ニューヨークに、「殺陣の所作とサムライの心」を伝える女性殺陣師がいるという噂が!!
藝道殺陣波濤流高瀬道場(げいどうたてはとうりゅう たかせどうじょう)師範であり、殺陣師、映画のプロデューサーでもある香純 恭(かすみ きょう)さん。ニューヨークの道場で、多国籍の生徒を相手に、殺陣の所作から礼節、武士道の精神などを伝えています。NexTalk編集部のミキティが、突撃取材しました。

殺陣は勝敗を決めるものではない!?

この日、「TATE Hatoryu NY」マンハッタンクラスを見学に訪れたミキティ。「女性殺陣師?
怖いのでは」と恐る恐る道場を訪ねると、「こんにちは!」と笑顔で迎えてくださる香純さん。 優しくて、素敵なんですけど!

「ミキティさんもレッスンに参加しますか?」と声をかけていただき、「私、斬られませんか?」と確認すると、「殺陣は勝つ、負ける、の世界ではないのですよ」と香純さん。そう、殺陣は武術と混同されますが、勝敗を決めるものではないのです。歌舞伎の立ち廻りからきている伝統芸能で、所作の一つ一つに意味があるそうです。

このクラスは大人クラス。20代から60代までの国籍も職業も年齢もバラバラな方々が、学びに来ています。しかし、なぜ、ニューヨークで殺陣を学ぶ??

画像: 多国籍の生徒が殺陣を学ぶ

多国籍の生徒が殺陣を学ぶ

NY在住10年の役者で、道場1期生だというユリコさんは、「女優として殺陣ができることは武器になるし、本物を学んでおきたい。ここでは、日本の文化、歴史、カメラワークなども学べるので、自信を持って現場に立てる」と。

そうなのですよね。香純さんご自身が、女優でもあり、プロデユーサーでもあるので、映画や舞台の現場で生かせるプロのアドバイスがもらえることも、この道場の魅力なのです。

初のプロデュース映画作品「First Samurai in New York」は、2018年に「Artemis Women in Action Film Festival」で、最優秀ファイト・ウエポン賞を受賞

同じく、ニューヨークで役者をしているという日本人のタイジュさんは、「道場を見学して、恭さんの人柄やクラスの空気感にほれ込んで入門を決めました」。なるほど、確かにこの空気感、私もすでに心地よいです。

1年前から参加しているクラス最高齢(61歳)のイチローさんは、「所作を身につけたい」と。

そんなお話をうかがっているうちに、レッスン開始の時間に。並んでビシッと正座をする皆さんの姿が、かっこいい。

画像: 礼儀作法も丁寧に指導

礼儀作法も丁寧に指導

画像: 刀の構造と所作の意味も教える

刀の構造と所作の意味も教える

レッスンで使うのは、真剣ではなく竹光刀(たけみつとう)。香純さんから、刀の部位の名称について説明がありました。鍔(つば)を挟んでいる板金は「切羽」と呼ばれますが、ここから、「切羽詰まる」という言葉が生まれた。相手と向き合って座る際に、刀の柄を左にすることで、「狙う気はない。敵ではない」と示すことになるとか

殺陣を通じて日本文化・歴史・精神も学べる!

続いて、「抜刀(ばっとう)」、「正眼(せいがん)」、「納刀(のうとう)」という殺陣の基本の動き。「歌でも踊りでも、どの世界も同じだと思いますが、型が大事です」と香純さん。

その後はペアになって練習。香純さんの「もっと危機一髪の感じを出した方が面白いよね」というアドバイスに、「殺陣は、武術ではなく、観客を楽しませるための芸道である」とうことが、少しわかったような!

最後は、複数のサムライが刀を振りあう「白虎(びゃっこ)」という型の見応えたっぷりの動きを練習。

画像: 迫力満点!の「白虎(びゃっこ)」。2時間のレッスンは、みなさん真剣ながらも和やかに終了しました

迫力満点!の「白虎(びゃっこ)」。2時間のレッスンは、みなさん真剣ながらも和やかに終了しました

画像: Todさん(左)とJINJINさん(右) 今回初参加のTodさん。日本に合気道留学をし、剣道、空手、居合道などの経験もあるそう。「日本も映画も好き。殺陣ならどちらの世界にも触れられるので、一石二鳥です」と流ちょうな日本語で話してくれました。レッスン後、熱心にメモしていた上海出身のJINJINさん。企業で働く女性ですが、演武を観て「かっこいい」と感動して通い始め、「新しい手順を覚えるのは大変だけれど、楽しいのでずっと続けたい」

Todさん(左)とJINJINさん(右)
今回初参加のTodさん。日本に合気道留学をし、剣道、空手、居合道などの経験もあるそう。「日本も映画も好き。殺陣ならどちらの世界にも触れられるので、一石二鳥です」と流ちょうな日本語で話してくれました。レッスン後、熱心にメモしていた上海出身のJINJINさん。企業で働く女性ですが、演武を観て「かっこいい」と感動して通い始め、「新しい手順を覚えるのは大変だけれど、楽しいのでずっと続けたい」

殺陣は協調性と思いやりを育み、平和につながる!

子どもクラスは、ブラジル、イギリス、ロシアなど、より多国籍な生徒が集まっています。「COOL(かっこいい)!」と通い始めた子も、最初は厳しさに「軍隊みたい」と驚くそうですが、香純さんは、「どうして並ぶのか」、「どうして刀はまたいではいけないのか」など、礼節、モノを敬い感謝することから丁寧に伝えていくそうです。

「みんな最初は『オレがオレが!』なんですよね。でも、次第に自分だけが、がむしゃらに刀を振っても、うまくいかないと気がつきます。そこから、相手と呼吸を合わせることや、協調性を学んでいくのですね。殺陣は、自分が動きを調節して相手が攻撃しやすくするなど、相手に対する思いやりと、鍛練された動きが求められるのです」と香純さん。

まさに「殺陣=愛のあるコミュニケーション」なのですね!

そう叫ぶミキティに、香純さんは、「そうですね。愛は平和への第一歩だとすると、多国籍の人が集まるニューヨークで殺陣を教える意味は、そこにあるのではないでしょうか」

香純さんの人柄にすっかり魅了されたミキティ。「香純さんのような師匠に出会えた人は幸せですね」とお伝えすると、さらにステキな言葉をいただきました。

「私も、日本の道場で師匠と呼べる存在ができたことが、人生に大きく影響していると感じます。私がニューヨークに渡る際、師匠には、『自由に暴れていい。ただ、師匠と呼ばれる存在になる限り、Give & Giveを心掛けろ。Takeを求めるな』という言葉をもらいました。道場を率いる者として、この言葉を胸に、人の人生によい影響を与える存在でありたいですね」

画像: 女性殺陣師に会いに、ニューヨークの殺陣道場に潜入!(2019年5月14日号)

ミキティのこの構えにも「斬新で勉強になります」(笑)と香純さん。優しい……。

>> なぜニューヨークで殺陣の道場を!? 香純恭さんのインタビュー記事はこちら

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