連載対談「未来飛考空間」では、ユニアデックス未来サービス研究所員がビジネスリーダーや各分野の専門家と対談し、ITや社会の未来像を探っていきます。

ロボットが「人間らしさ」を教えてくれる

美人過ぎるロボット。落語家や芸能人そっくりのロボット。最小限の人間らしさしか持たないロボット。機械的な見かけを持ったロボット。さまざまなタイプのロボットを開発してきたアンドロイド研究の第一人者である大阪大学教授の石黒浩氏に、ロボットを開発する目的や思い入れ、ロボットと人間の関係など、幅広くお話を伺いました。ロボットと共生する時代を私たちはどんな心構えで臨むべきなのでしょうか。

画像: 石黒浩(いしぐろ・ひろし)氏 1963年滋賀県生まれ。大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。京都大学情報学研究科助教授、大阪大学工学研究科教授を経て、2009年より大阪大学基礎工学研究科教授。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。主な著書に「ロボットとは何か」「どうすれば『人』を創れるか」「アンドロイドは人間になれるか」などがある。

石黒浩(いしぐろ・ひろし)氏
1963年滋賀県生まれ。大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。京都大学情報学研究科助教授、大阪大学工学研究科教授を経て、2009年より大阪大学基礎工学研究科教授。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。主な著書に「ロボットとは何か」「どうすれば『人』を創れるか」「アンドロイドは人間になれるか」などがある。

「心」を理解するためにアンドロイドを作った

ー小椋ー
最初に先生がロボットに興味を持ったきっかけをお聞かせください。やはり幼少期に見たアニメとか漫画の影響とかでしょうか。

ー石黒ー
アニメなどそんな強烈なきっかけなんてないんです。子どもの頃の夢はボンヤリしていて、そんな中でも絵が好きだったというくらい。でも絵では食べていけないので、コンピューターを勉強したんです。そこで人工知能とかロボットに出会って、何か賢いものを作ろうとしたんです。
ただ、後から振り返ると、「自分」というものに興味があったんですね。なんで今スムーズに話せていないんだ、なんで人の言っていることを気にしているんだろうとか、いつも一歩引いたところから自分を見ていた。大人から気持ちとか考えるとかいうことを一度も教えてもらったことがなかった。

ー小椋ー
子どもの頃から気持ちとか心に興味があったということですね。

画像: ユニアデックス 小椋 則樹

ユニアデックス 小椋 則樹

ー石黒ー
以前、学校の先生から「他人の気持ちを考えろ」とよく言われたんだけど、気持ちなんて目に見えないし良く分からない。だいたいの先生は分かったふりをして、答えているだけです。これは、仕方ないことなんです。教育はとても難しいんです。

ー小椋ー
分かったふり、ですか。

ー石黒ー
人の教育とは答えがないんです。そのためか教育って、職業として人気がないんですね。でも、医学や法学がロボットやコンピューターに置き換えられても、教育は簡単にロボットやコンピューターで置き換えられませんよ。

ー小椋ー
人と近いところが難しいところなんですね。コミュニケーションとか。

ー石黒ー
難しいのは僕らが使う日常的な言葉、考える、意識、心…。これらみんな大事だといいますね。でも全く分かっていません。

画像: 「心」を理解するためにアンドロイドを作った

ー齊藤ー
これまでのアンドロイド研究においてそこを分かってきたということはありますか?

ー石黒ー
僕らのやり方は分かるかどうかではなく、全員がそう思えばそれでOKなんです。
心ってなんですか? 答えられますか?

ー小椋・齊藤ー ……(沈黙)。

ー石黒ー
そりゃそうです。日常的な言葉からして難しい。「考える」とか「意識」とか「心」とか肝心なところが分かっていない。定義不能なんです。心とは実体はないのかもしれません。自分の中にあるモデルと照らし合わせて把握できた気になったものを心と称しているだけかもしれません。だから「人の気持ちを考えろ」なんて言われても、誰も人の気持ちなんか分かるはずがない。分かったふりをしているだけ、みんな嘘をついているんですよ。

ー小椋ー
先生が人型ロボットを作るのは、そうした部分を明らかにするためなんですね。

人間らしさはどこから生まれてくるのか?

ー齊藤ー
8月上旬に日本科学未来館で公開されていた新作のアンドロイド「機械人間オルタ」を見てきました。その時、なぜそうしていたのか分からないんですけど、子どもを連れたお母さんがオルタとじゃんけんをして反応を楽しんでいました。

ー石黒ー
人間は足りない情報は想像で補完します。オルタは、見かけだけでなく、動きの複雑さで人間らしさを見せようという試みです。動きのカオスによって、いかようにでも解釈できるようになる。これは人間の気持ちも同じ。見る方が自分の尺度に合わせて勝手に解釈しているんです。

画像: ユニアデックス 齊藤 哲哉

ユニアデックス 齊藤 哲哉

ー齊藤ー
確かに私たちは外見で判断をしていますね。

ー石黒ー
僕は周りの人からは不機嫌に見えるらしく、怖そうだと言われたりします。でも実はそんなことないんですよ(笑)。以前は「怒る」や「泣く」ことができなかったんです。怒ることになんのメリットも感じなかったからです。大学で教える立場になって、学生に対しては怒ることが有効だと分かったので、トレーニングして怒ることができるようになった。

ー小椋ー
怒る練習ですか。

ー石黒ー
そう。怒ることができるように、自分をプログラミングしたわけです。怒るという行動をすることで、怒っているんだという気持ちが得られることも分かりました。

ー小椋ー
幸せだから笑っているのではなく、笑っていることで幸せを感じるという話もありますね。これは、行動が先か、それとも感情が先か難しいところです。

ー石黒ー
どちらかというと行動が先です。行動があって、心がついてくるのです。

以下、後編は11月に掲載いたします。ロボットに接するときの人間の余計なお世話・偏見、演劇に学ぶ人間らしさ、などに話がおよびます。お楽しみに。

画像: 人間らしさはどこから生まれてくるのか?

取材訪問時のこぼれ話「CommUたちとの会話」も、以下でお楽しみいただけます。
http://nextalk-uniadex.com/_ct/16986523

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