2020年春、社会や企業活動は大きな転換点を迎えました。こんな時代だからこそ、書籍から学べることは多くあります! また、在宅勤務やテレワークなどの中で、有効活用できる時間が増えた今、書籍に触れるチャンスでもあります。初回は、報道テクノロジーベンチャーのJX通信社 代表取締役 米重克洋氏に、「今だから読むべき1冊」として『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』紹介してもらいました。

画像: 【ご推薦者】 株式会社JX通信社 代表取締役 米重 克洋 (よねしげ かつひろ) 氏

【ご推薦者】
株式会社JX通信社
代表取締役 米重 克洋 (よねしげ かつひろ) 氏

Profile 
報道研究者。1988年8月、山口県生まれ。2007年、私立聖光学院高等学校(横浜市)卒業後、学習院大学経済学部に進学。2008年1月に当社設立。中学・高校時代に航空業界専門のニュースサイトを運営した経験から、「ビジネスとジャーナリズムの両立」という課題に着目。他にYahoo!ニュース個人オーサー、TOKYO FM/JFN各局 「ONE MORNING」月曜コメンテーターなど。
WIRED Audi INNOVATION AWARD 2018受賞、Business Insider Game Changer2019グランプリ受賞。

【NexTalk】米重 克洋氏 関連記事
<ITX報道> テクノロジーで報道を変えたい! AIで最新ニュースを分析し、配信する“記者ゼロ”の通信社(2019年11月12日号)

『起業家の勇気』は、今の状況を生き抜く“力”を与えてくれる

――『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』(文藝春秋)を挙げていただきましたが、この本をお勧めする理由を教えてください。

今、多くの企業はコロナ禍以前の「常識」が通用しない状況に直面し、どのように適応していけばよいかと模索している状況です。この中で、偉大な起業家・経営者がいかに難局を乗り越えてきたかを知ることのできるケーススタディは重要です。

この本は、現USEN-NEXT HOLDING 代表取締役CEOの宇野康秀さんに関する本です。宇野さんは、2000年前後のITベンチャーブームの頃、名だたる経営者として注目されましたが、宇野さんの父親・元忠さんも大阪有線放送社を興し、全国展開を果たした立志伝中の人物です。その父親から、ベンチャー起業家としてすでに活動していた宇野さんが不意に経営承継を打診され、「800億円の有利子負債」という途方もない経営課題に直面します。それをどう乗り切り、現在のような立場になったのか。社会の不透明さが際立ってきた今、企業経営者として自分自身を鼓舞するためにも読むべき1冊と感じました。

私自身は、ノンフィクションや調査・報道の本をよく読みます。現実に起きた事件や出来事を、追いかけるものが好きなんです。猪瀬直樹さんの『土地の神話』(小学館)などは何度も読み返しました。東急グループ創業者・五島慶太氏に注目した書籍です。現在とは異なる時代背景の中、経営者が何を考えて何を成してきたのか――。膨大なファクトを積み上げて書かれており、読み返すたびに自分の目線やモチベーションが上がります。そういう骨太な本が好きです。本書もまた、丁寧な取材に基づいた渾身のノンフィクションですので、ぜひお勧めしたいとご紹介させていただきました。

課題に立ち向かう一人の経営者の「決意」や「熱意」に勇気づけられる

――本書の中で、特に心動かされたエピソードを教えてください。

宇野康秀さんは、高校生の頃から起業家を志していました。そして、リクルートグループを経て、人材サービス業のインテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)の創業に至ります。私自身も10代からサービスを立ち上げ、大学生の時にJX通信社を起業したので、宇野さんと少し近い部分があると感じています。

宇野さんは、インテリジェンスが上場する目前で経営を仲間に託し、父親が創業した大阪有線社を継ぐわけです。インテリジェンスの仲間はそんな宇野さんに温かいエールを贈ります。宇野さんのお人柄がうかがえると同時に、起業家として大切な姿勢は「人を大切にすることにある」と感じます。また、それまで大阪有線社の後継者と目された兄・康彦さんとのエピソードも描かれます。康彦さんも自分自身が大阪有線社を承継すると考えていたようですが、父の元忠さんは最期の時に一転、次男の康秀さんを強く推薦します。その中で描かれる兄弟の葛藤や、起業家としての父・元忠さんの思いも、強く印象に残っています。

――この本を読んで、ご自身の意識や行動にどのような変化がありましたか?

大阪有線社は当時も名だたる存在でしたが、それは“電柱の不正利用”という上に成り立っていました。父・元忠さんが築き上げた一大企業の裏側には、深い闇があったのです。この正常化に必要な金額は実に800億円超。宇野さんは事業承継によって巨額の負の遺産を背負うことになります。しかし、21世紀のインターネット時代を前に父の残した会社を正常化させ、かつ、父親時代の事業とはまったく違う方向に事業転換し、現在のUSENを宇野さんは新たに“創業”しました。

一度は厳しい状況になりながらも、事業を分離して銀行管理下にあった会社と合併させる形で、今のUSENを作り上げていきます。とにかく宇野さんの「胆力」というか、「ここまでやり抜く!」という姿勢に勇気づけられます。高揚感というのかな、心の“栄養ドリンク”を飲んでいるようなものかもしれないですね(笑)。

不確実性の時代だからこそ、先人の知恵や経験に触れてほしい

――最後にメッセージをお願いいたします。

新型コロナウイルスの存在は、「不確実性の時代」をさらに加速させています。こうした状況下、1人ひとりが「自分とは何か」「何が大切なのか」「何をしたいのか」と深く考えるようになった点が新型コロナウイルス以前の社会とは大きく異なる点だと感じます。

その意味で私は、「不確実性の時代」=「ニュースの時代」と捉えています。実際当社のサービスも、通常と比べてトラフィックが3〜4倍増えました。「自分自身にとって価値あるものは何か」を模索する人が増えたことは、「取捨選択して必要な情報を選び取りたい」と考える人が増えたということにもつながります。これからは特にその傾向が強くなると思います。

これからの未来、予想だにしない状況や課題に直面することも多くあるでしょう。この時、どのように思考し、乗り越えていくか――。先人の知恵に触れることで、情報の取捨選択の感度を高めることや、心を強く保ち、いかに未来洞察するのかといったヒントや学びを得ることができる1冊です。

画像: [書籍タイトル]起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡 [著]児玉 博 [出版社]文藝春秋 [発行年月]2020年4月

[書籍タイトル]起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡
[著]児玉 博
[出版社]文藝春秋
[発行年月]2020年4月

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