大日本印刷(DNP)は、パリ・ルーヴル美術館との共同プロジェクトとして、美術作品の新しい鑑賞方法を提案する「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ」を東京とパリを拠点に展開している。そこで活用されているDNPの最先端の「空間メディア」技術は、芸術・教育分野のみならず、世界中の企業からも大きな注目を集めている。

「空間メディア」技術を生かし新しい美術館賞のかたちを創出

画像1: 「空間メディア」技術を生かし新しい美術館賞のかたちを創出

一流の美術館で、一般鑑賞者としては到底触ることができない美術品を3D化し、かつ自由に回転させたりしながら作品の装飾効果を確認できる。あるいは、絵に隠された画家の意図は何か?どのような社会的背景があったのか?など、プロでもない限り分からない知識を取得し、かつその後で、お手本である学芸員の視線の動きと比較できる…

このような体験が出来るのが、「ルーヴル‐DNP ミュージアムラボ(以下、ミュージアムラボ)」だ。大日本印刷(DNP)とパリ・ルーヴル美術館が共同で手がけたプロジェクトだ。多様な技術や手法を活用しながら、より豊かな視点を持って美術鑑賞を楽しんでもらえることを目指している。
2006年にスタートして以来、活動の中心となる東京・五反田のDNP五反田ビルの1階に設けられた専用スペースでは、これまで約半年の会期で計10回にわたる展覧会が開催された。2009年9月からは、東京で開発されたコンテンツの一部を、順次パリのルーヴル美術館にも導入。世界中から訪れる来館者に対して「ミュージアムラボ」の体験を提供しており、非常に高い評価を受けているという。

ミュージアムラボは、各展覧会のために特別に開発した鑑賞システムを活用することによって、美術館の来館者と美術作品とをつなぐアプローチの革新を試みている。その鑑賞システムには、DNPの情報加工技術・映像技術、それに建築技術を集大成した「空間メディア」技術が活用されている。

画像2: 「空間メディア」技術を生かし新しい美術館賞のかたちを創出

「空間メディア」とは少し聞きなれない言葉だ。デジタルメディアと現実空間とを融合させることでまったく新しい体験を可能とする表現形態であり、まったく新しい美術体験を提供するプロジェクトの核心技術だ。ルーヴル美術館が培った研究成果と文化財普及のためのノウハウから発想した「ミュージアムラボ」の展示は、DNPの「空間メディア」技術と開発力によって具体化しているのだ。

DNP C&I事業部 コンサルティング本部 IM&Sコンサルティング室の室長、久永一郎氏は、
「様々な鑑賞システムで提供する独自の観点と技術で開発したマルチメディアコンテンツを使い、多様な切り口からルーヴル美術館の作品をじっくり鑑賞するユニークな展示を開催しています。おかげさまで、作品や美術館とより良い『対話』をするための新しい方法として世界中から評価をいただいております」
と語る。

フランス美術業界で示してきたDNPの高い技術力

「ミュージアムラボ」の活動は、2006年10月にルーヴル美術館よりDNPが相談を持ちかけられたことで始まった。活動のきっかけとなったのは、長い歴史と圧倒的な知名度を誇るルーヴル美術館が抱えていた課題だった。

ルーヴル美術館には実に年間1000万人もの観客が訪れ、その60%は海外からの観光客で占められている。ピーク時の混雑ぶりは世界中で知られているところとなっており、多くの観客は有名な展示物だけをさっさと見て回るような鑑賞方法に甘んじているのである。美術館としては、そんな混雑を緩和したいと願う一方で、専門知識が十分でない観客にも美術にもっと深く興味を持ってもらい理解して欲しいというジレンマを抱えていた。そこで当時の館長、アンリ・ロワレット氏が、「世界トップの美術館であり続けるためにはITの活用が必須だ」と提唱したのを機に、未知なる試みへと舵を切ったのだった。

新しい美術館のかたちを体現するプロジェクトのパートナーとしてDNPが選ばれた背景には、長年に渡るDNPとフランス美術界との間で育まれた関係がある。DNPは1998年にフランス国立美術館連合デジタルアーカイブ構築プロジェクトを手がけており、イメージ利用のためのライセンスビジネスを立ち上たりといった活動を展開している。印刷会社の得意とするところの、色情報の管理技術や高精細で大容量のデジタルデータを扱うノウハウは、美術作品のデジタルアーカイブには欠かすことができない。今回、ルーヴル美術館がプロジェクトパートナーとしてDNPを選んだのも、この先行プロジェクトをはじめ、DNPの高い技術力とノウハウ、そして開発提案力を高く評価してのことだった。

前代未聞の“現物”空輸によるコンテンツ開発

ミュージアムラボの展覧会は、ルーヴル美術館の所蔵作品を実際に五反田の会場に展示して行われた。ルーヴル美術館が美術館以外を対象に外部に貸し出すのは世界でも初めてのことであった。ここにも信頼と期待のほどがうかがえる。

「本物の作品を鑑賞するためのコンテンツをつくるには、やはり開発者も本物に触れることが必要なのです」
と久永氏は強調する。

ちなみに作品が置かれているルーヴル美術館の展示室内にマルチメディア機器を導入するのもこのプロジェクトが初めてであったという。

五反田の展覧会の企画・開発には約9カ月を要した。どのようなコンテンツを開発するのか、ルーヴル美術館側と議論を重ねながら進められていった。

画像1: 前代未聞の“現物”空輸によるコンテンツ開発

「作品を『理解できるか』の前に、まず『興味を持てるか』を考えるようにしました。興味を持ってさえもらえれば、その面白さを感じて理解を深めてもらえるという確信がルーヴル美術館にはあるのです」(久永氏)。

他にも、絵画を鑑賞するときに目の動きをトラッキングして、後で学芸員の“お手本”の視点の動きと比較することで、説明の後にもう一度鑑賞してどれだけ理解が深まったのかを確認できる鑑賞システムや、絵画で表現される立体感とはどういうものかを理解するために、部屋に投影された“絵”の中に実際に入って行き、画家が何を考えて作品を描いたのか説明を受けることができる鑑賞システムなど、枚挙にいとまがないほど数多くのユニークなシステムの開発が行われて来た。

画像2: 前代未聞の“現物”空輸によるコンテンツ開発

国内外からの評価を受け、新たな展開へ

ミュージアムラボの一連の活動は、前述のように世界各国から極めて高い評価を受けている。ルーヴル美術館は、世界中の美術館のリーダーとして新しい挑戦を続けていることが評価され、その評価は内部の意識改革にまでつながっているという。またDNPも、ソリューション提供企業としての懐の深さ、その提供物のクオリティーの高さを改めて知らしめることができた。

「我々の持つ技術力と、何か新しい課題があればとにかくそれを解決していくという行動力とを組み合わせることで、新しい価値を社会に提案することができたと自負しております。これからも、ミュージアムラボの活動で培った技術やノウハウを生かしつつ、お客様の課題解決に尽力していく構えです」
と久永氏は力強く語る。

実際、国内外の美術館や博物館、教育機関からの引き合いも多く、既に一部の博物館などではミュージアムラボで培ったDNPの「空間メディア」技術が生かされている。今後DNPでは、プロジェクトの成果を活用しやすくするための環境整備を活動の視野に置き、ミュージアムラボの枠を超えて人々と作品の出会いに貢献できるよう、「空間メディア」にさらに注力していくという。

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