IoT、ワークスタイルの変革、クラウドファーストといった潮流は、あらゆる企業のビジネスのしくみを大きく変えようとしています。
ビジネスを支えるICTプラットフォームやその運用は今後どのように進化していくべきでしょうか。
日本ユニシスグループの総合イベント「BITS2015」で行われたセッションに、ユニアデックス 常務執行役員 マーケティング本部長の庭山宣幸が登壇し、NHKの深夜ニュース番組「NEWS WEB」でもおなじみ(2015年3月まで出演)の元競泳日本代表であり日本水泳連盟理事でもある萩原智子氏をナビゲーターに迎え、未来社会とビジネスをICT基盤で支える日本ユニシスグループの取り組みや事例を解説しました。
画像: ユニアデックス 常務執行役員 マーケティング本部長 庭山 宣幸

ユニアデックス
常務執行役員
マーケティング本部長
庭山 宣幸

画像: 元競泳日本代表 日本水泳連盟理事 萩原 智子氏 2000年、シドニーオリンピック日本代表。「ハギトモ」の愛称で親しまれ、2001年の世界選手権では自由形リレー銅メダル、2002年の日本選手権では史上初の個人4冠達成など、数々の業績を残す。2004年に一度は引退したものの、2009年に現役復帰。2010年には30歳で日本代表に返り咲いた。2012年の引退後は、スポーツコメンテーター、水泳教室、講演活動などで活躍。2013年から日本水泳連盟理事に就任し、NHK「NEWS WEB」では2014年度ネットナビゲーターを務める。プライベートでは一児の母としても奮闘中。

元競泳日本代表 日本水泳連盟理事
萩原 智子氏
2000年、シドニーオリンピック日本代表。「ハギトモ」の愛称で親しまれ、2001年の世界選手権では自由形リレー銅メダル、2002年の日本選手権では史上初の個人4冠達成など、数々の業績を残す。2004年に一度は引退したものの、2009年に現役復帰。2010年には30歳で日本代表に返り咲いた。2012年の引退後は、スポーツコメンテーター、水泳教室、講演活動などで活躍。2013年から日本水泳連盟理事に就任し、NHK「NEWS WEB」では2014年度ネットナビゲーターを務める。プライベートでは一児の母としても奮闘中。

モノのインターネット「IoT」で 世界がつながる、便利になる

―萩原―

みなさん、こんにちは。萩原智子です。NHKの「NEWS WEB」では2014年度ネットナビゲーターを務めさせていただき、iPadを前にリアルタイムで皆さんのつぶやきを拝見しながら進行するという、大変チャレンジングな経験をいたしました。今回は、その経験をもとに勉強させていただくつもりで、ナビゲーターとしてお話を聞かせていただければと思っております。

―庭山―

こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。さて、いきなりで恐縮ですが、お話のきっかけとして、今後のビジネスを考える上で重要なキーワードの1つ、「IoT」を紹介したいと思います。萩原さんはご存知でしたか。

画像1: モノのインターネット「IoT」で 世界がつながる、便利になる

―萩原―

申し訳ありません、実はつい最近まで知りませんでした。文字を見たときには「絵文字かな?」と思ったほどで(笑)。ただタイミングよく、5月28日(木)にNHKで放映された「クローズアップ現代」の「モノのインターネット」という特集を観まして。そこで少しばかり知識を得てまいりました。そんな程度なので、庭山先生、どうぞよろしくお願いいたします。

―庭山―

では、まずは基礎編から参りましょう。「IoT」はおっしゃるように“Ineternet of Things=モノのインターネット”という意味です。これまでインターネットには、パソコンやスマートフォンなどがつながってきたわけですが、これから「IoT」では”すべてのもの”がつながると考えられています。その中には「人間」も含まれるんですよ。

画像2: モノのインターネット「IoT」で 世界がつながる、便利になる

―萩原―

えっ、人間?…ですか?

―庭山―

直接人がネットワークを触るわけではないんです。“ある仕掛け”がありまして、それを使ってハギトモさんを含め、インターネットに入っていってもらおうというのが「IoT」の基本的な考え方です。かつてはインターネットにはコンピューターしかつながれなかったのが、デバイスと呼ばれる新しい種類のコンピューターですとか素子までもがつながるようになりました。2015年には250億ものモノがすでにつながっているんです。

画像3: モノのインターネット「IoT」で 世界がつながる、便利になる

―萩原―

そんなにたくさんのモノがつながっているんですか。さらに、5年後の2020年には、倍の500億になるとは、もう驚きです。でも、2020年と聞くと、私の頭にはやはり「東京オリンピック」という言葉が浮かんでしまうんですが(笑)。

―庭山―

そうでしょうね。日本水泳連盟理事としては、いろんなことをお考えだと思います。2020年のオリンピック/パラリンピックを成功させようと、私たち企業も協力して、国をあげてさまざまな取り組みが進められています。総務省が東京オリンピック/パラリンピックに向けた「ICT分野の政策指針」を出しているのですが、ICTを上手く活用して、世界各国から来られる皆さんに対して“おもてなし”を実現しようということなんです。

画像4: モノのインターネット「IoT」で 世界がつながる、便利になる

―萩原―

観客の皆さんだけでなく、選手の皆さんに対してもICTによる“おもてなし”を実現しようとしているんですね。競技中にも活かされるとか、興味深いです。

―庭山―

いろんな場面が考えられているんですよ。たとえば、外国からのスムーズな入国を実現したり、競技場の間を速やかに移動できるようにしたり。他にもいろんなデータを観客やテレビ視聴者に瞬時に届けて、よりいっそう競技に興味を持っていただけるような仕組みも重要だと思います。私たちも含め、日本のIT関係者が一丸となって、世界最高水準のICTインフラで実現していこうとしているわけです。

―萩原―

これは便利で楽しそうですね。オリンピック/パラリンピックは選手の活躍を観るのと同時に、日本の技術力を世界にアピールする場でもありますからね。

ウエアラブルデバイスの活用で 東京オリンピックを便利に楽しく

―庭山―

その中でも、いくつか鍵となる技術がありますので紹介しましょう。まず一番に目立つのは「ウエアラブルデバイス」ですね。先ほどIoT=モノのインターネットとして紹介しましたが、人間がインターネットにつながる仕掛けがまさにこれです。最近は「Apple Watch」が話題になりましたが、時計型のコンピューターを身につけることで、私たちが知り得なかった膨大な情報を集めて、生活に役立てようとしているわけですね。他にもピアス型や指輪型、眼鏡型など、さまざまな形のものが登場しています。そこで、今回は「ウエアラブル・オリンピック」とも呼ばれているんですよ。

画像1: ウエアラブルデバイスの活用で 東京オリンピックを便利に楽しく
画像2: ウエアラブルデバイスの活用で 東京オリンピックを便利に楽しく

―萩原―

おもしろいですね。私としては選手側からの意見として「水着につけるウエアラブルデバイス」が登場するといいなと思います。選手というのは結構アナログでして、練習前にわざわざ体重計に乗ったり、血圧や脈拍を測ったりするんですね。それが水着を着用するだけで測定できれば選手は楽ですし、トレーナーとも共有して体調管理もしっかり行えるようになり、仕上がりをピークにもっていけるようになるんじゃないでしょうか。

―庭山―

大会の時に体調をピークに、というのは難しいことだと思いますが、そのお手伝いができればすばらしいと思います。あと、オリンピックで問題になることが多いのはドーピングではないでしょうか。

―萩原―

そうですね。ドーピング検査については、私も現役時代には悩まされました。たとえば、風邪を引いても、市販薬や病院からもらった薬でさえ簡単に飲めないんです。禁止薬物リストは年々更新されていますし、それを全て把握するのは難しくて…。だから、たとえばスマートフォンなどを薬にかざすだけで「これはダメ」「これはOK」とわかる仕組みができるとものすごく心強いですね。

―庭山―

選手の皆さんの努力を無にしないためのご支援をICTでぜひ実現したいと思っています。そして、そのためにもそうしたアイディアをもっと知りたいと考えています。たとえば、いま萩原さんに伺ったアイディアを応用すれば、薬の飲み合わせなど、一般の人たちが薬を飲むときにも役に立ちますね。おそらくIoTはアイディアが勝負のビジネスになるでしょう。

―萩原―

夢が広がりますね。楽しみです。

―庭山―

自分たちの生活や仕事を効率的にするだけでなく、もっと社会を豊かなものにするためにICT技術は使われる時代になると思いますよ。

―萩原―

それを支えるのは、皆さんから集められるデータというわけですね。

―庭山―

そうですね。いたる所からデータをとってくるのが「IoT」なら、それを蓄えるのが、「クラウド」と呼ばれるコンピューターのかたまりです。

ビッグデータの活用で 生活やビジネスが大きく変わる

―庭山―

クラウドの上に「大量のデータ=ビッグデータ」を蓄積して、「分析=アナリティクス」して、その結果を私たちの生活や仕事に活かしていく。それが「IoT×クラウド」という新しい考え方です。

画像1: ビッグデータの活用で 生活やビジネスが大きく変わる

―萩原―

実は私も「NEWS WEB」に出演していたときに「つぶやきビッグデータ」というコーナーで体験しました。その日最もつぶやかれた言葉をピックアップしまして、皆さんがどんな風に考えて、どんなふうに過ごしたのかを読み解くというものでしたが、とても面白かったですね。ニュースがたくさんある中でも、全く違うことがつぶやかれていたり、すごく勉強になりました。ところで今回タイトルにもなっている「クラウドファースト」という言葉、どんな意味なんでしょうか。

―庭山―

ちょっとコンピューターの歴史を振り返りながら説明しましょう。萩原さんがお生まれになった頃は、「メインフレーム」という大きなコンピューターが主流でした。高価でしたから、使用は企業、それも大企業に限られていたんです。その後、1990年代を過ぎた頃、「オープンシステム」という安価で高い性能をもつコンピューターシステムが登場し、同時にネットワーク技術が急速に進化して、世界中のコンピューターをネットワークでつなぐ「インターネット」が生まれました。そうした環境のもと、FacebookやTwitterといったSNSなどのサービスが続々と誕生しました。実はこれらの仕組みは、クラウドで動かしているんです。IoTはクラウドがあるからこそ実現できた技術であり、クラウド利用が前提となっているんです。

―萩原―

インターネットとクラウドのおかげで、人と人とがもっと密接に交流できるようになったわけですね。

―庭山―

そうですね。そして、購買行動の様式も変わってきています。インターネット前は「AIDMA(アイドマ)の法則」といわれ、まずテレビなどで注意(Attention)・興味(Interest)を引かれ、欲しくなる(Desire)とメモなどをして(Memory)お店に買いにいく(Action)という流れでモノを買っていたんです。それがインターネットの登場後は「AISAS(アイサス)」という行動様式になってきました。注意(Attention)・興味(Interest)までは同じなのですが、その後ネットで検索(Search)し、実際にネットで購入する(Action)と、さらにブログやSNSに感想を書き込むなど情報を共有(Share)するようになったんです。

画像2: ビッグデータの活用で 生活やビジネスが大きく変わる

―萩原―

実は私も昨年出産しまして、なかなか外出ができなくなり、どうしても必要なものはネットで購入しました。まさに検索して、レビューをみて比較して、SNSなどもチェックして、そしてクリックで自宅に届くという。ものすごく便利な時代になりましたよね。

―庭山―

たぶん、こうした変化は消費者の方も実感されていることと思います。どうですか、周囲のママ友さんのご様子などもご覧になられて。

―萩原―

皆さんブログなどで、情報発信をどんどんされていますよね。ママタレさんのブログもすごいじゃないですか。本や雑誌より、ネットで情報を見てモノを買ったり、食べに行ったりすることがすごく増えましたね。

機械学習による自動化で インフラの運用・管理を強化

―庭山―

私たちも、そうした消費者のさまざまな変化に合わせて、さまざまなビジネスを作っていくことになると思います。2020年に向けてさまざまなキーワードがありますので、紹介しましょう。

画像1: 機械学習による自動化で インフラの運用・管理を強化
画像2: 機械学習による自動化で インフラの運用・管理を強化

―萩原―

先ほどの「ビッグデータ」や「ウエアラブル」も入っていますね。でも、知らない言葉がほとんどです。たとえば、一番気になるのが「機械学習」。いったいどのようなものなんですか。

―庭山―

簡単に言うと、ロボットでしょうか。コンピューター自身の経験で学習して、それに基づいて自動的に動作を変えていこうというものです。機械は同じことを繰り返すのがとても得意です。たとえば、工場の生産管理で「ある予兆があったときに、ある問題が起きる」ということを機械が学べば、ある予兆が生じたらある問題を回避する動作をとることができるでしょう。

―萩原―

なるほど。人工知能ということでしょうか。そういえば、最近自動車の自動運転化が実用に向けて動き出していると聞きますが、それも機械学習の一部なのでしょうか。

―庭山―

そうですね。決まったルートを走行する、障害物を避けるといったことは、もうすでにできるようになっているでしょう。ただ、渋滞を避けるとか、特定のところに寄りながらといったことは、人間でないとなかなか難しいものです。ただ学習しながら自らの行動をコントロールする「機械学習」の技術が進んだら実現できるかもしれませんね。そんなふうにコンピューターを使ってさまざまなことを実現させると同時に、そのコンピューターを運用・管理するコンピューターにも機械学習を活用することを考えています。

スポーツもビジネスも 確実な運用継続が価値を生む

―萩原―

先ほど、ビッグデータや情報共有などのお話もありましたが、水泳の世界でも情報共有を進めながら強化を図ってきたんです。トレーニング情報や栄養学、フォームのこととか、映像や情報をスピーディーに共有するようになってきたことで、最近の水泳界はぐっと強くなってきたんではないかと感じますね。

―庭山―

ICTの積極的な活用が、功を奏したというわけですね。さらにICTを日本全体の競技の向上に役立てていければと考えています。

―萩原―

2020年に向けて、着々とさまざまな施策を進められていると思うのですが、ICTにおけるユニアデックスさんの強みというのはどのような部分にあるのでしょうか。

―庭山―

ユニアデックスはインフラシステムのトータルサービスを提供しており、特に運用に関しては高い信頼をいただいています。どんなによいシステムでも的確な運用がなされなければ、十分な価値を生み出すことはできません。どのような運用が必要なのかを理解し、その上でサービス提供に務めています。近年、仮想化や統合化などが進みましたが、今後は先ほど萩原さんがおっしゃった機械学習などによる「自動化」が重要になってくると考えられています。コンピューターがコンピューターを管理する、そのシステムや技術についてさらなる努力を重ねていきたいと考えています。

―萩原―

新しいことをスタートするのは、とてもエネルギーが必要ですが、さらにそれを継続させることもまた重要なことだと思います。アスリートの場合も、どんなに強化しても、その状態を継続しなければ結果は残せません。それと同じことだと思うんですね。

―庭山―

まさにその通りです。確かにいいシステムを作ることも大変ですが、運用するのも大変なことです。止められないシステムをいかに守って運用していくか、私たちの技術を結集してよりよい運用保守を提供していきたいと考えています。

新たなビジネスを創出する環境を ユニアデックスのICTが支えていく

―庭山―

ここで1つ事例を紹介させてください。関係会社である大日本印刷(DNP)の新しいデータセンターの構築と運用をユニアデックスが担当いたしました。その中の「MediaGalaxyクラウド」についても運用のお手伝いをしております。その上でDNPは生活者に対して、さまざまなサービスを提供しているのですが、なかなかユニークなものが多いんですよ。萩原さんは、お料理はお好きですか。

―萩原―

はい、味はともかく(笑)、好きな方です。

―庭山―

最近注目されているスマホアプリなんですが、「レシーピ」というんです。スマホカメラでレシートを撮影すると、自動的に家計簿にデータが入力されたり、購入したものに関連したレシピを紹介してくれたりするんです。

―萩原―

それは主婦にとってはありがたいアプリですね。今日のご飯何にしようって、いつも悩むんですよ。これは使ってみたいです。当然、セキュリティーもばっちりですよね。へそくりとか、ばれると困るので(笑)。

―庭山―

はい、ばっちりですよ。さらには、萩原さんのような若い主婦など、生活者の役に立つだけでなく、「何を買っているのか」「どんなレシピが好まれるのか」といったデータを集めて分析することで、また新たなサービスを提供することもできるわけです。世の中にはオープンにされたデータは多くあるのですが、こうした個別の目的で集められたデータはよりビジネスを考える上で大変役に立つんですね。

―萩原―

データの活用法なんですが、スポーツやビジネスはもちろん、教育にも有効に使えるのではないかと考えていたんです。

―庭山―

そうですね。さまざまな取り組みがはじまっていますね。たとえば、タブレットなど新しいデバイスを用いることで授業をわかりやすくしたり、成績など生徒の情報の管理・共有を行うことで先生の仕事を支援したり、さらにIoTやクラウドなどを用いた新しいビジネスモデルの中で実現できることも数多くあるのではないかと考えています。

―萩原―

それは楽しみですね。東京オリンピック/パラリンピックが決まって、一気に活性化して、生活が便利になるのではないかと期待しています。

―庭山―

ぜひとも積極的に展開していきたいと思います。先ほど申し上げたように、データは十分に集まっています。それをどのようなアイディアでビジネスモデルとして成り立たせるのか。そこが勝負所と言えるでしょう。今日は萩原さんを迎えて、新しいICTのあり方、サービスについてご紹介して参りましたが、全体を通してご感想をいただけますか。

―萩原―

はじめて聞く言葉も多くて、大変勉強になりました。と同時に、5年後の東京オリンピック/パラリンピックに向けて、生活が大きく変わっていくんだなと実感しました。そしてその後、継続してよりよくしていけるのか、スポーツもそうですが、継続が大切だと感じました。私は水泳を通して“笑顔”を広げていきたいと思っています。ICTもまた生活が便利になり、豊かになり、その先に笑顔があると言う意味で、目的は同じなんですよね。ぜひ、一緒に「笑顔の普及活動」ができればいいなと思いました。

―庭山―

ぜひ、お手伝いさせてください。本日はありがとうございました。

―萩原―。

ありがとうございました

■このセッションの映像を公開しておりますので、是非ご覧ください。

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