IoT、クラウド、セキュリティーなど、ICTのメガトレンドは、社会にどのような形で、どのような価値をもたらすのでしょうか。各分野のエキスパートを招き、ビジネス&テクノロジーの最新動向と近未来の方向性などを伺いながら、日本ユニシスグループの取り組みと方向性について示唆いただきました。そして後半には、実際にこれらの技術をビジネスに活用している大日本印刷のスマホアプリ「レシーピ!」の担当者にも登壇いただき、具体的な活用法についてお話を伺いながら、これからの可能性についても議論を深めました。
●パネリスト
株式会社アスタリスク・リサーチ エグゼクティブ・リサーチャー 岡田 良太郎氏
Ping Identity マネージングディレクター(講演当時) 近藤 学氏
大日本印刷株式会社 C&I事業部 ビジネスイノベーション本部 第1ビジネス開発室 室長 嶋岡 立行氏
大日本印刷株式会社 C&I事業部 メディア本部 MC事業開発室CBメディア企画グループ 田ヶ原 絵里氏
●モデレーター
ユニアデックス株式会社 プロダクトマーケティング部 マーケティング1室 室長 松隈 基至

おすすめ「スマホアプリ」に見る ICTのトレンドと新たな可能性

―松隈―

画像: ユニアデックス 松隈 基至

ユニアデックス 松隈 基至

日本ユニシスグループとして「Foresight in sight」という新たなコーポレートステートメントを打ち出し、「先見性をもって未来を洞察する」ためにさまざまな技術を投じていこうと、そのように考えて今回BITS2015を開催しております。まず本セッションのテーマである、IoTについてですが、今後、さまざまなモノがインターネットに繋がっていきますが、モノがインターネットに繋がる事そのものに価値があるわけではなく、繋がったモノからさまざまなデータが収集され、それを分析することで今まで見えなかった事が見えてくる。また今まで出来なかった事が出来るようになる、それにより人の生活が便利に、豊かになるということに大きな価値があるわけで、これがIoTの真価だと捉えています。今日はそのような観点で登壇者の皆さんとお話を進めていければと思っています。とはいっても、難しい話はさておき、まずは自分や家族が愛用しているスマホアプリを紹介していただくという、身近なところから話をはじめましょう。

―岡田―

画像: アスタリスク・リサーチ 岡田 良太郎氏

アスタリスク・リサーチ
岡田 良太郎氏

私の場合は、約1年ほど使っているヘルスケアアプリ「Moves」を紹介したいと思います。ただ持っているだけで万歩計として使えるだけでなく、移動場所の地理情報も自動的にトラッキングされているんです。そして週ごと、月ごとに集計されたり、地図と連携させることもできます。クラウドと連携しているので、自分が意識していないうちに、有用なデータがどんどん溜まっているわけです。従来のライフログは「楽しかった」「おなかがすいた」みたいな、感覚的な言葉をTwitterなどで積み重ねていましたが、これは完全に意図を必要としない数値的な「ログ」。ライフセンサーといってもいいでしょう。

―近藤―

画像: Ping Identity(講演当時) 近藤 学氏

Ping Identity(講演当時) 近藤 学氏

私はこれ、「夜蝶Diary」を紹介します。このユーザーは夜のお店のお姉さんでしょうか。顧客管理アプリなんですが、登録する内容や属性が生々しくて(笑)。さらにCRM的な内容、「同伴の可否」「一緒に来店する人」などの情報も入れられるんですね。さらに来店日の検索ができたり、“ご無沙汰メール”の期間設定ができたり、きめ細やかさがすごいんですよ。20件までは無料なんですが、それ以上だと有料になるあたりも絶妙なビジネスモデルなんですよね。

―松隈―

これは個人事業者や、コンシューマービジネスの営業担当者などによさそうですね。美容室とか、保険関係なんかにもぴったりなんじゃないですか。

―近藤―

そうですね。クラウドでの名刺管理ツールなんかと連携すると、すごいソーシャルグラフができそうです。自分のデータは入れられたくないですが(笑)。いまデータはクラウドではなく、手持ちのデバイスにのみ保存のようです。

―岡田―
落とされたら困りますね(笑)。

―松隈―
さて、続いて私の番です。定番アプリなので皆さんご存知かと思いますが「Instagram」です。スマホで写真を撮り、簡単におしゃれなフィルターをかけられて、コメントをつけてアップするというおなじみのアプリです。2010年に起業して、すぐに売上がゼロ円にも関わらず、10億ドルでFacebookに買収されたのが話題になりましたね。うちの奥さんが愛用していまして、子どもの成長記録写真をアップしていただけなのですが、いつの間にかフォロワーが10万人まで増えまして、それだけいると出版社の人もいるわけで、ある出版社から「Instagram」に投稿した写真を本にまとめて出版しませんかとお声掛けいただき、2013年に書籍として出版されました。

―岡田―
すごいですね。普通のお母さんの撮影した写真がそんなに人気になるとは。

―松隈―

画像: おすすめ「スマホアプリ」に見る ICTのトレンドと新たな可能性

さらに、子どもが幼稚園に上がり、今度はキャラ弁をアップするようになったんです。そしてこれも今年になって本になりまして。さらに面白いのが、この本を参考にキャラ弁を作った人が写真を撮って「Instagram」に投稿する際、本のタイトルをハッシュタグにして投稿してもらうようにしたところ、そのキャラ弁写真に対して本の著者であるうちの奥さんがコメントを書くという、メディアとユーザーの双方向のコミュニケーションが生まれたりなど、単なる書籍ではなかなかないことですよね。この経緯は新聞にも掲載され、それを見てまたフォロワーが増えるという循環も生まれているんです。 ただ、「Instagram」ユーザーはこのような形でアプリを上手く活用出来ていても、「Instagram」という企業自身はどうやって利益をあげているのか不思議に思っていました。ところが、ちょうど2015年6月3日に「Instagram」が広告事業に本格的に乗り出すというニュースが出ていました。今後、写真の右下に商品購入サイトへのリンクボタンやアプリのインストールボタンが出るようになるそうで、Facebookの傘下ですから同じように広告収入へと繋げられるようになるわけです。私はマーケッターなので、こういうところばかりに目がいってしまうのですが、これからの「Instagram」の動向に注目しています。

―岡田―
スマホアプリって、普段使いで、なおかつ長く使うって難しいですよね。どうしても飽きてしまいます。

―松隈―
自分の生活に必要なものでないと、なかなか続きませんよね。「LINE」はコミュニケーションに必要だから長く使う、でもゲームは流行り廃りがどうしても出てきてしまう。

―岡田―

アプリを“消費している”ことを感じますね。一方、生活に組み込まれたアプリも増えてきていますし、「Instagram」、「LINE」、先ほどの「夜蝶Diary」も、使っている人の層がITっぽくなくなってきたようにと思います。ITリテラシーが高くなくても簡単に使えるようになってきた。それでいて、重要なデータの流入元としてしっかりしている、というのも大きなポイントですね。

170万ダウンロードの家計簿アプリ 大日本印刷「レシーピ!」のビジネスモデル

―松隈―
「Instagram」以外にも、ぜひうちの奥さんに使ってもらいたいと思っているのが、これからご紹介する大日本印刷の「レシーピ!」です。現在(6月時点)まで170万ダウンロードという驚異的な実績を残しているアプリです。ご担当されているお二方をお迎えして、「IoT」「クラウド」「セキュリティー」を活用したビジネスの実例としてお話を聞かせていただこうと思います。

―嶋岡―

画像: 170万ダウンロードの家計簿アプリ 大日本印刷「レシーピ!」のビジネスモデル

「レシーピ!」はIoTとレシートを利用した家計簿アプリです。レシートを撮影するとOCRエンジンによって「購入したもの」「購買日時」や「店の電話番号」などの6つのレシート情報を活用します。レシート情報は、ひとつの経済圏に閉じてしまうPOSと違い、さまざまな流通の購買情報が手に入るという点で優位性があります。そのため、あえて立ち上げ時は、POSそのものをIoTにするのではなく、レシートに目を付けました。
昨今のリテールテクノロジーの中で「サークル」「コネクト」という循環系の考え方が主流になっているように、人は買い物をする前も、最中も、その後も、さまざまなシーンであらゆる情報に触れ続けています。その購買行動を体系立てて整理することで、次につながるコミュケーションができるのではないかと考えました。「レシーピ!」もまたその一部を担うものです。

画像: 大日本印刷 嶋岡 立行氏

大日本印刷 嶋岡 立行氏

―嶋岡―

理想としては、レジを通りさえすれば情報が読み込めるような、レシート撮影不要の未来を創っていきたいと考えています。その第一歩として、東芝テック様が開発した電子レシートサービス「スマートレシート」と「レシーピ!」を連携させる取り組みをスタートしました。
また、新しい活用として電子チラシとの連携も始めましたし、流通・小売事業者へのOEM提供も開始しています。大日本印刷でもさまざまなBtoCビジネスを展開してきましたが、やはり買い物に使う家計簿アプリとなれば、慣れ親しんだ流通・小売事業者の方が生活者の親近感が湧くでしょう。また事業者様側でも、他店のデータが取れるため、競合対策などに活用できます。生活者利便性を重視した上で、ビジネスの狙いを定めていくことが大切と考えています。なお、その事例として、コープ東北様で配布されるタブレット端末に「レシーピ!」を標準搭載することが近々発表される予定です。(家計簿ジャーナル powered by レシーピ!)

画像: 大日本印刷 田ヶ原 絵里氏

大日本印刷 田ヶ原 絵里氏

―田ヶ原―

さらにメーカー向けにもメニューが用意されています。たとえば、ある飲料を購入した人のデータから、関連して購入されている商品やその定着率などを推し量ることができます。たとえば某飲料メーカーでは、お茶の広告媒体として活用いただき、撮影したレシートの内容によって広告を配信していくという施策を行いました。特にクーポンなどの値引きの訴求はしませんでしたが、広告を見た人のうち平均3.9%がその後商品を購入しており、購買行動の変化についての追跡調査についても高く評価をいただきました。

―嶋岡―

現在は、無料で個人情報をとらず、属性情報のみとなっていますが、将来個人の特定が必要となれば、クラウドやセキュリティーとの関係が重要になるでしょう。また一方で、トレンドや考え方の基準などは日々変わっていきますので、ご教授いただければと思っております。

個人特定データの取得をせず 幅広い層のユーザー獲得に成功

―岡田―

データはクラウドデータベースで管理されているのですよね。統計情報に大変興味があります。

―嶋岡―

調査会社が行うようなデータ分析は、通常アルバイト的に参加している世帯からのバイアスのかかった抽出データなんです。しかし、「レシーピ!」はやめる人もいれば休む人もいる、ごく自然なデータというのが特徴です。日本全国に人口分布と同じようにいることで、マス的なデータの母集団として使えるわけです。たとえば、地方でのプロモーション効果を測定する時は、その地域のデータだけを分析することも可能です。

―岡田―

その属性はどうやって取得するんですか。

―嶋岡―

都道府県、市区町村の属性はユーザー登録時に行ってもらいます。あと、レシートの店舗の電話番号でだいたい推測できますね。個人を特定する情報は入力せず、属性データのみにとどめています。

―近藤―

アイデンティティーのビジネスをやっているものとしては大変興味があります。こういうサービスって、とにかく個人情報を入れさせることが是とされていますが、何かと問題が生じる場合が多いです。でも、そうやって個の特定できない属性情報で全体を捉えることが、ビジネス上のドライバーになるというわけですね。

―嶋岡―

当然ビジネスなので、私どもとしても個人情報に直結させて儲けに結びつく方向も考えましたが、生活者の心理的階段も大事と考えました。Moneytreeさんなどのアグリゲーションサービスに対しても、自分の口座が直結するので、日本人は欧米に比べると慎重な傾向にありますね。そういう技術だけでは引っ張れない生活者の心理を考慮することも重要だと思っているんです。

―松隈―

ありがとうございます。それと関連するように岡田さんから「人・道具・場所・コミュニケーション」の関係性を表した図をいただいています。

―岡田―

この図は、今日の話題を抽象化して、変化が起きている所を4つに分類してみたものです。「人が変わったからコミュニケーションが変わった」とか、「コミュニケーションの場所が変わった」とか、変化が見えてくるんですね。たとえば、あるSNSアプリでは地理的な範囲を絞る機能を付けたら、災害時に助け合ったり、さらにはBluetoothなど他の通信経路を使ったりという仕組みができつつあります。そうした「人・道具・場所・コミュニケーション」が上手く成り立つことが求められる「安全」だとすれば、常識の変化が捉えられるのではないかと思ったわけです。

画像: 個人特定データの取得をせず 幅広い層のユーザー獲得に成功

―松隈―

なるほど。これまでのICTの変化を見てみると、インターネットの登場により時間や距離を越えたコミュニケーションが出来るようになり、インターネット前後では生活も仕事も大きく変わりました。さらに今後はIoTのような新しい世界が始まろうとしています。しかし、我々がこれまでにも経験してきたように、便利になるということは同時にセキュリティーリスクも増大していくことになるわけです。そのあたり、近藤さんにご解説いただけないでしょうか。

不要な個人情報を取りすぎる時代をちょっと見直すべき

―近藤―

まずは簡単に当社の紹介をさせてください。「Ping Identity」はその名の通り、IDに関するソリューションを提供する会社です。Fortune100の半数以上が利用し、面白いところでは海外の政府や軍関係などが顧客です。ユニアデックスさんとはSIパートナーの契約をしており、たとえばクラウドやさまざまな社内システムのIDを連携・管理するソフトウエアの「PingFederate」などを提供しています。認証はアプリケーションから独立した認証基盤にて行い、各アプリケーションは基盤側から渡される認証済みの ID および属性情報を受け取って使います。

画像1: 不要な個人情報を取りすぎる時代をちょっと見直すべき

―岡田―

オープンプラットフォームのIDを丸受けしてくれるというわけですね。

―近藤―

そうです。なぜそういうことが求められるようになってきたかというと、環境が変わったからですね。昔は城壁の中にいるようなものでした。作業は限定されたところで行い、そこに出入りする人を管理すればよかった。またはファイアーウォールの中で作業すればよかったわけです。しかし、クラウドが登場し、さらにいろいろなユーザーパターンを管理する必要が生じてきました。なので“物理”で境界を決めるのがとても難しくなってきました。「Identity is the Next perimeter(アイデンティティーが次の『境界』に)」といわれるように、物理境界ではなく論理境界になっているわけです。たとえば「Google Apps」もIDが異なると同じ人でもプライベート利用か仕事利用かの境目になる。そうした論理境界を意識してシステムやビジネスを設計しなければならない時代になってきています。
それにしても、不要な個人情報をとり過ぎですよ。たとえば映画館の予約には住んでいる場所など不要でしょう。割り札のデータだけがあればいい。なのにテンプレート化された個人情報を取ろうとする。結果、何かあって不要なところでトラブルになったりするんですよね。

画像2: 不要な個人情報を取りすぎる時代をちょっと見直すべき

―岡田―red

まさにそうですね。個人情報をとらないとビジネスがなりたたないなんて、思い込みです。逆にそれがないことで、使いやすくなったり、心理障壁をぐっと下げたりするんじゃないかと。どうでしょうか、大日本印刷さんの「レシーピ!」では個人を特定する情報はいれていないということでしたが。

―嶋岡―

そうですね。個人を特定する情報はもちろんですが、フォームが長過ぎるというだけでも障壁になりますからね。

―田ヶ原―

ただ、社内では、情報は細かく入手できるほどよいという方もいました。でも、できるだけ多くの方に利用していただきたかったので、できるだけ簡便なものにしました。

画像: RMS Titanic departing Southampton on April 10, 1912. (Photo: Creative Commons)©2015 Asterisk Research, Inc.

RMS Titanic departing Southampton on April 10, 1912.
(Photo: Creative Commons)©2015 Asterisk Research, Inc.

―岡田―

全部データがまとまっているべき、という固定概念ってあるんですよ。実際には、データが別々で、必要に応じてヒモづけられれば十分だということも多いんです。また、法律やセキュリティーポリシーに照らし合わせてOKならなんだっていい、みたいな誤解もある。そういうケースを思い出せる事例としてこんな話があります。
海に沈んだ豪華客船「タイタニック」は救命ボートの数が圧倒的に足りなかったんです。法令的には16隻ということになっていたそうですが、タイタニックは20隻積んでいたそうです。タイタニックのキャパシティーとしては、実はそれよりももっと多く積むことができたそうなんですが、なぜ積んでいなかったのか。「法令で決まっている数に対して2割増しの20隻積んでいるんだから十分だろう。それで十分なんじゃない」「そもそも沈まないでしょう」という声が聞こえてきませんか。この「思い込み」がまさにセキュリティーのリスクなんです。「これで十分」という思い込み、「これが必要」という思い込み。それが積み重なっていくわけです。
ソフトウエアの脆弱性のほとんどの問題は、開発段階で生じているんですが、後から6~7倍のコストをかけてチェックしたり、直したりしている。ですから、開発時にチェックする必要があるわけですが、そこにもさまざまな思い込みがあります。「ガイドラインがあればいい」とか、最悪なものには「自分の範囲でなければいい」とか、「性善説」という言葉で対策を怠る例もありますね。
物理的に見えているものから本質的なものに変化している中で、IoTもセキュリティーについても「それでどんな経験ができるのか」「どうすれば組織が生き抜けるのか」ということを考えていかなければならないと思います。

―近藤―

そうですね。たとえば、仕事とプライベート、さらには仕事でも複数の肩書きを持っている場合、そのアイデンティティーはそれぞれ異なるわけです。そういうことをサービス提供側も考慮しながらビジネスを組み立てる必要がありますね。

―岡田―

そうそう、「夜蝶Diary」とヒモづけられちゃたら怖いですよね(笑)。例の「年金番号データ」だってそうですよ。そういうことがいろいろと起きる可能性があるわけです。

―近藤―

「名寄せのリスク」って言い方をしていますね。デジタルアイデンティティー研究者の崎村夏彦氏によると、「アイデンティティー=識別子」は「どこまで(範囲)」「いつまで(時間)」の軸があって、それで表現される面積が有効範囲であり、リスクを考える範囲であると語っています。となると、年金関連データが漏洩したことによる種々の名寄せのリスクが増加することが想像できると思います。リスクの範囲を設計・開発段階から考えてシステムを作らなければ、大変痛い目にあうという教訓とも言えるでしょう。

物理的な「どこにあるか」より、実質的に「どうなっているか」が重要に

―岡田―

「場所」にも同じ変化が起きているんですよね。目の前のサービスが、クラウドになって向こう側に行ったという以上のものがあると思います。「バーチャル=実質的」と言う言葉の通り、物理的に「どこにあるか」より、「実質的にどうなっているか」の方が重要になってきているわけです。「レシーピ!」もまさに個人を特定せず「実質的な家計簿」をおさえているというのはすごいことだと思うんですよ。

―嶋岡―

「バーチャル=実質的」というのは私も初めて知ったのですが、それを預けてくれるのは、セキュリティー対策ができていると同時に、工事現場で「こんにちは」と声をかけてくれるようなコミュニケーションがあるからだと思うんです。安心とか安全とかは工事現場が守るべき義務ですけど、「こんにちは」という人の顔が見えることによって、情がわきますし、その人の顔が思い浮かぶ。サービスを提供する側も提供される側もそうしたリレーションの中でビジネスを組み立てていくことを大切にしたいと思っています。

―近藤―

物やサービスに対する忠誠心はこれまで一方通行で語られがちでしたが、双方向になる時代なんでしょうね。次のビジネスの軸として考える必要があると感じます。

―田ヶ原―

顔が見えない状況で信頼を得ていくためには、技術に加えて、やはりキャラクターを通じて、もしくは人と人とのコミュニケーションが重要だと思います。これまでもコールセンターなどでユーザーさんと密なコミュニケーションをとってきましたが、今後も引き続きそうした活動を続けていきたいと思っています。

―松隈―

想像以上に、大日本印刷さんは「人の生活を豊かにする」という思いを強く持っていることがよくわかりました。

―嶋岡―

toBの世界でビジネスを展開してきましたが、その先のtoCを理解しなければtoBにもよい価値を提供できないと考えています。そのバランスが大切だと考えています。

―松隈―

あっという間の100分でしたが、今後の皆さまのビジネスのヒントになる情報が提供できていれば幸いに思います。ありがとうございました。

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