2013年に立ち上がったユニアデックスの「未来サービス研究所」。その大きなミッションは、「目まぐるしく変化する先端技術や社会動向の調査研究」と「共創により、未来のオープンイノベーションを推進すること」です。同研究所ではこの役割を果たすため、今後起こり得る社会変化や技術トレンドをまとめた「未来予測レポート」の作成や研究成果の情報発信、ワークショップなどを通じて広くその活動を続けています。今回は、将来を見通すことがより困難となった「VUCA時代」の中で未来を読み解くヒントとはどのようなものか、同研究所の八巻睦子、村上義朗がこれまで取り組んできた成果とともに考察します。

ニーズを先取りしてイノベーション創出を目指す「未来サービス研究所」

― 未来サービス研究所は幅広い活動をしていますが、テクノロジーや社会が複雑化し、最近では「VUCA(未来の予測が困難)」の時代が到来するのではといわれています。こうした中でどのような活動を行われているのか、お聞かせください。

八巻 未来サービス研究所は、現状に満足せず少し先の未来について知見を出していく必要性や、当社のコーポレートメッセージである「同じ未来を想うことから。」を実現する活動を本格化する狙いで発足しました。大きなミッションとしては、1つは未来予測に基づくレポーティングや先端技術の調査研究を行い社内外に向けて発信すること。もう1つは、得られた知見を社会に還元し、お客さまや仲間と未来を共創するためのアイデアやイノベーションを進める場“未来飛考空間(Future Center)”としての役目を果たすことがあります。

画像: 未来サービス研究所 副所長 八巻睦子

未来サービス研究所 副所長 八巻睦子

村上 当社は、これまで技術やノウハウを生かして事業を行うシーズ志向が強い企業でした。しかし、この不確実性の時代においては、ニーズを先取りして社会貢献に資するアプローチを実践することが必要です。そこで、「ニーズ起点での未来予測や先端技術研究」と「共創」という理念を融合させるために、未来サービス研究所が誕生しました。当社は、ICT事業者ですのでICTの領域に目を向けがちですが、視野を広げ、内輪に閉じこもらず、新たな可能性を見出すためにも、お客さまと共に創り上げる具体的な取り組みを行うことが重要と考えています。

画像: 未来サービス研究所 主任研究員 村上義朗

未来サービス研究所 主任研究員 村上義朗

八巻 今回は、私からは調査研究の1つの事例として、専門領域である子育てや教育など生活に根差したデジタル化に関する調査を取り上げました。村上からは、ワークショップで共創活動を進めるためのツールとして開発した「未来飛考コンパス」のご紹介をします。

「暮らしにおけるデジタル化の実態調査」から課題を見つける研究活動

― では、八巻さんが最近行った研究活動とその意義を教えてください。

八巻 昨年「ICTを活用した学校教育に対する家庭での取り組みに関するアンケート調査」を担当しました。もともと学校教育のデジタル化は、2019年から「GIGAスクール構想」という文部科学省が推進する政策があり、小・中学校を対象とした校内ICTネットワークの整備や生徒への端末配布、デジタル教科書の導入検討などが段階的に進められていました。

画像: 2020年11月に発信したアンケート調査 。2020年春の休校時に家庭でICTを用いた学校教育を受けた小・中学生の保護者を対象に、具体的な学習環境や利用した学習ツール、今後に向けた課題などを分析した

2020年11月に発信したアンケート調査。2020年春の休校時に家庭でICTを用いた学校教育を受けた小・中学生の保護者を対象に、具体的な学習環境や利用した学習ツール、今後に向けた課題などを分析した

ユニアデックスでも、教育委員会や学校向けのソリューションを提供しています。研究所としても、以前からこの分野のデジタル化について注視していきたいと感じていました。そうした中、2020年の春、新型コロナウイルスの感染症の拡大によって多くの学校で休校措置が取られ、家庭はもちろん学校でも準備が整わない環境下で多くの先生や生徒、保護者の方々がリモート授業を体験することになりました。

私自身も子どもがいますので、テレワークをしつつ、子どものオンライン授業のサポートもしなければならず大変な日々を過ごしました。このような経験から、教育のデジタル化が家庭にもたらす実態を調査してみようと思ったわけです。

― どのような知見が得られましたか?

八巻 教育のデジタル化が家庭に浸透するには、「デバイスや通信環境といった投資面の格差解消」に加え、「デジタルを使いこなすリテラシーの格差解消」が必要です。アンケートによると、投資面については小・中学生の家庭において、共に5割以上が「休校時に新たな投資はしなかった」と回答しています。

一方で、PCやタブレットなどの端末やマイク、カメラの購入、Wi-Fi環境の整備などの面で投資が必要だった家庭が一定数あることも分かりました。特に新しくPCやタブレットを購入した家庭は、小・中学生の家庭共に約2割に達しています。

画像1: ― どのような知見が得られましたか?

また今回の調査では、家庭で学校教育を受ける際の父親と母親の役割や負担感の違いにも注目しました。その結果として、「子どもの勉強に付き添って進捗を見るような配慮的な役割」を母親が、「デバイスや通信環境のセッティングなどデジタルに関わる支援」は父親が担当する傾向にあることが分かりました。つまり、デジタルリテラシーという面でいえば、「ICT(機械)に関することは父親」というジェンダー差がある可能性が示唆されます。

画像2: ― どのような知見が得られましたか?

― 浮かび上がった課題に対してどのような貢献ができるのでしょうか。

八巻 教育現場についていえば、現在のICT環境の整備を中心としたフェーズから、デジタル化のステップが上がっていきます。デジタル教科書・教育アプリケーションなどコンテンツが充実し、お便りや連絡帳など、今まで紙中心だった保護者とのコミュニケーションも専用のツールが普及するでしょう。しかし、デジタルリテラシーが均一ではない段階では、学校や教育委員会、家庭からさまざまな問い合わせが入ると予想されます。

当社が先日発表した「次世代型AIチャットボットソリューション」なども、そうしたケースに役立つと思います。この一方で、今後課題となると思われるのが、データの利活用やセキュリティーです。例えば、通知表のような学習データをどのように安全に管理し、子どもそれぞれの成長のためにそのデータをどう生かしていくのか、といった側面からの議論も必要になります。

共創で未来を描き、具現化するツール「未来飛考コンパス」

― 次に、研究所のもう1つの柱である共創活動を中心にお伺いしたいと思います。

村上 私はこれまで土木や畜産、人材育成といったICT領域外の分野についてのデジタル化の可能性を研究しています。これらと同時に情熱を注いできたのが「未来飛考コンパス」の開発です。これは共創活動に取り組む中でその着想が芽吹き、開発した課題克服のための無償ツールです。具体的には、共創を図る中で出てきた多様なアイデアを一定の評価軸で数値化し、散布図/ランキングの形でビジュアル化するものです。

これは、ワークショップの“あるある”だと思いますが、ディスカッションして多くのアイデアが出てきても、それを形にするのはとても難しい。色んなアイデアが出てきても、それを羅列しただけだったり、あるいは“声が大きい人”が発言した項目がいつの間にか主題になっていたりして、せっかく生まれた成果を目に見える分かりやすい形で残し、共有したり引き継いだりすることがなかなかできなかったんですね。それを可能にしたのが、この未来飛考コンパスなんです。

― なるほど。具体的には、どのように活用するのでしょうか。

村上 ツールは、ExcelやGoogleスプレッドシートで配布していますので、すぐに使えて共有も容易です。使い方は、3ステップ(項目抽出、項目評価、定量評価)からなり、結果を自動的に散布図やランキング形式に変えて可視化します。

画像: 未来飛考コンパス 3ステップ

未来飛考コンパス 3ステップ

まず「項目抽出」といって、ワークショップのテーマを決め、テーマに基づき出された項目を評価する評価軸を決めます。そして、議論が進む中で出されたアイデアの1つひとつを「項目」セルに入れていきます。

画像: 「未来飛考コンパス」活用におけるステップ1(アイデアの記入)

「未来飛考コンパス」活用におけるステップ1(アイデアの記入)

次に、各項目に対して点数を付ける「項目評価」のステップに進みます。この評価プロセスが、今までにないやり方かもしれません。自分を含む参加メンバー全員が点数を入れていきます。評価を有識者や責任者にしてもらうと、より効果的です。

画像: 「未来飛考コンパス」活用におけるステップ2(メンバーによる評価)

「未来飛考コンパス」活用におけるステップ2(メンバーによる評価)

最後に、寄せられた点数を自動集計し、散布図やランキングに変換して行う「定量評価」を行います。Excelを使っているので、項目評価の段階から自動集計してランキングに自動反映されます。加えて、散布図のバブルの大きさも自動調整できます。散布図もランキングも決して目新しい手法ではないのですが、これをベースにしながら物事を考えるのは役立ちますし、さらに議論を収束・発展させていくなど次のステップに進めるようになります。

例えば、散布図内を象限に分け、シナリオシンキングをしたり、これからの注目事業のどこに投資をすべきかを判断したり、未来に向けて自社の強みや弱みを把握したりなど、さまざまな用途があります。こうすることで、議論だけで終わってしまいがちな「未来予測」に対して次のアクションが打てるようになるのです。

画像: 「未来飛考コンパス」活用におけるステップ3(散布図/ランキングによる可視化)

「未来飛考コンパス」活用におけるステップ3(散布図/ランキングによる可視化)

― この「未来飛考コンパス」について、今後はどのような形で発展させていくのでしょう?

村上 もともと社内で使っていたものですが、「面白い」「分かりやすい」という声を受け、ワークショップやお客さまとの共創の場で使うようになりました。これ自体を1つのオープンイノベーションとして、これからもワークショップや共創を通じて展開していく予定です。また、このツールを使って真にイノベーションを創出することを目指しています。ですのでツール自体は希望者に無料で配布していますし、興味のある方はぜひワークショップに参加いただければと思います。

さらに大きな共創とイノベーションへ

― 最後に、これからの未来サービス研究所の活動について展望をお聞かせください。

八巻 まず私個人が追いかけたいテーマとしては、身近な暮らしや働き方におけるデジタル化の可能性、これを「Work, Life, +Digital」と呼んでいるのですが、その動きをこれからもフォローしてICT事業の未来に貢献したいと考えています。また研究所としては、個々人の活動を深めるとともに違うテーマや異業種同士の融合なども模索しながら、イノベーションの芽を育てていきたいですね。

画像: 生活のデジタル化の経緯を振り返ると、まずゲームなどの娯楽やSNSのようなコミュニケーションから取り入れられました。しかし新型コロナウイルスをきっかけに、休校時のオンライン授業など、「ICTが無いと○○できない」という生活に必須なものへと変わりつつあります。

生活のデジタル化の経緯を振り返ると、まずゲームなどの娯楽やSNSのようなコミュニケーションから取り入れられました。しかし新型コロナウイルスをきっかけに、休校時のオンライン授業など、「ICTが無いと○○できない」という生活に必須なものへと変わりつつあります。

村上 私は共創活動が主体なので、大きくいえば「まわりの方々と共に幸せになる」ことがミッションです。今回のツールもその一環で開発したものですし、これを活用して、土木や畜産などICTやデジタル化が進んでいない分野の可能性を広げて、さらに大きな共創を生み出すことを目指しています。

― ありがとうございました。

画像: 「これからも未来志向の研究を続け、広く情報発信を続けていきたい」と二人は想いを話す

「これからも未来志向の研究を続け、広く情報発信を続けていきたい」と二人は想いを話す

●Profile
八巻 睦子
未来サービス研究所副所長。「Work, Life, +Digital」をキーワードに、デジタルの活用によって仕事と家庭の調和を図る未来社会のライフスタイルに注目。子育てや教育、介護など生活関連分野におけるデジタル化の動向を調査研究している。

村上 義朗
未来サービス研究所主任研究員。ユニアデックスのコーポレートメッセージとなる「同じ未来を想うことから。」をキーワードにお客さまと未来予測、共創活動を行っている。共創活動では畜産、土木、人材育成など非ICT領域をデジタル化することを推進している。

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