。

2ndF社ビジネスエンゲージメントマネージャーの千葉隆一さんに、今回の実証実験に対する期待感などを伺いました。

画像2: 湘南の海の家で、IoTの実証実験
~ 飲食店における顧客体験を豊かにする気づきを求めて ~ (2017年9月12日号)

ー 身をもって自社のサービスの有用性を確かめるという御社の姿勢には頭が下がります。この海の家もそうですし、御社が徳島県鳴門市で運用されている複合型6次産業向け施設「The Naruto Base」もそうですね。

千葉 当社は、人間中心設計(HCD)推進機構の認定資格をもったデザイナーを擁し、学問的手法でもって快適なUX(user experience)を実現することを常に追究しています。HCDのメソッドを駆使し、世に出すソリューションがより快適な操作環境や視認性を実現できるように努めています。そうやって世に出たソリューションの実用性を、システムエンジニアが現場で身をもって体験し、次のソリューション開発にフィードバックするためにも、「実店舗での営業+実証実験」の場を設けているのです。
ここは2013年から始めましたが、得られた知見を生かし「極鶏.Bar」という唐揚げをメインに立てた飲食店経営に発展させています。「極鶏.Bar」から得られた知見が、さらに新しいUI(User Interface)を盛り込んだソリューションに発展していくわけです。この海の家で導入している「QOOPa」(クーパ)というクラウド型飲食店向けオーダリングソリューションも、そうやって進化している途中なんです。

― スパイラルアップしていく図が思い浮かびますね。机上の空論では商品を世に出さない という気概も伝わってきます。弊社との実証実験に期待されることは?

千葉 「QOOPa」でとれた「業務データ」(どの食べ物や飲料がいくつ売れたか?)と、店内でどんなお客さまがどう動いたか?という「環境データ」が合わさることで何かが見えてくると考えています。例えば、売上が良かったときの環境データと、悪かったときの環境データをつき合わせることにより、それまで見えていなかった因果関係が分かってくるのではと期待しています。

― 売上を伸ばすための人の流れをデザインするとか、コンサル面でも有用な結果が出ると良いですね。事前に何か仮説は立てられたんですか?

千葉  いえ立ててません(笑)。急な話でもありましたし、夏も待ってくれませんから、準備万端臨むのではなくスピード感を優先しましょう。仮説は後付けにしましょうと、ユニアデックスさんから提案を受け、それに乗りました。

画像: 「QOOPa」では、席にいながらスマホでオーダーも会計もできる。「欧米ではMobile Order Paymentというコンセプトが進んでいるが、日本ではまだまだ」(千葉さん)という。カフェに行って荷物を置いて場所を確保してから、ちょっとドキドキしながら受付に並ぶなんてことがなくなるといいのに・・・

「QOOPa」では、席にいながらスマホでオーダーも会計もできる。「欧米ではMobile Order Paymentというコンセプトが進んでいるが、日本ではまだまだ」(千葉さん)という。カフェに行って荷物を置いて場所を確保してから、ちょっとドキドキしながら受付に並ぶなんてことがなくなるといいのに・・・

画像: 人流解析画面の一例(海の家のものではない)。

人流解析画面の一例(海の家のものではない)。

― なるほど。「まず着手しよう」は、IoT時代に当社が心がけていることです。提案した以上、当社もよい気づきが得られるように分析に全力を注ぎます。

気づきといえば、昨年、ユニアデックスがこの海の家や「The Naruto Base」に設置したトイレセンサーのことを思い出します。2ndF社から予想外の気づきを与えていただいたのです。
通常は、トイレの利用がゼロだったとしても、1時間に1回従業員が清掃に行くという機械的かつ効率の悪い作業になりがちだが、センサーで利用状況を可視化できたおかげで、どういうタイミングで清掃すればお客さまにトイレを快適に利用いただけるか?という清掃の本質を従業員に考えさせることにつながった、というものでした。ご参考:NexTalk2017年4月11日号:2ndF大関社長へのインタビュー記事より)

画像: 昨年夏の実証実験のときに使用していた、トイレの空き状況を伝えるモニター画面。お客さまはテーブルにいながら確認できる

昨年夏の実証実験のときに使用していた、トイレの空き状況を伝えるモニター画面。お客さまはテーブルにいながら確認できる

これは、IoTの応用を考える上で極めて重要で本質をつく気づきだと思いますし、UXを追究なさっている2ndF社ならではの視点であるとも感じました。今回の実験でも新たに重要な視点が得られることをNexTalk編集部としても祈っております。

千葉さん、ありがとうございました。特別なジュースもご馳走になってしまいまして・・・

画像: 徳島産の桃を使ったジュース(左)と、同じく徳島産のイチゴを使ったジュース。驚くほどおいしかった。2ndF社が徳島の鳴門市で運営している「The Naruto Base」(地産地食さらには他食の促進を目指す共創施設)経由で取り寄せている模様。

徳島産の桃を使ったジュース(左)と、同じく徳島産のイチゴを使ったジュース。驚くほどおいしかった。2ndF社が徳島の鳴門市で運営している「The Naruto Base」(地産地食さらには他食の促進を目指す共創施設)経由で取り寄せている模様。

画像: この日は、あいにく曇りぎみ。この一帯は2020年の東京オリンピックのヨット競技会場になる。写真左奥のヨットハーバーの辺りがスタート地点になるらしい。

この日は、あいにく曇りぎみ。この一帯は2020年の東京オリンピックのヨット競技会場になる。写真左奥のヨットハーバーの辺りがスタート地点になるらしい。

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