一昨年からユニアデックスとご縁ができたカメラマンの阿部了さんが、昨年10月に本を出しました。
「おべんとうの人」(木楽舎)という本です。
これまでNHK総合の「サラメシ」(火曜日、20:15)の出演者として訪れた日本全国の働く現場で
撮影した写真と、そのときの所感やできごと、関連する自分の思い出を紹介する文章で構成されています。
阿部さんって文章も上手いんだ。
正直な感想です。
テレビに出演する立場でメモを取っている暇はないだろうに、しっかりと一人ひとりとのやりとりを覚えていて、それを過剰な表現に頼らず淡々と朴訥(ぼくとつ)につづっています。
アクセサリー職人の回では、からし漬けが出てくると、
「僕にとってもふるさとの味で、おやじの実家鶴岡にいくと、大きい食卓の上にはいつも民田茄子の一夜漬けに、だだちゃ豆、それときゅうりのからし漬けがあった」と思い出し、
道路標識製造現場で、たわいない会話の中で「ママ友」という単語をひろうと、
「そういえば45年前、近所にできた12階建てのマンションに同級生が引越ししてきた。誕生会に呼ばれたのも、ピンポンとブザー押したのも、エレベータに乗ったのも初めて。友達が自分の母親をママと呼ぶのを聞いたのも初めて。12階のベランダから見えた自分の家をとても小さく感じた」と郷愁を醸し出します。
鉄道の整備士の取材の回では、
「朝が早くておべんとうの用意が間に合わないときに、奥さんが子供と一緒にお弁当を会社まで届けてくれる事があるんですけれども、持ってきてくれた弁当ゆうのは特別うまいものですね。何か入っているのかな?」というコメントを受けて、「その何かを少しでも覗けたらいいなと、いつも思っている」とつづる。
人間模様まで描写する文章といい、写真家というのは、“絵の切り取り”だけではつとまらない仕事なのだとふと思いました。
近々この本を、メルマガ登録読者の方には抽選でプレゼントしたいと思っています。
ところで以下の写真は、昨年、阿部さんに撮っていただいた当社の社員です。