ITの世界から飛び出しワインづくりを目指した雪川醸造代表の山平さん。新しい生活や働き方を追い求める人たちが多くなっている今、NexTalkでは彼の冒険のあらましをシリーズでご紹介していきます。人生における変化と選択、そしてワインの世界の奥行きについて触れていきましょう。

こんにちは(あるいはこんばんは)。

昨年12月22日に雪川醸造の2021ヴィンテージの第二弾「スノーリバーロザート 2021」を発売しました。

案内ページにもあるのですが、こんなワインです。

「色合いは、やや褐色味を帯びて澄んだ深みのあるルビーレッド。香りは、ざくろ、アセロラ、いちごがふんわりと立ち上がり、杏仁、白桃、ヨーグルトが感じられ、そして黒すぐり、ブラックベリーもほのかに香ります。味わいは赤い果実の香りとすっきりした酸をベースに、静かな森の奥にいるような穏やかな旨味がひろがります。

相性の良いペアリングは、黒酢酢豚、シュウマイなどの中華料理、豚肉の塩焼き、ローストポーク、スモークサーモンのサラダ、ポン酢で食べる白菜と鶏肉の寄せ鍋などです」

あと、このワインのラベルに用いている図案(イラスト)は、入力したテキストに見合った画像を生成する機械学習ソフトウエア Stable Diffusion と、低解像度の画像を高画質化する機械学習ソフトウエア Real-ESRGAN を使用して作成しました。

詳しく調べていないので確定的に言えませんが、AIを用いてワインのラベルを作成して発売したのは、おそらく世界ではじめてだと思います。

画像: ラベル左側にメタリックなテクスチャーの雪の結晶が突然入っているのが、人間が思いつきにくい構図だと思っています

ラベル左側にメタリックなテクスチャーの雪の結晶が突然入っているのが、人間が思いつきにくい構図だと思っています

おかげさまで、年末年始を挟んでいることもあってかなかなか良い引き合いをいただいており、生産本数の半分以上をすでに販売しました。2月上旬にはもう1つ別のワインをリリースする予定で(このワインのラベルも機械学習ソフトウエアで作成しています)、それもあわせてご興味があるかたは、ぜひ購入をお願いします(それと雪川醸造インスタグラムのフォローもお願いします)。

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資金調達の1つとしての補助金・助成金

さて、今回ですが、前回取り上げたクラウドファンディング以外の資金調達について、もう少し掘り下げます。資金を調達する方法はいろいろありますが、ワタクシの経験から補助金の活用にフォーカスしてみようと思います。

まずは、なぜ補助金の活用が資金調達に位置づけられるかです。事業を行うための資金は、事前に蓄えてあった自己資金や、金融機関からの借入金、ベンチャーキャピタルや個人投資家あるいはクラウドファンディングなどを用いた出資(投資)などがイメージしやすい資金調達方法ですが、補助金や助成金の活用も、結果的には事業に使用する資金を調達することが可能になるため、資金調達の1つとして位置づけられます。

補助金や助成金の種類には、会社の開業・創業に必要な資金に利用できるものもあれば、特定の目的をもった事業展開に資するものもあります。多くの場合、補助金や助成金には政策的な「目的」があり、その「目的」と合致する創業や事業の展開を支援するために提供されることになります。

例えば、以下の表は「ものづくり補助金」(第14次)の説明資料からの抜粋です。「ものづくり補助金」の基本的な目的は、「新製品・新サービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資及び試作開発を支援」することにあり、その活動に「賃上げ・雇用拡大」「デジタル」「グリーン」「グローバル市場開拓」が含まれていると、補助条件が良くなります。

画像: 資金調達の1つとしての補助金・助成金

言い換えると、補助金の申請準備にあたって重要なのは、補助金の目的と自分が進めようとしている開業・事業の方向性が合っているかどうかを見極めることです。方向性が合っていれば、しかるべき内容で申請書を準備することで補助金が適用される可能性は高まります。しかし、合っていないようであれば、申請書を何度提出しても採用される可能性は低いと言えます。

また、補助金は基本的に「後払い」です。例えば、ある設備を導入するために100万円の費用がかかり、50万円分は補助金を適用する場合、100万円は一旦事業者が負担して設備を購入し、導入・利用開始後に補助金の「目的」に沿った形で設備を利用して事業が開始されているかを確認してから、50万円分の補助金が適用されます(支払われます)。多くの場合、設備購入から補助金適用までに数カ月かかるため、一旦は全額分支払うことができる資金面での余裕が必要と言えますし、申請準備から補助金の支払いまで1年以上かかることもざらにあるので、長期にわたっての計画性が必要であると言えます。

補助金の申請は専門家に依頼することが多いようですが…

補助金の申請内容ですが、多くの場合、次のような内容の書面を準備することになります。

・応募申請書
・事業計画書
・経費明細書
・会社の約款
・過去3年間の財務諸表
・会社・法人の登記簿謄本

「応募申請書」は、補助金に応募しますという意思を表明するもので、その法人・事業の内容を説明する内容となり、たいてい、1~2枚で収まる内容となります。

「事業計画書」が応募の際に一番の中核に位置づけられるドキュメントです。補助金を活用してどのような事業を実施するのか、実施によってどういった成果・効果があるのか、そしてその成果・効果はどのように補助金の目的に合致していて、どう社会に貢献するのか、を説明する書類です。これらを説明するにあたっては、主観的・情緒的なトーンではダメで(例:「必要だから購入する」「この事業はうまくいく」)、客観性を持ち、数値によって裏付けられたストーリーで説明することが求められます。このストーリーをしっかりと作り上げるために、補助金実施の「目的」と自分が進める事業の方向性が合っていることをしっかり認識して、客観的なデータを活用したストーリーの肉付けが重要と言えます。

「事業計画書」にはストーリーだけでなく、事業がどう展開していくのかの数値的な説明が求められます。多くの場合には、3~6年程度の損益計画とそのベースになる資金計画です。ここで事業の将来像を、現実的なセンスで実現可能だと読み取ってもらえるように描くことが求められます。

次の表は、ものづくり補助金における審査項目・加点項目の抜粋です(あと3ページ分くらい評価項目が記載されています)。これらの項目に沿って審査員は審査するので、事業計画書は要件を満たすように裏付けを持って記述されている必要があります。

画像: 補助金の申請は専門家に依頼することが多いようですが…

「経費明細書」は、補助金を活用して調達する設備、サービスの費用面・スペック/機能面を説明したものです。設備、サービスのカタログなどと、費用についての裏付けとして見積書(そして同一設備、サービスの他社からの相見積もり)などが含まれます。

ここまでの内容が、申請者が作成しなければならないものです。残りの「会社の約款」「過去3年間の財務諸表」「会社・法人の登記簿謄本」などは、しかるべき機関に申請して発行・準備してもらう書類となります。こういうものの発行も、チリツモ的に増えていくもので、気付いたら数日かかることも少なくありません。

補助金の申請については、自分で準備することも可能ですが(雪川醸造の場合、これまでの補助金申請についてはすべてワタクシが自分で準備しました)、そういうやり方は少数派で、実際的には専門家に依頼(申請代行)するケースが多いようです。

依頼できる専門家としては、認定支援機関(経営革新等支援機関)に認定されている商工会や商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、行政書士などがあるようです。

画像: 相談できる専門家をどう見つけられるかは、それまでにどういう人たちと接しているかにかなり依存するように思います

相談できる専門家をどう見つけられるかは、それまでにどういう人たちと接しているかにかなり依存するように思います

ワタクシはこれまですべて自分で準備しているので、こういった専門家への依頼に詳しくないのですが、金融機関、商工会、税理士、弁護士はお付き合いがあるので、身近に相談しやすい専門家なのではないかと感じます。この中で、金融機関への相談は、「後払い」である補助金分の短期融資(一旦全額支払ってから補助金が支払われるまでのつなぎ融資)とセットで相談すると、利害関係が一致するので親身(?)に対応してくれるとの話を、関係各所からよく聞きます。お付き合いの程度によりますが、経営状況を一番良く把握しているのは金融機関であることが少なくないため、「事業計画書」のストーリーづくりもうまく行ってくれる仕組みなのでは、と思います。

商工会は基本的には支援機関のポジションなので、申請内容を準備するのはあくまでも事業者本人で、作成・準備を支援する位置づけであることが多いようです。税理士、弁護士については、自社でお願いしている先が支援してくれるかどうかでかなり左右されると思うので(新しいところに依頼するのもありますが、自社の強みや事業概況について、いちから説明する必要があります)、まずは相談してみるしかないのではと思います。

個人的には、こういうものは専門家に頼らず自分で作成・準備したほうが良いと思っています。会社や事業を運営するというのは、これらを人に説明できる能力が求められます。ただ、いきなりは大変だ、時間がかかるというのもよくわかるので、最初は専門家にサポートしてもらいながら準備して、いずれは自分独りで申請できるようにするのが良いのではないかと思います。

結び

今回は、資金調達としての補助金について整理してみました。補助金、助成金の活用の肝は、ほとんどの場合公的な仕組みなので、税金が戻ってくる!と感じられることです(厳密には財源は違う可能性もありますが)。

実際、一昨年雪川醸造に適用された「ものづくり補助金」の申請書を準備する際には、「これでこれまで払った税金分くらいは戻ってくるぜ!」と念じながら申請書を作成し、関係書類を集めていたので、採択が決まった際にはかなりうれしくて、味をしめてしまい、昨年ももう1つ国税庁の補助金(フロンティア補助金)を申請し、適用されました(これ以外にちょくちょく小さめの補助金はいただいています)。

次回ですが、もうちょっとワイナリーのお金周りの話を続けようと思っています。ただ、資金調達の他の方法、融資あるいは自己資金の話をするか、売上をあげていく方法としてのワインの売り方について取り上げるか、決めあぐねています。あるいは、お金周りの話ではなく、ワイン関連の軽めのトピックスのほうが良いのかなあ…。

それでは、また。

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第1回:人生における変化と選択(2021年4月13日号)
第2回:東川町でワイナリーをはじめる、ということ (2021年5月18日号)
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第6回:ワインの味わいを決めるもの: 味覚・嗅覚、ワインの成分(2021年9月14日号)
第7回:ワイン醸造その1:醗酵するまでにいろいろあります (2021年11月9日号)
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第11回:ワイナリー法人を設立するか否か、それがイシューだ(2022年3月8日号)
第12回:ワインづくりの学び方
第13回:盛り上がりを見せているテイスティング
第14回:ワイナリーのお金の話その1「ぶどう畑を準備するには…」
第15回:ワイナリーのお金の話その2「今ある建物を活用したほうが・・・」
第16回:ワイナリーのお金の話その3「醸造設備は輸入モノが多いのです」
第17回:ワイナリーのお金の話その4「ワインをつくるにはぶどうだけでは足りない」
第18回:ワイナリーのお金の話その5「クラウドファンディングがもたらす緊張感」
[第19回:ワイナリーのお金の話その6「

画像: 山平哲也プロフィール: 雪川醸造合同会社代表 / 北海道東川町地域おこし協力隊。2020年3月末に自分のワイナリーを立ち上げるために東京の下町深川から北海道の大雪山系の麓にある東川町に移住。移住前はITサービス企業でIoTビジネスの事業開発責任者、ネットワーク技術部門責任者を歴任。早稲田大学ビジネススクール修了。IT関連企業の新規事業検討・立案の開発支援も行っている。60カ国を訪問した旅好き。毎日ワインを欠かさず飲むほどのワイン好き。

山平哲也プロフィール:
雪川醸造合同会社代表 / 北海道東川町地域おこし協力隊。2020年3月末に自分のワイナリーを立ち上げるために東京の下町深川から北海道の大雪山系の麓にある東川町に移住。移住前はITサービス企業でIoTビジネスの事業開発責任者、ネットワーク技術部門責任者を歴任。早稲田大学ビジネススクール修了。IT関連企業の新規事業検討・立案の開発支援も行っている。60カ国を訪問した旅好き。毎日ワインを欠かさず飲むほどのワイン好き。

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